- Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309225227
感想・レビュー・書評
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廃城の数々のドラマが描かれている。筆者の思い入れのある小西行長の箇所はとくに興味深い。
歴史は勝者がつくるものなので、こういう切り口の本を不定期でも読むことは平衡がとれてよいとあらためて感じた。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「敗者」の「廃城」で一環したテーマとしては、『朽ちてこその廃城』です。
カタチの残っていないものを筆者の印象などで語られる部分が多かったり、小説からの引用とか憶測の域での解釈も多いんですが、日陰のものにスポットをあてて一冊にまとめてあるので、名城にはない地味ーな部分は結構楽しめるんではないかと。 -
今はやりの古城を訪れるシリーズだなあ、と思いながら手にとったのだけど、その中に二人のキリシタン大名がいたので読んでみる事した。
特に小西行長、彼が現熊本県宇土市に築いた宇土城については何も知らなかった。
加藤清正は今も熊本城に象徴されるように、県の英雄のよう。それに引きかえ、なのである。
関ヶ原で斬首された彼の墓は今もって何処にあるのか判らない。近代的な城下町をもつ宇土城も関ヶ原での敗戦のため、跡形もない。
キリスト教を広めようとしたため、神社仏閣を破壊したといわれ、宇土城跡地に銅像をたてた後もしばらくは囲いで覆われていたという。
でも、熊本城にある宇土櫓はこの宇土城から移築されたものではないかと言われる程の城でもあった。
豊臣家のもとで実務派として発揮した頭脳は城の建築にも生かされていた。
草茫茫で蛇と戦いながらの発掘調査のおかげで様々な事が判り、公園として整備されている現在、筆者同様、小綺麗に整備された公園よりも、草茫茫のなかに、彼の夢や野望が渦巻いていたのではないかと、彼が見た先は遠く海の彼方。徳川氏によってさらに抹殺された彼の生涯の地を訪れたくなった。
もう一人は高山右近です。 -
廃城となった城址をめぐる紀行。関ヶ原の敗将・小西行長ゆかりの地で育った著者が、失われた城の面影を求めて廃城を訪れます。
信仰を捨てられずに一線を退くことになった高山右近ゆかりの高槻城、豊臣秀次の悲劇とともに朽ち果てた聚楽第など、実際の戦だけではなく時の権力者との対立が原因で朽ちていった城も紹介されています。石田三成ゆかりの佐和山城には秀吉を祀る社の跡があり、三成が願ったのは自らの天下ではなく豊臣の世が永く続くことだったのでは…という考察は、実際にその場に行かなければわからないことだったので興味深かったです。
歴史の物証根拠が司馬作品など小説からの引用が多いのが物足りなく感じました。著者の視点からの考察に徹してもよかったのでは。 -
歴史はどうしても勝者の視点で語られてしまいがちです。
敗者の主張、事績は消され、
またはねじ曲げられてしまうことが多いですよね。
お城もまた然り。
敗者の城は破壊され、放置され、荒れていくことがほとんどです。
城はその土地の支配者の力の象徴であり、
権威でもありますからなおさらです。
それでも、わずかに遺された遺構からは、
さまざまなものが読みとれますし、思いが伝わってきます。
最近は城ブームもあり、多くの城に人が訪れていますが、
それでもまだ天守閣の残る立派な近世城郭がメインでしょう。
しかし、荒れ果ててしまった城にこそドラマがあり、
当時の人の息づかいが聞こえてきたりするものです。
この本は紀行文ですので、
筆者が実際に歩き、見聞きしたこと、感じたことを中心に、
背景の歴史を織り交ぜながら城のようすが紹介されています。
もしかしたら城も城主も知らない場所だらけかもしれませんが、
そんなことは関係なく楽しめます。
もし書かれている城に行きたくなったら、
この本だけでも筆者の旅を追体験できるようになっていると思います。
お城初心者(?)にもそうでない人にもおススメの一冊です。 -
敗残者の居城を訪れて、歴史に思いを馳せるエッセイ集。城跡の細かい解説書でも歴史の専門書でもなく、その辺を軽く織り交ぜて書かれた情緒的な文章で、個人的にはちょっと苦手な感じ。
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佐和山、水口岡山、敦賀、宇土、麦島(小西行長)、小谷、信貴山・多聞、観音寺、坂本、高槻、八幡山、鷹ノ原(加藤清正)
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2010.02.14 日本経済新聞に掲載されました。