コドモノセカイ

著者 :
制作 : 岸本佐知子 
  • 河出書房新社
3.61
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本棚登録 : 486
感想 : 53
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309206875

感想・レビュー・書評

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  • 読みおわってから不思議なほど子供時代の様々な断片を思い出す。引っ越し続きのなかで出会い、それっきりとなった友だち達、そしてたくさんの本達。
    思い出というほどのものでもないけど、忘れていたことがこんなにもたくさんあったんだな。

    『まじない』妄想のエスカレーションが最高に楽しい。宇宙人が手強くても、自分で作ったルールなら、抜け道もいくらでもありだよね。

    『最終果実』民話を題材にとった異形な怪物譚の中に、普段は忘れてしまっている子供時代の後悔がフラッシュバックする。

    ごめんねと伝えることはもうできないから、飲み込んでいくしかない。オトナになっても生きていくのは難儀だな。

  • こういう話は短編がいい。
    自分も子供の頃は容赦なく残酷だったなあと思い出して痛いから。笑

  • 大きくなるにしたがって、心には浮かんでも口には出さない質問が増えていった。うんと強い心がなければ、現実世界とは向き合えない。
    (P.25)(王様ネズミ/カレン・ジョイ・ファウラー)

    「みんなは図書館を選んだ。でも、世界を知らないまま図書館を選ぶことは、わたしにはできないの」
    (P.203)(七人の司書の館/エレン・クレイジャズ)

  • どれも短編で作者が肩の力を抜いて気軽に子供時代を回想して書いた風で、油断してる分、地がいい意味で顔を見せてる感じ。自分は「ブタを割る」エドガルケレットがお気に入り。バートシンプソン人形をねだるも拒否されブタの貯金箱を渡され、いっぱいになって音がしなくなったら、金槌で割られそうになり、こっそり原っぱに隠す。そして別れを告げる。これぞ、コドモノセカイ。イスラエルの作家らしく、映画も撮っているそう。

  • 短編集11編と中編1編
    少し不気味な面白さの「子供」と閉ざされた図書館という世界の中で成長していく主人公のを描いた「七人の司書の娘」が特に良かったです.

  • ネットで見かけた「はじめての海外文学フェア」がなんだか素敵で、やってる本屋さんに行ってみよう!と思い立ってそこで買った本。すっかり最近海外文学読んでなかったから新鮮で面白かった〜!このわけわかんなさというか、不条理さというか、こういう種類の日本のアンソロジーってあるんだろうか??あるなら読みたい。わけのわからなさを、狂気とやたら強調するのではなく、そのままわからなさとして受け止めるおもしろさ。食べ物でたとえるなら、苦味がクセになるとか、そういう気持ちに似てる、気がする。似てないか?笑

    でもその、素敵なわけのわからなさを楽しむためには、信頼できる、かつぶっ飛んだ語も使ったりする、豊かな翻訳が必須なのだなあ、と思って、やっぱり岸本佐和子さんは偉大なのだなと思いました。翻訳なのに、このひとしかこの文章は書けないんだろうな、と思わせつつ魅力を損ねないのって本当にすごいな〜〜

    あとがきでも語ってらしたけど、感動ものとか、きらきら可愛らしいだけの話がひとつもないのが面白かったです。笑 暗いわけじゃなく、捻くれてたり、毒をもってたり、せつなかったり。「七人の司書の館」は本好きとしてはシチュエーションにうっとり。「最終果実」はなんだか迫力があって圧倒された。

  •  「コドモ」の世界といいつつ、実際には子供の視点を通して大人が大人を皮肉っている感じがするのは穿ちすぎでしょうか。

  • 各国の著者が描いた「子ども時代」に纏わる短編集。
    どれも様々な子どもの想像の世界、体験、視点の描かれ方がリアルで、
    中には後味の悪いものも…。

  • 岸本さんのエッセイのファンだったけれど、じつは翻訳したものを読んだことがありませんでした。
    翻訳、というと、この訳で正解なのだろうけど、なんだか日本語が心地悪いものばかり読んでしまったせいか、敬遠しがちでした。岸本さんが翻訳するジャンルの小説もそんなに好きではないし・・・で、これが初・岸本訳です。
    うん、文学だ!というのが第一印象です。
    やっぱり岸本さんの日本語はすごいな、と思いましたが、いまの翻訳物はみんなこうなのでしょうか。
    作品は、表紙の通り、不気味だったり、嫌悪感だったりします。すごいテイスト。

  • 「こども」にまつわる12の短編を,岸本佐和子の訳で集めた1冊。テーマは同じでも,まったくばらばらなテイストを味わうことができた。あるものは難解で,あるものは懐かしさに溢れていて。そして時々,残酷。
    もう思い出すことしかできないけれど,あの頃はきっとこんなに素朴で正直で,じぶんだけの世界があったんだろうな。
    エトガル・ケレットの『靴』と『ブタを割る』,ベン・ルーリーの『トンネル』,エレン・クレイジャズの『七人の司書の館』が特に好きだった。

著者プロフィール

岸本 佐知子(きしもと・さちこ):上智大学文学部英文学科卒業。翻訳家。主な訳書にルシア・ベルリン『掃除婦のための手引き書』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、ニコルソン・ベイカー『中二階』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、リディア・デイヴィス『話の終わり』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジョージ・ソーンダーズ『十二月の十日』、ショーン・タン『セミ』、アリ・スミス『五月 その他の短篇』。編訳書に『変愛小説集』、『楽しい夜』、『コドモノセカイ』など。著書に『気になる部分』、『ねにもつタイプ』(講談社エッセイ賞)、『なんらかの事情』、『死ぬまでに行きたい海』など。

「2023年 『ひみつのしつもん』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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