作品紹介・あらすじ
ケータイから脳‐脳コミュニケーションへ!技術の融合から、超人類が生まれつつある。脳から脳へテレパシーのように思いを伝える(米国防総省が実験を推進)など、驚異の生体情報社会の到来を、世界中で活用されているウェブソフトInternet Explorerの開発者が告げる。
感想・レビュー・書評
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作者はMSのブラウザ開発者。今最も有名な科学者の1人。
http://rameznaam.com/about/
外来遺伝子導入について、遺伝子を適切な場所に運んでもらうベクター(運び屋)が必要となるが、その役割としてウイルスが用いられる。ウイルスは細胞壁や細胞膜を突破して細胞内に入る特質を持っている為、遺伝子を運び込む理想的なツールとなる。
このウイルスを作り替えれば、ウイルスは自身の遺伝子を送り込んで増殖する事無く、人間が用意した遺伝子を送り込ませる事ができる。
米国では2002年に800万件以上の美容整形が行われ、170億ドルものスポーツサプリメントやハーブ製品が消費されたが、こういったサプリメントは殆ど、あるいは全く効果がない。つまり、確実に精神的、身体的能力を増強する薬剤や技術が現れればその潜在需要は計り知れない。
中絶が合法の国では妊婦の出産時死亡率は10万分の1だが、非合法な国ではこれが700倍に上がる。世界全体では妊婦の死亡例の8分の1は危険な中絶によるものであり、その大部分は非合法な地域で起こっている。つまり、能力増強措置の安全性に懸念を抱くならば禁止するのではなく、規制する事が肝要である。
脳には約1,000億個ものニューロンがある。それぞれのニューロンは1個あたり平均1,000個の他のニューロンと接続しているので、脳全体としては100兆もの連結部分(シナプス)が存在する。
カフェインやニコチンも一種の能力増強剤。反応速度や注意力が僅かに向上する。
長時間の集中を要求される爆撃機のパイロットは、出撃時には覚醒剤、休息時には睡眠薬という服用サイクルでミッションをこなす。しかし、これらには副作用がある為、リバウンドのないモダフィニルを利用した連続補助能力プログラムの開発を進めている。DARPAは247ぶっ通しで任務遂行できたり、5日間食料なしで戦える方法も研究している。
人間の恋愛関係にはバソプレシンというホルモンの受容体が関わっている。
これは、オキシトシンと共に恋愛中に増加する脳内物質で、例えばキスをしただけでバソプレシンが血液中に放出されるが、これも遺伝子治療で増やす事ができる。
モノアミンオキシターゼAの遺伝子の変異はスリルを求めたり新奇なものに手を出す行動に関係し、セロトニンの受容体は宗教体験に関わる。人の信心深さの26%が遺伝子によって決まる。
世界全体で、国民の平均IQとGDPの相関係数は0.76と大変高い。理科や数学テストの標準偏差が1点上がれば、経済成長率は1%あがる。米国の場合、SAT(大学進学適性試験)の標準偏差1点あたり、年間10億ドル。また、国民全体の平均教育期間が1年増えるごとに経済成長率が0.5%増える。
米国で新薬を開発して承認を得るまでにかかる費用は平均10億ドル近い。
人間は究極の資源であり、社会にとって最も貴重な資本であるので、この資源に投資するのは理にかなっている。行政機関は自由を制限するのではなく、個人や家族に力を与え、人類全体の為の利益を手に入れる事ができるよう努力すべき。
人間の死亡率は8年毎に倍増する。総死亡例の半分は加齢に伴う疾患の発生。
メディケア全体支出のうち、28%は患者の人生最後の年に費やされ、47%が最後の3年間に費やされる。米国の医療関連費の半分近くは65歳以上の人のものだが、ここの人口比は13%。
寿命に大きく影響するフリーラジカルは体内のどの細胞の中にもある分子。
ミトコンドリアは細胞全体の為にエネルギーを生産するが、副産物として多量の
フリーラジカルも作る。これは電気的に不安定な為、細胞内のいたるところでほかの分子に頻繁にぶつかり、電子を奪う(酸化させる)。
ミトコンドリア自身のなかにも少量のDNAがあり、このDNAらせんにぶつかって電子を奪うと突然変異が起こり、蓄積される。結果、細胞が不調になりそれはどんどん増大する。これが進むとエネルギー生産効率が下がり、筋肉は弱々しくなり、脳の細胞野活動は遅くなり、中には完全に活動を停止してしまう細胞もある。これが老化である。このフリーラジカルに対する耐性遺伝子を組み込む事で老化の速度を遅らせる事ができる。
カロリー制限によっても寿命は延びる。
カロリー制限を受けていたマウスの死後解剖してみると、
3分の1はこれといって悪い部分はなかった。
抗老化治療薬は2020年から2060年の間には売り出され、この治療を受けた者は、肉体的、精神的若さを保ったまま寿命を数十年延ばせる。
人類史上、かなりの期間を通じて出生率も死亡率も高い。西暦1000年には、人口1000人あたり70人が生まれ、69.5人が死ぬ。つまり、増加率は0.05%。
現在は、1000人あたり21人が生まれ、10人が死ぬ。増加率は1%。出生率も死亡率も大幅に下がった。
全世界で6組に1組のカップルが不妊。
全妊婦例のうち、3%が先天性障害を持って生まれる。
人間の遺伝子の個人差は極めて小さい。ゲノムは約30億個の塩基からなるが、
人によって異なるのは1,000塩基につき1ヶ所だけ。つまり、300万箇所に個人差が現れ、これを1塩基多型(SNP)と呼ぶ。
地球上にはすでに4,000万もの一卵性双生児がいるが、彼らは自然なクローン人間である。
神経を情報が伝わる速度は毎秒100メートルと比較的遅く、コンピューターはその3,000倍速い。
視覚コードもビデオフォーマットの1種に過ぎないので、脳に刺激を与えて視覚を呼び覚ます事ができる。これを応用して、デジタルズームや赤外線、X線等正常範囲を超えた視覚能力実現が目論まれる。
ニューロンの単位で考えれば、感覚=記憶=想像が脳全体の一般的原則。
これらを行う時、全て同一のニューロンが発火し、音や匂い、味、肉体的感覚を知覚する。そしてこのデータをコンピューターや人間間で瞬時に送り合う事もできる。
分析が得意なコンピューターを人間の知覚に接続すれば、人間の洞察力は今よりはるかに鋭くなる。新しいIT技術の一つでありニューラルインターフェースは、言語、映像、音声、感覚、感情などを統合していっそう効果的に一体化して伝えられるようになる。例えば、友人にデートについて自慢する時、言葉だけでなく、その晩の素敵な相手の映像をじかに見せ、耳には豊かなシンフォニーの響き、舌にはワインの味わいそのもの、肌にふれる相手の手の感触もそのまま、
おやすみのキスをした時に全身を駆け巡る感覚、これら全てを伝えられる。
洞窟絵画から農耕まで1万年、農耕から文字まで数千年。文字から蒸気機関の発明まで数千年。だが、DNAの立体構造を解明してから遺伝子工学の成功まで僅か20年。その後ヒトゲノムの地図を作るのに30年もかかっていない。
人類は、広まりやすい遺伝子(利己的な遺伝子)が自然選択されるに任せるのではなく、自らの発展進路を選択できる地球上で唯一の生物となった。
これは7億年前、生命の多様性が花開いた多細胞生物の出現と同じくらいの意義がある。今後の人類が生み出す新しい種は何百万にもなるだろう。そこから振り返ると、今のホモサピエンスは極めて原始的な生命グループだったと言われるだろう。
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悪くない本だと思う。
細かな科学的考察は少ないが、2005年ぐらいまでの間のDNA関連の可能性について、わかりやすく触れている。普段こういったことに親しんでいる人には物足りない。
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ぶっちゃけ、前座が長い。全11章だが、読むべきは9章~11章だけ。1章から8章には事例が豊富すぎるくらい掲載している。その豊富さが筆者の言わんとしている論理を固守しているのだが、やはり長いし、文が魅力的でないので飽きる。しかしながらさすがにInternetExplorerとOutlookの開発者の一人が展開する論理には納得させられ、自分もかつてからうっすらと想像していた未来が、ここまで現実になっていんだという実感を得られた。あくまでも一つの可能性だが、人類が進むべき方向が明確に提示(報告)されている。
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表紙とタイトルは胡散臭いですが、中身は一流の科学書です。夢物語的なSF書では決してありません。こんなに分かりやすく、説得力があって、かつワクワクする科学書も珍しいです。
前半は「遺伝子操作」、後半は「電脳化」について取り扱っています。遺伝子操作による治療、長寿命化、能力増強から脳に電極を埋め込むニューラル・インターフェースまで、幅広い研究内容や動向、それに対する筆者の考察が記述されています。
これを読んでバイオ技術に興味を持つなという方が難しいくらい興味深く読むことができました。以前はあまり興味のなかったバイオ技術ですが、この一冊で一転しました。
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ゼミ発表のために読んだ。
この本に書かれているような未来はきっと来る。
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