- Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309908625
作品紹介・あらすじ
1284年の冬、南フランスの司教区で、司教が何者かに惨殺される。シュケ助任司祭は殺人事件の真相を調べるため、謎に包まれた司教の過去を求めてパリに旅立つ。時を同じくして新しく着任した司祭アンノ・ギは、布教活動を立て直すため、呪われた村に潜入し、村人に正しい信仰をとりもどさせようとする。いっぽうローマ教皇庁には、不祥事を起こした息子を救うため、高名な騎士が現れる。別々に進行するこの3本の軸は、はたして何処につながっていくのか?中世の深い闇と幻想。古い裁判記録が語る、消された歴史とは何か…。やがて読者は、予想もつかない恐ろしい結末へと導かれる。
感想・レビュー・書評
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中世フランスの方田舎でおきた凄惨な殺人事件。当時のキリスト教世界の独善的な思想と権力の構図を背景にもつ事件に対し、それぞれの立場で真相を探ろうとするのだが、主だった登場人物が皆死んでしまうのはやりきれない。個人的にはとても好きなテイストだけど、万人受けはしない、たぶん。読後の後味の悪さがいつまでも残って、忘れられない作品。
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世界観と、伏線はいいんだけど。
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たいへん面白い作品であった。
13 世紀のフランスとローマ教皇庁が舞台の歴史ミステリー。
南仏司教区での司教惨殺事件を中心に、
3 つのストーリーが其々に展開していくあたりは非常にワクワクとする。
これはすごい傑作だぞと期待大。
各ストーリーがリンクし始めたころから、やや失速感(?)。
前半ゆっくりゆっくりと進んでいた話が、
後半テンポアップしてきた事が原因か?
だが十分楽しめる作品だとは思う。
でも惜しい…。 -
3分の2まではぐいぐい夢中になった。残りが失速した感じ。
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13世紀、フランス。ある村で発覚した、惨殺死体遺棄事件から端を発した奥深い事件の真相。三本立てで進行するストーリーには、惹きつけられるエピソード・ストーリーが多く飽きずにほとんど一気読み。あれだけ多くの登場人物を淡々とした描写で感情移入無しに見事に描き分けられた訳者に敬意。事件の終息の仕方は胸をつかまれるような驚きなのに読後感は意外にスッキリ。
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ボッシュの奇怪な絵の表紙に惹かれて手に取った。大声では言えないけどこういうの好きなんだよね(ここはフォントを小さくしたい感じ)。中世ヨーロッパ、異端審問、秘密結社、呪われた村、黙示録の再現…。本書は世界17か国語に翻訳されたそうだが、こういうのをキリスト教を基盤とする社会に住み、ある程度以上信仰を持つ人たちはどう思って読むんだろうか。エキゾチックな歴史ミステリとして楽しみながら、そのことが気になってしかたがなかった。
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翻訳ミステリというジャンルほど良質の作品が集まっているジャンルはないとかねがね思っているし、「翻訳ミステリ冬の時代」という言葉が作品の質を指しているのではないということは、この作品を読んでもよくわかる。
中世ヨーロッパ、キリスト教というような、敬遠される要素は多いと思われるが、毛嫌いせず読めばきっと満足できると思う。
最近、翻訳ミステリがなぜ売れないかというのが局地的に話題になっているようなので、それに絡めてみた。 -
ブログにレビューを書きました。
http://yo-shi.cocolog-nifty.com/honyomi/2010/07/post-ca50.html -
「薔薇の名前」以降の中世ミステリーはかわいそうだ。なんにつけてもエーコと比較され、批判的立場にせよオマージュにせよパロディーにせよ、あの傑作を中心としてその座標軸の中で立場を決められ、評価されてしまう。
超えることは無理だとしても、せめて「第二の」とか「エーコの後継者」とかいった帯の賛辞ぐらいは欲しいところだと思う。
ところがこの本は、アリストテレスまで平然とでてくるのに、「薔薇の名前」を意識したところが感じられない。少し若いが、主人公ギの中世的でない個人主義的な性格や冷徹な知識、師を観察しつつ若さゆえ女性的な力に引きつけられてしまう弟子など、似た要素はキリストとアリストテレスとの論理的矛盾以外にも多く見受けられる。
だけどもそんな似ている部分が、かえってこの作品を薔薇の名前から無関係な評価へと高めている。「薔薇の名前」を超えられてるかな? というような多少いじわるなみかたをする読者も納得の読後感じゃないでしょうか。