- Amazon.co.jp ・本 (500ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309709420
感想・レビュー・書評
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近代を代表する画家ポール・ゴーギャンと、その祖母で社会主義運動と女性解放運動に携わったフローラ・トリスタンの物語。
祖母と孫の話が交互に展開され、更に彼らの現在(物語中での時系列)を語る途中で、過去も度々回想シーンとして描かれます。
フローラは何故社会主義・女性解放運動に立ち上がったのか?
ゴーギャンは何故ブルジョワの生活を捨ててタヒチへ渡ったのか?
フランス人である二人ですが、意外にもペルーに縁がありました。
それにしてもこの祖母と孫は、セックスに対する考え方が見事に対照的ですね。
フローラの方は不幸な体験からきているので当然ですが、ゴーギャンの方はここまでクソ真面目にセックスのことを考えて何が楽しいんだろう?w
著者のマリオ・バルガス・リョサはペルーを、というよりラテン・アメリカを代表する作家ですが、政治運動にも関わり、ペルー大統領選挙に出馬してアルベルト・フジモリに敗れた経験もあります。
ニン、トン♪詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
印象派の退廃的画家ポール・ゴーギャンと彼の祖母で労働運動家のトリスタンの晩年を描いたとても面白い小説。事前に内容を知らずに読み出せばもっと刺激的でショックが大きかったのではないかと思わせる。500ページ近くになる翻訳を圧倒的な筆力とこなれた日本語訳で一気に読ませてしまう。歴史的事実を踏まえつつ、作者の想像力が充分に発揮されたノン・フィクション小説なのだろう。
本邦初訳ということだが、作者はあの落ちこぼれ日系大統領フジモリと大統領選挙を争った現地では超有名人であるということもまた興味深い。 -
ゴーギャンの生涯。
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19世紀半ば、女性と労働者の解放に人生を懸けたフローラ・トリスタン(祖母)と、
ヨーロッパの芸術に疑問を感じ、原始社会の中に芸術の本質を見出してタヒチに移り住んだ画家のポール・ゴーギャン(孫)。
2人の物語が交互に語られ、時代も目指したものも異なる2人なのに、それぞれが考える「楽園」に向かって突き進む純粋さは、ものすごく血のつながりを感じさせられた。
物語の語り手は、二人称でフローラやゴーギャンに優しく語りかけていて、壮絶な2人の人生をとても温かく包む神のようだった。
楽園は、叶えられないからこそ楽園なのであって、
心に楽園を描ける人は、幸せであるけれど、また不幸でもあるのだなと。