- Amazon.co.jp ・本 (267ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309405520
感想・レビュー・書評
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①文体★★★★☆
②読後余韻★★★★☆詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
プロローグ初っ端が良すぎて、もう読むんやめたろうかなと思うくらい良かった。
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ユルスナールを読んだことがないのでどうかしらと思いつつ、美しい日本語と情感あふれる描写に引き込まれる。
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須賀敦子 「 ユルスナールの靴 」 作家ユルスナールの軌跡を綴った本。ユルスナールの描く世界と 著者の世界を重ね合わせる構成。
作家自身が忘我し、小説の中の主人公と一体化する姿を 「自分の足にぴったり合った靴で旅をする」と表現したのだと思う
「自分の足にぴったり合った靴で旅をする」ことの意味
*旅をする=書くこと→作家として生きること
*靴=小説の主人公→作家としてのスタイル
*ぴったり合った=一体化→愛の日々→忘我の恍惚
*孤独性、放浪性(ノマッド)が 忘我の恍惚を手に入れる作家の生き方 と捉えた
神に到達しようとする魂の道 の3段階
1.神の愛に酔いしれ、身も心も弾むにまかせる
2.神の求める魂が手さぐり状態でしか歩けない
3.まばゆい神との結合に至って忘我の恍惚へ
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美しい日本語にうっとり。
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須賀敦子さんの本は「ヴェネツィアの宿」「ミラノ霧の風景」「コルシア書店の仲間たち」「トリエステの坂道」に続いて5冊目。
この「ユルスナール」だけが初耳の固有名詞でした。
びっくり。「ハドリアヌス帝の回想」の著者と知って。
ハドリアヌスは昨年「ローマ人の物語」を読んで大好きになってしまったローマ皇帝。
ギリシャ展で彼の別荘で出土した「円盤投げ」などを見て感動したし、彼が登場する「テルマエロマエ」の漫画を買いました。
そういえば「テルマエロマエ」のCMが一昨日あたりから流れていてとても楽しみ。
ですのでこの本の主要な人物はハドリアヌス、ユルスナール、須賀敦子さんです。
でもそれ以外のヨーロッパの人たちの様子もとても面白いです。
政治によって国は分けられるけど、下のほうの(普通の?)人たちはそういう分け方ではなくて、ベルギーに住んでいる人が「われわれフランス人は…」と語ったり。
特にのこしておきたいのはユルスナールの語る「霊魂の闇」。単純に言えばスランプでしょうか。
>それまでになんどか書き始めては破棄し、忘れられずに書いてみるが先には進めずにまた破り棄て、厖大な資料ばかりがたまっていった『ハドリアヌス帝の回想』が、1949年、ついに彼女の中で明確なかたちをとりはじめるまでの、孤独で苦難に満ちた歳月であったにはちがいない。それにしてもユルスナールがこの表現を用いているのは、予期しなかっただけ、大きな驚きだった。
>いつかはじぶんにぴったりと合うような、そんな道が開けるはずだ。それがどんなものなのか、いまはわからなくても、その日が来るまでは待つ以外にはない。そうじぶんにいいきかせて、ときには呼吸しつづけることだけをみずからに課していたローマでの二年間。
>ローマで道に迷った日々、私はそのことを考えていた。もしかしたらじぶんも彼(ブヌワさんという人)みたいにさいごまでなにもわからないで死ぬのかもしれない。そんなときに出会ったのが夫だった。
なにも肩をはって闇などに対決することはなかったのだ、と軽薄にも信じ込んでしまったそれにつづく夫との5年間。彼を襲った不意の死。それにつづいたあたらしい闇に、それまでは見えなかった虚像と実体のあいだに横たわる溝の深さを、私は教えられた。
じぶんもそんな闇を通ったのだとユルスナールが語っているのは、当然とは思っても、やはり衝撃だった。私にとっては、揺るぎない自負と確信に満ちているはずの、あの偉大な『ハドリアヌス帝の回想』の作者が。意外さ、そして、むかし慣れ親しんだことばに出会ったなつかしさに、私は声をあげそうだった。 -
「きっちり足に合った靴さえあれば、じぶんはどこまでも歩いていけるはずだ。そう心のどこかで思いつづけ、完璧な靴に出会わなかった不幸をかこちながら、私はこれまで生きてきたような気がする。」
何と美しく完璧な出だし…!
うっとりため息をついてしまう。
須賀敦子、マルグリット・ユルスナール、ユルスナールの著作の中の人物達という三層構造で、時に混ざり合いながら麗しい景色を描く。
目眩がするような作品。 -
なぜこの本を読もうと思ったのか、よく分からない。新聞の書評に載っていて、記憶に残っていたのかもしれない。ユルスナールというのがフランス人作家の名前だとも知らず読み始めた。ユルスナールの作品や人生と重ねるようにして、著者が自分の人生を回想する。読点の打ち方など、文体がちょっと独特。この本で紹介されているユルスナールの作品の中では、代表作という「ハドリアヌス帝の回想」よりも、再洗礼派の信仰が描かれた「黒の過程」を読んでみたいと思った。
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お嬢様だなあ……描かれている風景が美しい。
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須賀敦子さんの著作の中では、もっとも敷居が高かった本。ユルスナールを読んでいないことが躊躇する原因だったのだが、須賀さん自身も、ユルスナールと出会ったのはむしろ遅かったとわかりほっとした。プロローグが圧巻。