- Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309413754
感想・レビュー・書評
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家庭の事情である時期(学生時代)きょうだいのように育ったいとこ同士の賢治(41歳)と直子(36歳)。ある時から一線を越えた関係となる。
月日は流れた。順風満帆の出だしだった賢治だったが、仕事に結婚に挫折し生きる意味を見出せなくなっていた。
従妹である直子の結婚式に参加するため東京から故郷の福岡に帰ってくる。
再び二人は結ばれ(それは直子が図ったことだった)、結婚までの5日間、本能のままに美味しい食事をする、睡眠をとる、体を重ねる。
これでもかという、過激な描写。だけど、それほどいやらしさをかんじない(嫌になるほど露骨なのだが)。なぜなら二人に恋愛感情は感じない動物的な関りにみえる。やけくそなのだ。
血の濃い二人、結婚相手との新居で事をいとなむふたり。社会のモラルから大きく外れ「体の言い分」に沿っている、二人が哀れ。
アダムとイブは宿命として血が繋がっている。子孫を残せるという本能の指令という。人は破壊の危機に陥るとこういう心理にいたるのか。
東日本大震災、福島原発の数年後という設定の話。そこからくる無力感から刹那的な快楽をあらわしていると思った。
もし明日この世が終わるならどう生きるか。時々ふと私もそう考えることがある。「やりたい放題」「やけくそ」それもいいな。でもやはり思うのは身近な人に感謝を述べたいなあ。
心に残ったところ
「生きているだけで楽しい人と、成功しなきゃ楽しくない人がいたら、生きてるだけで楽しいと思える人の方が数倍も得だ。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
世界が終わるとき…終わるかもしれないとき…
誰と何をして過ごすのか。
生かされている私たちには究極のテーマだと思う。
そこそこ大人の私なので分からんこともない。
人として至極素直な行動なのだろうとも思う。
だけどやっぱりこれは男性の理想の終末なのかなという気もする。男性が生きていることを一番に感じられる瞬間。
母である私はおそらく選択する道が違うのだろうな…というだけのこと。
今年の8冊目
2019.3.24 -
結局 何を伝えたかったのか?
映画もつまらなくてガッカリ -
従姉妹でありながら男女の仲だった時期がある直子の結婚式に参列するため、東京から地元の九州に帰ってきた賢治。一週間後に迫った挙式の日までとタイムリミットを設定した上で、二人はまた関係を持つ。倒産寸前の会社を東京に残してきた「俺」と、上京を諦めて地元で結婚を決めた直子。ヤケクソ中年男女の一週間の恋物語。
一つの物語の中で、複数の主題がを扱っている小説は多いけれど、一つ一つの主題が独立的に存在感があり過ぎるために、私の情報処理能力の圧倒的な低さも後押しして、読み終わったときに、結局一番書きたかったことは何?という感想を抱いてしまう小説を、勝手に「渋滞小説」と呼ぶことにしている。先日、途中までで頓挫した原田マハ「暗幕のゲルニカ」が第一位。そしてこれが、第二位。
東日本大震災、富士山の噴火、ほとんど何も頭に入らなかったけれど会社経営の内部事情あれこれ、近親相姦、子宮筋腫、不倫とそれに伴うかなり大胆な性的な描写。頑張って読んだけれどアップアップしてしまった。そして官能小説として読むには物足りないし、官能小説でないのならちょっと状況があまりにエロすぎる(嫌いではない)。
「火口の二人」というタイトルだから、もっと二人の内面や関係性にフォーカスして、育ってきた環境とか、従兄弟でありながら肉体関係を持つに至った経緯とか、そこから現在までの互いの心情の推移とか、そういう内向的な要素を期待していた。主語が「俺」である時点で「俺」以外の登場人物の正確な内面を描くことは難しいから、冒頭からうっすら「ちょっと違いそうだな」とは思っていたのだけれど、これはもう勝手に想像して勝手に読み始めて勝手に文句言ってすみませんとしか言いようがない。 -
何というか、作者らしくないなぁと言うのが読み終って1番の感想。
3.11後に出た作品という事で、
あの震災後の作者の気持ちを反映しているのかな、
と邪推。
内容はやりまくって、食べまくって、またやりまくるの繰り返し。
堕落しているのか、前へ進んでいきたいのか今ひとつよく分からない従兄妹同士の2人。
もういっその事くっ付いてしまえ!と言いたくなる。
嫌いではないけれど、好きにもなれない1冊。 -
やっぱり白石作品は男性目線のだと私にはイマイチ。
女性目線の話のほうが共感できる部分が多い。
賢ちゃんも直子も現実から逃げてるだけでしょって思った。。
でも映画は観てみたい。 -
これ映画化したとき「男女がただヤッてるだけの映画」って評してる人いたけど、小説も平たく言うならそんな感じ。
結婚を10日後に控えた直子と、昔関係を持っていたいとこの賢治が再会し、肉欲に溺れる。言うなればそれだけの物語。
白石一文さんの著作なので、そこに哲学はあるというか(私が掴みきれているかは謎だが)人間の原始的な部分に迫った作品だと思う。あと男女のセックス観の違いとか。すれ違い、理解しあえないことも多々あるので。
背景に「富士山噴火」「大震災」があるから、どうせそうなるのであれば背徳的な関係に突っ走るとか享楽に溺れるみたいなこともあるだろうとは思える。
普通ではない状況のとき人間はどうなるのか。そういう意味で、原始的な部分に迫った作品。
崇高な「生きる意味」とか言ってたって、結局欲望の前にはひれ伏すしかないでしょ、みたいな。
映画観てないけどぐぐってみたら関連ワードで「本当にしてる」とか出てくるから、たぶんリアルを追求しているのだろう。
でもこの小説の世界観を映像で表現するなら、そう見えるくらいで挑まなきゃ難しいかも、と思った。純粋なのに俗的というか、相反するものの凄みを感じるので。
そう考えると俳優さんってすごいな。
でもこういうふたりって、結婚などをするとあっさり別れちゃったりするのかも。背徳感だとか身体の記憶だけで結ばれる関係というのも、あると思うので。 -
生きているって感じることは3つの欲の充実。
人によってそのバランスは違くても、それぞれに満足できれば良いのではと。
単純に生きるために必要なこと必要なことが1人で出来ないことがあるのなら、共に生きる人との出会いは奇跡なのかと。
映画は観ていないのでわかりませんが、こちらはわりと単純明白でわかりやすく、読みやすいです。 -
映画を先に見ていたけれど、白石さん原作だったんだ。
理屈っぽい文体は相変わらず。
富士山噴火を目の前にして、残された時間をひたすら性愛につぎ込む二人。
原作本の直子は、映画の瀧内公美さんとくらべ、少し幼い感じがする。文庫本のカバーの方が、原作のイメージにぴったり。