- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309206400
感想・レビュー・書評
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コメディアンとして成功するまで。感想は下巻を読み終えてから
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出だしは映画を観ているかのようにページをめくるたびに映像が飛び込んでくる。強烈なヒトラーの個性が全開。本当におもしろい。
このままコメディが続くのかと思いきや、後半くらいから過去の史実に関わる記述が増え始め、ただの風刺小説じゃなさそうな雰囲気を漂わせ始める…。 -
本国ドイツでベストセラーになったというのが面白い。ヒトラー本人が現代に蘇り、コメディアンとしてテレビに出ると、「なりきりそっくり芸」として人気を博し、徐々に人心を手中に収めていく、という風刺小説だ。ユーモアに溢れてドイツの政治に疎い私でも笑いながら読んだが、現政権、政党、現代のネオナチなどへは強烈な皮肉が込められているのだろう。さらにこのヒトラーは好人物、子供や女性を大事にする紳士なのだ。歴史上の本人も、画家を志した芸術好き、菜食主義者、動物好きだったという。間近で見る独裁者は怪人でも悪魔でもない。
日本でも、政治の右傾化、過去の戦争の評価や自衛隊の役割などが議論されており、戦後70年経って国の方向性が危ぶまれている。おそらく、この本はそのようなスタンスで書かれているという強い共感もある。 -
上下巻読了。
ヒトラーを人間味ある存在として書いているところは面白かった。
でも全体的には盛りあがらず。 -
風刺や批判の毒を盛り込みながら、歴史上の人物をまったくあり得ないシチュエーションに再現するパロディ小説の手本のような作品。壁の落書きやテレビ(なんと総統はテレビに向かって、話の進展について文句を言いまたあとで必ず戻ると約束したりする!)にいちいち「なんということだ」と驚きながらも、ヨーロッパの優等生たる現代ドイツもこの男にかかれば形無しである。散歩中に犬の糞を拾う行為はどう考えても彼にとって奇行だし、「現在のドイツ人は民族の分別に比べ、ゴミの分別はずっと正確に行っている」という嘆息は切実であるだけ滑稽だ。
意外にも現代の政党では『緑の党』に親近感を覚えており、小説とはいえいい迷惑だろうなと同情も。「最高の人材ほど早く死ぬ」という彼の信念は、第二の人生においてその正しさが証明されたようだが、現代に生きてる我々はなんなんだ..。まぁ、いい人ほど早く亡くなるのは彼だけの実感ではないが...。 -
2015.3.29
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読みやすいラノベ。ヒトラーの考え、人との会話のテンポが良く、そのあたりの言葉遊びが面白い。■ヒトラーの考えていたことはほとんど知らなかったので、民族主義という観念自体を初めて知った。民衆がヒトラーを受け入れていた当時と同じく、現代でも少しずつ受け入れられつつあり、ヒトラーとは誰だったのか?を考えされられる内容にもなっている。■オチはなく、小説としては突っ込みたくなるものの、課題提起という形では秀逸な終わり方になっていると思う。また、クレマイヤー嬢のお祖母さんがどうなったのか、いろんな可能性が考えられるところが、ヒトラーの怪物性を匂わせている。