絵本 徒然草 上 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309407470

作品紹介・あらすじ

名づけて「退屈ノート」。退屈で退屈でしょーがないから、心に浮かんでくるどーでもいいことをタラタラ書きつけてると、ワケ分かんない内にアブナクなって…退屈だからこそ見えてくる時代と人生の真実。古典の定番をこれ以上なく分かり易く鋭く現代に甦らせる、天才橋本治と鬼才田中靖夫による新古典絵巻の上巻。

感想・レビュー・書評

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  • 国語の教科書で読んでから、「徒然草」には共感をおぼえていた。だって退屈のままに硯に向かっちゃうんだもんな、参っちゃうな。その序文も橋本治にかかれば「退屈で退屈でしょーがないから一日中硯に向かって、心に浮かんで来るどーでもいいことをダラダラと書きつけてると、ワケ分かんない内にアブナクなってくんのなッ!」ってな感じになる。序文で笑った。

    本文、橋本治の現代語訳、ものぐるおしい感じの絵、そして橋本治ふんする兼好法師が現代っこにも優しくおしえる当時の解説。この解説が思いのほかちゃんとしてる。古典のお勉強がおもしろおかしくできる優れもの。

    とくに兼好法師の生きた人生や彼の思考の変遷、成熟の過程に親しめるのはおもしろい。鎌倉末期、いずれ南北朝時代に突入するという時勢で、朝廷はもうぼろぼろ。出家前の卜部兼好は朝廷のけっこうな地位におるんだけど、時勢のせいで出家の見込みまるでなし。まわりは教養ない連中ばっかだしやることねーから硯に向かって考え事してる、と。
    で、青年卜部は坊主だけにゃなりたくねーとか言ってるんだけど、どういうわけかなっちゃいましたっていう。いとおかし。

    青年期~坊主になりたて(おおよそ)の頃の文章がおもしろかったなあ。悩んでるというかぐずぐずしてる感じが。まあ年齢近いから共感できただけなのかもしらんが。坊主の話は説教くさくていかん。

    3段―「玉の盃底なし男」になるなって話。男かくあるべし、と悶々としてた卜部さんが好きだな。
    9段―「まことに愛著の道、その根ふかく、源遠し」。六塵のなかでも色ほど克服しがたいもんはない!という話。
    14段―「ぐっすりイノシシ」かわいい!
    20段―「空の名残だけがせつないな……」
    25段―藤原道長の寺ですらぶっ壊れる!という話。
    36段―「人を遣ってくれない?ひとりでいいんだけど」のすさまじき奥ゆかしさ。
    52段―「すこしの事にも先達はあらまほしきことなり。」これ授業でやったところだなー。

    本地垂迹ってのが日本の宗教の特異なところだよな。あれが可能だったとはそもそも日本古来からの神道というのが八百万の神という匿名性を前提としてたからじゃないかしら。姿かたちのないモノノケみたいなものだものな。だからあの神さまも「そもそも仏が姿を変えたものだったんじゃないかしらん?」って都合よくいける。イエス様もアラー様も「おれがおれが」でくるから、こういうわけにはいかんのかね。

    なにしろ昔の人は偉い!

  • 大昔に「春って曙よ!」ってヤツを読んだけど、こっちはだいぶ違うノリ。語り口が関西弁のせいか、『願いをかなえるゾウ』みたいだ。上巻は第59段まで(ちょいちょい間引かれてます)。この挿し絵、個人的にはナンだなあ…。

  • 原文ではとても読めないので、橋本治のカジュアルかつ深い解説を楽しく読ませていただきました。
    700年経っても人間、日本人の心性は変わってないっすよねぇ。

  • 「桃尻語訳 枕草子」が当時のギャル言葉で書かれたのに対し、こっちは世間からリタイア気味のオッサンの視点での訳です。
    ただおっさんノリというのは時代や流行にそれほど左右されないので、「枕草子」よりも古さを感じないような気もします。
    あちらが全訳だったのに対しこちらは抄訳。
    ですが、教科書や問題集で扱われるようなメジャーな段はたいてい収録されているので、相変わらず副読本として地味に優秀です。
    なお、タイトルに「絵本」とありますが、絵の割合は別に高くありませんw

  • 橋本治さんによる「徒然草がたり」という感じの本です。おじさん言葉が味わい深さを醸し出します。教科書でお馴染みの「徒然草」に、鎌倉時代末期という陰影を投げかけ、七百年の時を超えて、無常というものを考えさせますね。

  • 桃尻語訳徒然草版。ところどころ、その訳は違うのでは、というところはあるが、今も昔も変わらない阿呆な男子、みたいなのが註で兼好から語られると親しみが持ててよい。

  • 著者;橋本治(1948-、杉並区、小説家)
    絵:田中靖夫(1941-、茨城県、イラストレーター)

  • *買ってじっくり読もう。

  • 徒然草を物凄く身近に書いてありました。
    が、どうもおじさんが頑張ってはっちゃけて書いてるといったテンションについていけず、リズムがとりにくくて読みにくい文だと思いました。

    訳文は忠実なのですが、訳文よりも、兼好法師に扮する橋本さんの当時の話の方が面白いし、勉強になる。
    徒然草そのものを楽しむ感じではないと思います。

  • 第37回天満橋ビブリオバトル テーマ「健康」で紹介した本です。

    https://www.facebook.com/events/586934288034821/permalink/597758346952415/

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著者プロフィール

1948年東京生まれ。東京大学文学部国文科卒。小説、戯曲、舞台演出、評論、古典の現代語訳ほか、ジャンルを越えて活躍。著書に『桃尻娘』(小説現代新人賞佳作)、『宗教なんかこわくない!』(新潮学芸賞)、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』(小林秀雄賞)、『蝶のゆくえ』(柴田錬三郎賞)、『双調平家物語』(毎日出版文化賞)、『窯変源氏物語』、『巡礼』、『リア家の人々』、『BAcBAHその他』『あなたの苦手な彼女について』『人はなぜ「美しい」がわかるのか』『ちゃんと話すための敬語の本』他多数。

「2019年 『思いつきで世界は進む』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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