- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309208626
感想・レビュー・書評
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砂漠しかないエグゾボタミーという場所(国?町?)で鉄道敷設工事が行われることになり、そこで働くために様々な人々が集まってくる。現場を監督する部長のアマディス・デュデュ、砂漠で発掘調査をしている考古学者のアタナゴールとその助手ランディエ、黒人料理人のデュポン(ランディエは同性愛者でデュポンを追いかけまわしている)、飛行機狂いの医者マンジュマンシュ教授とインターン、エンジニアのアンヌ(女性名だけど男性)とその恋人ロシェル、アンヌの親友でロシェルに横恋慕しているアンジェル、神父のプチジャンと、彼が矯正させようとしている元殺人犯の隠者クロード・レオンなど。しかし工事をめぐる陰謀や、偶発的な事故などにより一同は破滅へとむかいはじめ…。
読み始めて最初のうちは各登場人物が砂漠に行く前のエピソードA~Dが個別に書かれており、「あれ?これって短編集だっけ?」と戸惑った。全く繋がりのなさそうだった各短編の登場人物が砂漠で一堂に会したところでやっと「やっぱり長編だった」とわかる凝った構成。正直、短編として読める部分のほうがより面白かった気がする。ボリス・ヴィアンらしい、毛布や椅子の擬人化(?)描写が楽しかった。昭和のナンセンスコメディマンガみたいな。
ある意味主人公ともいえるのはアンジェルだけれど、カレのロシェルへの横恋慕がなんだか気持ち悪かった。肩をもつほどアンヌも良い男ではないのだけど、アンジェルのその一途さがあまりにも自己中心的なので応援したい気持ちにならない。たぶんロシェルの意思(彼女はアンヌが好き)をアンジェルが尊重しようとしないからだろう。まあ簡単にいえばアンジェルはストーカー気質。
奇人変人のオンパレードで、コミカルにみせかけて悲劇に収束するあたりは『うたかたの日々』等とも共通かもしれない。ちなみにタイトルにある北京はどこにも出てこない…。 -
ユーモアあふれる奇想小説。差別的な発言をわきにおけば、登場人物への同情とくすっと笑いが止まらない。
ヴィアンは登場人物たちにいやがらせばかりする。冒頭、ある男が会社行きのバス停で待っている。最初にきたバスは満席。二台目からは三人降りたのに「もともと定員オーバーだった」と乗せてもらえず。三台目のバスにはぶつけられて下敷きになり、起き上がる前にバスが行ってしまう。四台目は整理券を「拾ったもの」だと疑われ…。
始終こんな調子なので、にやにやしながら読んだ。
会社員、神父、三角関係の男女、外科医とインターン。どの登場人物も、ヴィアンにいやがらせをされた挙句、「エグゾポタミー」という架空の砂漠に連れてこられる。すべての登場人物が揃うと、長編のストーリーが幕を開ける。そこで全員がたずさわる鉄道事業がはじまる。
「エグゾポタミー」は、わたしたちの社会の縮図だ。たいした中身のない会議。無能なのに威張り散らかす上司。社員同士の恋愛のごたごた。人を助けた数より殺した数のほうが多い医師。お酒を飲み暴言を吐く神父。
やっかいな人間ばかりが集まった現場は、かろうじて維持されていた。だが、ひとつの大事なジェンガが抜き取られると、あれよという間に崩壊する。砂上の楼閣とはまさにこのこと。
それにしても、強い磁力で引き込まれる作品だ。ボリス・ヴィアンの筆力は、作中で表現される「音」や「擬人化」にも表れている。
『うたかたの日々』が好きな方は、ぜひ本書もよんでみてほしい。 -
途中かなりしんどかったけどラストに向けてのエネルギーが蠢き出す感じはうたかたの日々と同じものがあってこれこれ!と思いながら手が止まらなかった。
もう一度読み返したい -
今から三十年ばかし前、コロナも東京大震災も起きる前は結構「街」という物が力を持っていた。そこに行くだけ、歩くだけでイケてるみたいな時代。自分もどっぷりそういう文化にはまっていて、「誰がいいだしたか知らないがかっこよし物」が毎月雑誌に掲載され、そういう象徴が作者だったような気がする。実は中身なんかない、ハリボテゆえの虚無感。それゆえたまらなくかっこいい。わけわからないだろう?誰もわかっちゃねえんだ。別にコーヒーに泡のっててもちっともうまくなんかねえんだ。洗脳が溶けた現在、この本はちっともおもんなかったわ。
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40年前、四人囃子やPRISMのギタリストだった森園さんの♪いつもスモールシガレット 指にはさんで ボリス・ビアンなんか読んでた♪という歌を聴いて、ボリス・ビアンの名前を知り、うたかたの日々を読んだ。
マライヤの清水靖晃さんのアルバム「北京の秋」も持っている。
他人様には何のことやら判らないことだろうけれど、兎も角、本屋で新装丁の本書を見つけ、購入。そうでもなければ読まなかった本である。
帯に「いうまでもないことだが、この作品には『中国』も『秋』も出てこない」とあり、チョッと驚く。
いつまでも通勤のバスの乗れないアマディアス・ジュジュ、殺人の後に隠者になろうとするクロード・レオン、彼に恩寵を与えるプチジャン神父、恋人同士のアンヌとロシェル、オマケのアンジェル、模型飛行機に夢中の医師のマンジュマンシュ。
それぞれの出鱈目な話が綴られる長い引用部。それぞれ関係のない話と思ったが、砂漠のエクゾポダミーに集結する。
考古学者アタナゴールやホテルのレストランシェフのピッポを交え、鉄道敷設の物語が語られる。
正直、引用部のことを忘れて誰が誰だったっけ状態になるが、どうでもいいじゃないかという気分で読み進める。
(P.108から引用)「わざとそうしているんだ」マンジュマンシュが答えた。「クロエが死んでしまって以来さ」
初めからコワレタ物語。そして長い長い話の最後は壊れきって無くなる訳でもない。
うたかたの日々のような幸福感は皆無。アンヌとロシェルの恋も只々、消耗しあうだけの即物的なもの。だから喪失感も無い。
詰まらないかというとそんなこともなくて、読み続けたけど、何とも言い難いとしか言いようがない。 -
あとがきに書いてあったボリス・ヴィアンの多忙さに笑ってしまった。
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「この作品には『中国』も『秋』も出てこない」という全否定から入る帯コメント。架空の砂漠エグゾポタミーに様々な人が集まり、一応テーマとなる鉄道建設にが行われるのだが、記述自体がハチャメチャ/スラプスティックで何がなんだかわからない。初期の筒井康隆を彷彿とさせる突拍子の無さである。ただし、筒井がどこか狙っているんだろうな感が見え隠れするのに比べ、おフランス的な突き放したような厭世的哲学感が漂う。
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今の時代だと、完全にポリコレに中指たててるな。
筋何ざねえ、ジャズだアドリブだ!ってヴィアンが言ってた。
ボリス・ヴィアン読んだこと無いのですが、北京ってイメージでなかったのでどんなのかなと思ったら『タイ...
ボリス・ヴィアン読んだこと無いのですが、北京ってイメージでなかったのでどんなのかなと思ったら『タイトルにある北京はどこにも出てこない…。』で笑ってしまいましたwww
おお意外、ボリス・ヴィアン読まれていないのですね。なんか基本的に不条理ロマンティックコメディみたいな感じです...
おお意外、ボリス・ヴィアン読まれていないのですね。なんか基本的に不条理ロマンティックコメディみたいな感じです(勝手なイメージ)
今作、北京も秋もどこにも出てこなかったのはちょっと衝撃的でした(笑)