- Amazon.co.jp ・本 (270ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309208534
感想・レビュー・書評
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大好きな『黄色い雨』のリャマサーレス。
短編の見本みたいな作品ばかりだった。
見事。
ブラックユーモアあり、哀愁や虚無感、寂寥感に満ちたものあり、その中に時折織り込まれる、スペイン内戦の傷跡や、山岳地方の生活の過酷さ。
と書くとしんどそうだけど、作者の目が温かいので、いいんだなぁ…。
「水の価値」が特に胸に残っている。 -
『黄色い雨』のリャマサーレスの短編集。
2つの短編集『僻遠の地にて』『いくら熱い思いを込めても無駄骨だよ』の合本のようです。
『僻遠の地にて』から収録されている前半の7編が特によかった。
失敗に向かっているのがわかっているのに止められないコルタサル的不条理世界をユーモラスかつ、どうしようもなく破滅に突き進む登場人物達への共感たっぷりで哀しくもほほえましい。
後半は、もの悲しさがより前面に出てきて、ちとさみしい。 -
自分もかなりの田舎に生まれて、地理的に人間が偏屈になったり、偏った情報が正義!みたいな気持ちはわかる。日本も同じように山川あるり、閉鎖的なベクトルの角度が日本と似ているような気がするんだよねー。そんなことをしみじみ思う程、この短編種は牧歌的というか、田舎くさいというか、思ってたのと違うというか。人と違うことをするのは勇気がいる。ホームで電車待ってる時に傘を差すとかさばるので持参タオルをかぶるとか。でも田舎って比べる対象の人間が少ないからその機会もないんだよなー。虚無感もある(別に田舎の本ではない)
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前半は、不器用な人たちが軌道修正できなくて悲劇的結末に突っ込んでいく話いろいろ。自分も臨機応変に対処できないタイプだから、身につまされてしまった。ブラックユーモアとして楽しめるひとは楽しめると思う。身につまされつつも、笑ってもらおうとしている意図は理解できた。
後半のスペインの寒村が舞台の数編にリャマサーレスの持ち味が出ていて好み。内戦があってもそれが終わればみんなで生きていくしかない。そして木村先生のあとがきがよかった。海外文学の研究者が研究・翻訳すべき作品を発見していく過程が興味深かった。
良いなと思う短篇もあったのだけれど、余韻を残すというより放り投げているように感じる結末のものが多かった。よくいうとシルビナ・オカンポ的というか。リャマサーレスについては、自分は短篇より長篇のほうが好きみたいだ。 -
「遮断機のない踏切」がなぜかずっと心に残っている。止まった時間を生きている人の話。ラストも良かった。
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短篇集。冒頭に「フリオ・リャマサーレスがこれまでに書いた短篇の完全な集大成と言っていい。」とある。人生のコントロールできなくなった人や人間の寂しさ、孤独が描き出される短篇が多く感じられた。ちょうど落ち込むことがあり、短篇を読んでいると自分を冷静に落ち着いて見つめ直すことができ、助かった。独特の哀愁がある。