ドキュメント長期刑務所

著者 :
  • 河出書房新社
2.40
  • (0)
  • (2)
  • (2)
  • (4)
  • (2)
本棚登録 : 60
感想 : 4
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309244716

作品紹介・あらすじ

凶悪犯の受刑者だけが棲む刑務所の全貌!初めて明かされる衝撃の実態!刑期8年以上の重罪の受刑者(多くが殺人犯)のみが収容され、全国に5ヵ所しかない「LB級刑務所」-その一つで一生暮らすと決めた無期囚による渾身の観察記録。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2009年刊。
    著者は2件の殺人罪で、刑期8年以上で犯罪傾向の進んだ受刑者を収監する「LB型刑務所」に服役中の人物。

     女(異性)の他、美味く脂多きメシや甘味欠乏状態の受刑者の日常生活を赤裸 々に開陳する書である。

     著者の性格か、悲しい現実を笑いで誤魔化し塗そうとする意図か、その書き振りはくすくす笑いが思わず起きてしまうほどだ。あるいは長期の収監が、刑務所内の出来事を日常に変貌させてしまった結果とも言えそう。

     しかし、受刑者の模様は様々。高倉健を地で行く漢気満点のナイスガイから、他人のちょっとしたところを妬み嫉む人、被害者の事を真摯に思う人から、長期処遇に追いやった存在として被害者に言われなき憎悪の念を燃やす人。刑務作業黙々とこなしながら、年間のスポーツ大会で思いもかけぬ力量を発揮する者。囲碁・将棋に熱を上げ玄人はだしまで上達した者。生活の何でもかんでもをギャンブルに仕立て上げる者。そして刑務官にわけもなく食って掛かるモンスター化も、社会のそれと踵を同じくとして増えてきている。
     このような多様な受刑者の存在は、卓越した観察眼とともに、表現力・描述力とが伴わないと叙述できないだろう。
     幼い頃から本の虫であった著者。僅かな余暇時間の中、新法施行前は年間96冊、施行後は、月当たり単行本50~70冊、雑誌40誌、新聞5誌(英字・証券含む)を読破している著者だからこそできたともいえる。

     ともあれ堅苦しくない叙述に比し、刑事政策という観点、刑罰目的論を考える上で示唆に富む(嘘)かな?…。ただし犯罪被害者など、俯瞰的ないし第三者的に受刑者を見ることが無理な人には、本書をお勧めはできない。

     ところで、服役中の資格取得、学習や職業訓練、経済における常識的知識や社会生活上の知恵や知識にもう少し時間と刑務所機能の配分を割くべきではとの指摘には、刑が開けた後の社会との接合性を考えると、尤もと言わざる得なかった件。浦島太郎状態で社会復帰した時に、再犯をしない頼りできのは血縁という原初的社会関係と、食いッぱぐれない生きる力なのだから。

  • H27/12/30

  • 読みにくい本だった。
    所々挟み込まれる私は~だが、みたいなのが、鼻につくというか。

  • 怖いもの見たさの「長期刑務所観光案内」みたいな一冊。「人を殺すとはどういうことか」よりずっと軽い。花輪和一の「刑務所の中」と比べると視点が一歩も二歩も引いててドライ。懲りないなあ、と思えば笑えるが、この連中が懲りないまますシャバに帰ってくるんだと思うと、文字通りシャレにならない。

全4件中 1 - 4件を表示

著者プロフィール

美達大和
1959年生まれ。無期懲役囚。現在、刑期10年以上かつ犯罪傾向の進んだ者のみが収容される「LB級刑務所」で仮釈放を放棄して服役中。罪状は2件の殺人。ノンフィクションの著書に『刑務所で死ぬということ』(小社刊)のほか、『人を殺すとはどういうことか』(新潮文庫)、『死刑絶対肯定論』(新潮新書)、『ドキュメント長期刑務所』(河出書房新社)、『私はなぜ刑務所を出ないのか』(扶桑社)、小説に『夢の国』(朝日新聞出版)、『塀の中の運動会』(バジリコ)がある。また「無期懲役囚、美達大和のブックレビュー」をブログにて連載中。http://blog.livedoor.jp/mitatsuyamato/

「2022年 『獄中の思索者 殺人犯が罪に向き合うとき』 で使われていた紹介文から引用しています。」

美達大和の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
村田 沙耶香
ヴィクトール・E...
サイモン シン
美達 大和
又吉 直樹
伊藤 詩織
美達大和
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×