東方見聞録 (世界探検全集)

  • 河出書房新社
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309711812

感想・レビュー・書評

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  • 『東方見聞録』を読んでみる日が来ようとは…!笑
    本書は1978年刊同名タイトルを昨年復刊したものらしく、新たに加わった解説も相まって読みやすかった。実際仕えていたとはいえフビライ・ハン(以下本文に倣い、大ハーン)を必要以上に崇拝していたり(「君主のうちの大君主」)、旅行先の描写も誇張されていそうで胡散臭さはあったけど、国外どころかアジア方面なんて未知の領域だったヨーロッパ人にはこれが全てだったんだろうな。

    マルコ・ポーロ(以下、ポーロ)は故郷ヴェニスへの帰還後、国同士の小競り合いに巻き込まれて1年間捕虜として獄中にいた。その間同室だった大衆作家に、自身が旅してきたアジア諸国(日本・東南アジアを除く)や大ハーン治世下の情勢や暮らしぶりを語ったのが『東方見聞録』の原型である。ヴェニス帰還までのダイジェスト→旅行先の詳細を順番に述べていく構成だ。

    しかし後世の人物が加筆したことにより見聞録はボリュームアップ。(内容については真偽の程が怪しい箇所が増えたかもだけど…)
    四方田氏(比較文学者)がまえがきで述べていた「数百年の間に形成された、東方世界をめぐるアーカイヴ」は、最適な見聞録の捉え方かもしれない。

    我々日本人にとって『東方見聞録』といえば、やはり「黄金の国ジパング」。
    …なのだが、あれだけ大々的に、しかも割とインパクト強で習ったわりには、意外と「チパング」(本文中の表記)の項はあっけない。その僅かな内容もやはり胡散臭いし…。
    「チパング」支配者の宮殿は、窓に至るまで金で出来ている。バラ色の真珠を多量に産出する。住民は人喰い人種。(!)
    どうやらポーロは実際「チパング」に行っておらず、元寇の経緯までもチグハグに伝え聞いているという。例えば北風が激しく吹いて小島に逃れた元の兵士達が、追討に来た日本の船に忍び込み「本島の首都」(鎌倉?京?)に向かったとか…。これもこれでインパクト強だな笑

    元寇といえば…でもう一つ。
    「戦闘前に名乗り口上をする習慣(?)が元側になく、あっという間に日本側が追い込まれた」と昔授業で習った。(気がする)
    しかし大ハーンが臣下ナヤンと対決する際、元寇みたいに有無を言わさず攻め入るような真似をしていないことに気づいた。陣営が整うや、鳴物が響き両軍全員が声高らかに歌うのだと。しかもそれがタタール人(蒙古人のこと)の習慣なんだと。
    名乗り口上ではないにせよ、彼らにも戦闘前の習慣があって士気を高めていた…。知られざる歴史の1ページを覗いたような、教科書より一歩先をリードしたような優越感に浸る(笑)

    釈放後のポーロは、大旅行家として人々から尊敬されると同時に大法螺吹きと呼ばれた。国外を出たことがないヨーロッパ人からしたら全てが出来すぎた話だったからだ。(まぁ「チパング」といい、伝聞で済ませた場所は確かにいい加減だったし…)数世紀を経てようやく探検家がその正確性を見出し、見聞録は真価を認められることになる。
    信憑性はともかく、彼が生涯をかけて辿った旅路は嘘ではないのだろう。

  • フビライ・ハーンは、現在この世界にいる、いや、今までにこの世界にいた王の中で最も偉大な王。モンゴル帝国の都ハンバリク(中国名:大都、現在の北京)。

    ザイトゥーン(泉州)。膨大な胡椒が運び込まれている世界最大の港。高価な宝石や大粒の真珠を積んだインド船が次々とやってくる。アレクサンドリアの100倍の数の船が入港している。

    プレスター・ジョン(キリスト教徒の王)はモンゴル高原の覇者だったが、チンギス・ハーンとの戦いに負けて戦死してしまい、プレスター・ジョンの王国もモンゴル帝国に併合されてしまった。

    ジパング。中国の南(マンズ)から東へ1500マイルの大洋中にある。とても大きな島。住民は皮膚の色が白く、礼節の正しい優雅な偶像教徒。独立国であり、自らの国王を戴いている。黄金がいたるところで見つかり、人々は誰でも莫大な黄金を所有している。この国に行ったことがある大陸人はおらず、商人も訪れないため、豊富な黄金はかつて一度も国外に持ち出されていない。国王の宮殿の屋根はすべて純金でふかれており、床も指二本幅の厚さの純金で敷き詰められている。また、バラ色をした大きな真珠が大量にとれる。真珠を死者の口に入れて弔う習慣がある。

    フビライ・ハーンはジパングの富を聞き、二人の重臣(アバカンとヴォンサニチン)に命じてジパング征服に乗り出した。モンゴル軍はザイトゥーン(泉州)とキンサイ(杭州)から出港し、途中、暴風雨で多くの船を失ったが、3万のモンゴル軍がジパングに上陸した。モンゴル軍はジパング王の国旗をつけ、ジパング軍になりすまして首都に入城した。ジパング人は自国軍と間違えて、モンゴル軍の首都入城を許した。モンゴル軍は首都を7ヶ月にわたり死守したが、ジパング軍に包囲されてしまった。モンゴル軍は「命を助けてくれれば」という条件でジパング軍に降伏した。これを聞いたハーンは遠征軍を指揮した二人の重臣を処刑した。ジパングは最後までハーンに従わなかった。

    ムトフィリ王国。南インド。良質のダイヤモンドが豊富にある。そこでは谷底にあるダイヤモンドを採取するため、生肉の塊を谷底に投げ込む。すると谷底にあるダイヤモンドが生肉に突き刺さる。白い鷹がやってきて、谷底の生肉をくわえて谷から出てくる。鷹が地面に降りたところで、近づいて行って脅かすと、鷹は生肉を置いて立ち去る。生肉に突き刺さったダイヤモンドを回収する。※船乗りシンドバッドの物語と類似。

    マルコ・ポーロ『世界の記述』1300

  • 歴史の授業で出てきたマルコポーロの東方見聞録。
    その内容が読めるなんて感慨深いです。日本は鎌倉時代。フビライハーンの元寇のくだりが出てきます。マルコポーロはただの商人だと思っていたらフビライハーンに仕えていたらしい。そしてフビライさんの治めていた地がとにかく広い!
    飛行機で行き来できるようになった今もすごいなぁ面白いなあと思うくらいだから、当時の人たちはいろんな土地の話を聞いてもっと面白かっただろうなあ。

  • マルコ・ポーロによる元への旅の記録たる東方見聞録。ヨーロッパを出発してから元に到着し、戻ってくるまでが記されている。ジパング(チパング)の記載など、情報の正確性についてはかなりの疑問がつくものの、各所の生活や風俗を記した資料としては興味深い。惜しむらくは、ガイドブックっぽくなり、読みにくいところだろう。

  •  13世紀の中央アジア、中国、東南アジア、インド・・マダガスカル島まで。

     マダガスカル島にたくさんの象がいて、象牙の輸出が最大産業?????、なんてことが書かれているから、そうか昔はマダガスカルにも象がいて、でも人間が滅ぼしてしまったんだな、と一瞬思ったが、そんなはずはないとちょっと調べてみたら、大きな勘違いだった、ということ。マルコがモガディシュあたりを誤記して、しかも島だと書いたものだから後世の探検家がマダガスカル島を「発見」したときにこれが、これがマルコの書いた島だと勘違いしたという。

     幾つかの間違いはあるかもしれないが、ほとんど事実だと研究者は言っている。13世紀の世界が、生き生きと動き出し、まるでその時代を見ているかのようにページを繰る手が止まらない。今はもうない世界、でもなさそう。インドあたりの様子は今とそんなに変わらないんじゃないか、そんな気がする。

  • 怪しさプンプンの旅行記。
    在りし日の水曜スペシャルを思い出した。

  • 黄金の国ジパングで名のみ知るのを初めて読めた。

  • 史料として楽しみました
    思った以上にインチキ記述が多くてこれは信用できるものにはならないなあ
    面白いけど

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著者プロフィール

ヴェニスの商人で旅行家。宝石商だった父親に従い1271年東方に旅立ち、小アジア・中近東・パミール高原を経て1275年に北京に到着。フビライ・ハーンに徴用され官吏として使え、1295年に帰還。

「2022年 『東方見聞録』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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