ブラックジュース (奇想コレクション)

  • 河出書房新社
3.33
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本棚登録 : 111
感想 : 14
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309622026

作品紹介・あらすじ

夫殺しの罪でタール池に生きたまま沈められる姉さんの死を、僕たちは歌いながら最後まで見届ける-世界幻想文学大賞受賞の残酷譚「沈んでいく姉さんを送る歌」、道化師を執拗に狙う殺し屋を描く「赤鼻の日」、象の一人称で語られる逃走劇「愛しいピピット」、奇形の天使との遭遇を描くファンタジー「俗世の働き手」、大気が汚染されつくした近未来、祖母の葬儀へ向かう孫が幼い日の記憶をたどる「無窮の光」、凶暴な怪物の襲来に怯える異世界を舞台にした、少女の苦い初恋物語「ヨウリンイン」ほか、全10篇。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。最初の「沈んでいく姉さんを送る歌」のインパクトが凄くて、最後まで読んでも結局最初のこれが一番心に残った。夫を殺した罪でタール池に沈められる刑に服す姉さんのイック、母親と弟たちは、彼女が完全に沈み切るまで美味しいものを食べさせたり歌を歌ったり、そして彼女が沈む間際まで花を飾ったりして見送ってあげる。とても残酷な刑罰のようでいて、奇妙な美しさがあり、一人きりで首を吊るくらいなら、こんな風に送り出されるのはもしかして幸せかもと思ってしまう。

    象だちがお気に入りの象つかいピピットを探して旅に出る「愛しいピピット」はとても可愛らしくて好きだった。ヨウリンインという謎の化け物に食べられそこなった女の子が忌み嫌われながらも、再びヨウリンインが現れたときにお気に入りの男の子を守ろうとする「ヨウリンイン」は、彼女の報われなさ、ヨウリンインの気持ち悪さなど、これも不条理でインパクト大。

    「俗世の働き手」には天使が出てくるのだけど、この天使がめっちゃ臭くて、腕がなくて羽の先に爪がついてて(コウモリみたいな感じ?)全然天使っぽくなくて怖かった。「大勢の家」は、吟遊詩人と呼ばれる人物が<三人の家>を使って宗教のようなものの中心人物となり一夫多妻で空き放題やってるのだけど…<三人の家>や<大勢の家>が実はある楽器のことだとわかったときはビックリ。

    全体的にどれも、どこかにありそうだけど絶対にない、独自のルールが支配している小さなコミュニティの話で、不条理感がとても良かった。

    ※収録
    沈んでいく姉さんを送る歌/わが旦那様/赤鼻の日/愛しいピピット/大勢の家/融通のきかない花嫁/俗世の働き手/無窮の光/ヨウリンイン/春の儀式

  • 最初の二篇が良かった

  • 夫殺しの罪でタール池に生きたまま沈められる姉さんの死を、僕たちは歌いながら最後まで見届ける―世界幻想文学大賞受賞の残酷譚「沈んでいく姉さんを送る歌」、道化師を執拗に狙う殺し屋を描く「赤鼻の日」、象の一人称で語られる逃走劇「愛しいピピット」、奇形の天使との遭遇を描くファンタジー「俗世の働き手」、大気が汚染されつくした近未来、祖母の葬儀へ向かう孫が幼い日の記憶をたどる「無窮の光」、凶暴な怪物の襲来に怯える異世界を舞台にした、少女の苦い初恋物語「ヨウリンイン」ほか、全10篇。

  • 短編集。不思議な物語。ファンタジー。SF。
    奇想という言葉がぴったりの、幻想小説集。
    確かに奇妙な設定ではあるが、どこか現実感と哀愁を感じる。
    上手く世界観を掴めず、イメージできないまま終わってしまったりと、楽しめない作品もいくつか。
    個人的には、グロテスクに天使を描いた「俗世の働き手」が一番好き。
    「沈んでいく姉さんを送る歌」「ヨウリンイン」もなかなか。☆2.5。

  •  オーストラリア出身の女性作家による、10編からなる短編集。
     荒唐無稽な話が多いが、その根底には人間や社会の闇の側面が凝縮されているように思える。
     また、なかなか世界感が掴みきれない話が多いので、ぼんやり読んでいると迷子になりそうにもなる。
     滑稽でもあるが、非常に残酷でもある。
     様々な家族が出てくるが、そのどれもが決して幸せではない。
     どの話も心の奥深くにズシリと突き刺さってきて、決して爽快な気分にはさせてくれない。
     冒頭に収録されている「沈んでいく姉さんを送る歌」は本書の中で一番印象が強いだけでなく、僕が今までに読んできた作品の中でも、間違いなく上位に食い込んでくる強烈な物語だった。
    「ヨウリンイン」や「大勢の家」も強烈なインパクトがある物語だった。
     中には今一つの作品もあるので、満点とは言えないが、読み終った後に、心の奥底にズシリと重たい物が残されたような気分が味わえる作品集だった。

  • 2005年世界幻想文学大賞・短篇集部門受賞作。
    2015年神保町ブックフェスティバルの河出書房新社ブースで何となく購入したのだが(ワゴンに残っていた「奇想コレクション」を全部かっさらったのは私だw)、これまで幾つか読んだ『奇想コレクション』から予想していた作風とはけっこう違っていて新鮮だった。早川書房の『異色作家短篇集』っぽい、と言えば一番近いだろうか。
    印象的だったのは『沈んでいく姉さんを送る歌』と『融通のきかない花嫁』の2作。

  • 「沈んでいく姉さんを送る歌」沈んでいくのにビックリ。でも透明感があって、カラフルなイメージなのは、背景の説明が無いから??
    とりあえず続きを読む。
    どの話もヘンテコでした。変わった設定と言葉遣いで、現実世界と少しずつずれている世界という感覚があります。
    このずれ感がどこかで読んだ気がするのだが。。。。
    椎名誠さんのSF小説かな???
    ということで、次は椎名誠を読んでみようと思う。
    全体は★三つだけど、「沈んでいく姉さんを送る歌」の印象が強烈なので1つプラス。

  • まず色あざやかさに息を呑む。不思議な、ありがちな幻想ぶったものかと思いきや、人の性ともいうべきものを随所にちりばめて、くすっと笑った自分に嫌気がさす、そんな感じ。

  • 2008/11/10購入
    2017/6/14読了

  • 2005年度世界幻想文学大賞受賞の、オーストラリアの女流作家による短篇集。
    「沈んでいく姉さんを送る歌」は、タイトル通り、重罪を犯して、部族の掟によりタール池に沈められるという刑罰を受ける“姉さん”を傍らで見守る家族の話。気丈に振舞う母親や姉の心情を思うと、せつなくて、悲しくて・・・。久しぶりに、すごい本を読んでしまった、という感じ。他にも、天使の造形が凄まじい「俗世の働き手」、「無窮の光」での、動植物が死に絶えた近未来世界のさま、少女の孤独が胸に迫る「ヨウリンイン」、山の嵐より怖い存在の母親にクスリとしてしまう「春の儀式」がよかった。
    突拍子もない世界設定ながら、登場人物たちの気持ちや行動は、容易に感情移入できるもので、そのアンバランスさが面白いのかも。
    ――Black Juice by Margo Lanagan

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