- Amazon.co.jp ・本 (402ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309728711
感想・レビュー・書評
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めっちゃフリーダムで欲望にダイレクトやな、古代人。
…というのが、読後の第一の感想。
とりあえず、国認定の「正史」というお堅いイメージが、いい意味で崩れました。
712年、奈良の都の時代に成立した、日本最古の歴史書で、三巻構成となっています。
天照大御神や、イザナギ・イザナミが特によく知られる、神世の時代を記した上巻。
初代の神武天皇から第十五代の応神天皇の御代までを記した中巻。
十六代の仁徳天皇から三十三代の推古天皇の御代までを記した下巻。
大喧嘩したり、争ったり、はたまた恋する神さまたちが自由なのはもちろんのこと。人間たちも負けてはいない。
帝位をめぐって、絶えず兄弟間で殺しあう皇族たち。
そうして殺された父の仇を討つべく天皇である伯父を暗殺する7歳男児と、邸に逃げ込んできた彼を匿い、討伐軍と戦い、謀反人として自害する老家臣。
苛烈すぎる気性が災いし、遠ざける口実として、父である天皇の命で日本各地の異民族の平定に赴かされ、父との不仲を嘆きながら異郷で没するヤマトタケル。
天皇の子を孕んだ后でありながら、帝位への野心を持つ同母兄との近親相姦をきっかけに、謀反を起こし、兄に殉じて死を選ぶ美女サホビメ。
…等々。
神の子孫である天皇ですら例外でなく、自分たちの欲望や野心に忠実に、愛したり、至高の地位のために争い、殺し合い、仇に復讐し、義に殉じ…勝者は栄え、対して敗者は死んだ人々の姿が率直に描かれた、たくさんのエピソードがつまっていて、そこに美化はなく、かなり興味深く読めました。
とはいえ、あまりの登場人物の多さと慣れない名前の羅列に、本当を言うと、内容の半分も理解できてなかった気もします。(血筋・系統がものすごく重要だったからなんだろうけど、たくさんいる妻やそれぞれに生まれた子供の名前を逐一列挙されても、頭に入らない…。)
たくさんのエピソードがつまっているというのは、裏を返せば、「寄せ集め」というのと同じことで、ものすごく、荒削りで混沌としたつくりをしているのだけど、それこそ、「日本の黎明期」を象徴する作品だと言えるかもしれません。
訳者解説で、池澤夏樹さんが、古事記を「素材が多すぎて、口調が早すぎる未整理の宝の山」と称しているのは、言い得て妙。
読んでみると、わからないなりに、なんだか「未開の魅力」があるということだけは、伝わりました。
時間をおいて、古典の知識を深めた上で、もう一度再読したいですね。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
おなじみの神さまたちの話がずいぶんあっさりまとまっていて意外だった。ひとつひとつの話がもっと長いのかと思っていた。翻案した絵本や何かに接してきたから、いろいろ余分なイメージが自分の中にたまっていたような気がする。
古事記はとてもおもしろいというわけではないんだけど、人間は自分のルーツをたどりたいものなんだなと実感した。 -
古典が大苦手、日本文学全集の第一巻として池澤訳で上梓されなければ生涯読むことはなかったと思う。日本の起源を崇めるような内容であることへの懸念もあった。ところが読み始めるや否や展開のスピードとダイナミズムに巻き込まれもう止まらない。始めは苦痛だった系譜の羅列も次第に名称の由来の奥行や色目かしさ、言葉遊びのユーモアに魅せられ(池澤氏の脚注の尽力による)、幼い頃から馴染みある説話が繋がるのも新鮮であった。敗者に寄り添う物悲しさ、悲恋とエロティシズムなど小説的要素も強く、こんなに面白い書だったとは…知らなかった。
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ようやくきちんと読んだ古事記三巻。アマテラスが弟スサノヲの所業を見て、天の岩屋戸に入って中から戸を閉じてしまう話や、八俣のオロチをスサノヲが退治する話、稲羽の白兎と大国主命の話あたりはよく知っているが、あとは代々天皇の伝説的な話が続く。とても読みやすい現代語訳ではあるし、池澤夏樹氏が丁寧につけてくれている注釈を参考にしつつ読めば話についていくことはできるが、如何せん、代々天皇は妻が多く子だくさんで、もちろん伝説と実話の区別は不明だから、名前が列記されているページはかなり読み飛ばしてしまった。
古代ヤマトを伝える書物として、古事記、日本書紀があるが、解題によれば、日本書紀よりも古事記の方がはるかに自由で大らかな「文学」のようだ。(日本書紀は未読)。確かに古事記はなかなか話がスピーディーに進むし、神様たちは神々しくはなく、続く天皇たちも恋し、喜び、恨み、競い、殺し合う。ギリシア神話を思わせる物語も少なくない。とりあえず「古事記を読めた」という満足感。 -
★3.5
夥しいまでの名前の羅列に心が折れそうになったけれど、読み物としてはなかなか面白い。国土そのものを創ったイザナキとイザナミ、荒々しいものの悲哀が感じられるヤマトタケル、夫である天皇と実兄の板挟みになるサホビメ等、印象に残る話が多々。また、神や天皇、天皇の妻であっても嫉妬や復讐の感情を抱き、とても人間臭くて逆に好感が持てる。そして、「見てはいけません」からの覗き見というお約束の展開が、既に「古事記」で成立していたことに驚くばかり。池澤夏樹の脚注も面白く、有名な「因幡の白兎」の話もきちんと知れた。 -
小説ではないので読んでそれほど面白とは思わないが、資料としての価値が高い。
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2021.03.21 図書館
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太安万侶さまから始まるところが池澤さんのこのシリーズに対する心意気を感じた。
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今まで読んだ中で最も読みやすく感じました。やっぱ古事記は良質のファンタジーで楽しい。
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池澤夏樹による古事記の現代訳。これでもかなり読みやすくなっているのだろう。
神々の時代の上巻、初代神武天皇からヤマトタケルの冒険を記した中巻、仁徳天皇から推古天皇までの下巻。古事記に通じるのが、敗者への共感というのはなるほどと思った。しっかし名前長いね、日本の神様。ひたすら神名人名リストが続くし。