野の古典

著者 :
  • 紀伊國屋書店
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本棚登録 : 213
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784314011808

作品紹介・あらすじ

古典は骨董品ではなく、日常使いの器なのだ。使ってナンボ。その使いかた、楽しみかた、味わいかたが、本書にはたっぷり盛られている。安田節というユーモアとエロスのダシを効かせて。――俵万智(歌人)

古典には立派なことばかり書いてあるわけではない。底無しの煩悩、醜い邪心、制御不能な愛欲、えげつない話――教科書には載らない部分こそ、 人間の真の姿を映し出してくれる。『古事記』『万葉集』から『南総里見八犬伝』『武士道』まで、能楽界の奇才が縦横無尽に語る。

NHK「100分 de 名著 平家物語」講師で好評を博した安田登の最新刊
★装画=しりあがり寿 ★ブックデザイン=佐藤亜沙美(サトウサンカイ)

感想・レビュー・書評

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  • 古典って身近なものだと改めて思わせてくれる内容だった
    もっと味わいたいなあと改めて思った

    能楽師である作者の幅広い知識と愛が詰まっている
    ただ途中で眠くなってしまった
    何度も

    「能」を見た時も寝てしまったしね
    眠りの要素が入っているとか
    まっ、いっか

    ≪ 連綿と 祈りと鎮魂 能に込め ≫

  • 古文・漢文の授業は嫌いではなかった。文法は面白くはなかったが、1000年、2000年も前の人の気持ちや考えが分かるのが、普通にエキサイティングだった。しかし安田先生は、いやいや学校の授業だけで満足したらもったいないとおっしゃる。古典にはさらにその先があるのだと。あの安田先生が言うのだから間違いはない。

    ただ、あの安田先生だからこそ、通りいっぺんの解説に終わるわけがなく、帯で俵万智さんが言うように、本書はたっぷりとユーモアとエロスのダシが効いている。古事記、浦島太郎、好色一代男、東海道中膝栗毛……分かる人なら分かりますわな。このラインナップ。

    もちろんがっつり本格的な解説もあり、参考書まで挙げられて、要所はきちんと押さえられている。これはまたぱらぱらと読み返したくなりそうだ。ゆるーい一風変わった古典案内。就寝前のお供に最適でした。

  • 日本の文学と能と文化の歴史概略を知ることができる。へえー能って眠くなるもので、そのあわいで感じるのがいいんだ。個々の作品を読むためのガイドも便利。とても一度では頭に入らないので、折にふれ読み返そうと思う。

  • 古典と言われる数々の物語を楽しく紹介された本。取り上げられている本を今度は読んでみたい。巻末の主要参考文献を見ながら「医心方」「古事記」「平家物語」などを読んでみたい。

  • 『古事記』から『南総里見八犬伝』『武士道』まで、教科書に載るような古典ではない「野の古典」を紹介した本。著者は能楽師でもあり、本書のなかのいくつかの作品と「鎮魂の芸能」である能との関係を解説したり、原文に節をつけて音読することを勧めたりしているのが独特。

    扱う作品は神話、物語、随筆、歌集、伝書、思想書と多岐にわたるが、やはり『古事記』や『浦島太郎』、『好色一代男』、『東海道中膝栗毛』のエログロに対する大胆さが印象にのこる。

  • 日本の古典
    古事記、万葉集、御伽草子、風土記、論語、中庸、伊勢物語、源氏物語、古今和歌集、新古今和歌集、平家物語、風姿花伝、北条記、徒然草、好色一代男、奥の細道、東海道中膝栗毛、南総里見八犬伝、武士道、
    の面白さを紹介している。
    能楽師の著者のおすすめは声に出して身体的に読むことだという。

    古典は堅苦しく難しいイメージとは違った視点で、学校ではさわりしか学んでないことや、思っていた内容とは違ったりして、深く読んでみたくなった。
    そういう人のためにおすすめの本も各古典ごとに数冊紹介されており、筆者の読書量の多さを示している。

  • ・P377:第二十四講 わたしたちは何者か
    日本人が「わたしたちは何者か」と考えることを突きつけられた時代が、少なくとも二度ありました。飛鳥・奈良時代と明治時代です。

    それはいずれも圧倒的な異文化が突然流入してきた時代です。その奔流に足をすくわれかけた日本人は、「わたしたちは何者か」と自問する必要に迫られました。

    その問いに答えるべく登場した書物が、奈良時代の「古事記」と「日本書紀」であり、明治時代の「武士道」です。

    ・P379:日本人とはどのような民族か
    つまり「武士道」には、「日本人とはどのような民族か」を説明する意図で書かれているとはいえ、そこに描かれる日本人は「現実の日本人」ではなく、自分達がこうありたいと思う姿、日本人としてこうありたかった姿が描かれているともいえます。

    ・P380:第二章で新渡戸は、仏教や神道が武士道にもたらした影響を認めながらも、もっとも大きかったのは陽明学を含む孔子・孟子の論、すなわち儒教であると述べ、第三章以降でその七つの徳目「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」を論じます。

    ・P389:近代化で失った美徳
    明治の開国以降の日本は、諸外国の制度や文化や思想を急速に貪欲に吸収したがために、「武士道」に描かれるような日本人の美徳の多くを捨て去りました。その結果が太平洋戦争であり、そして一時期はエコノミックアニマルとまで呼ばれた、日本人のあくなき利潤追求の姿です。

    しかし私達の心性の奥深くには、「武士道」に書かれた徳目が熾火のように燃え続けていて、その火が折々に徳目への憧れとなって現れるのです。

    ・P391:おわりに
    それにしても、これだけ多くの古典が入手しやすい形で、しかも原文付きで書店に並んでいる国というのは、実はとても珍しいのです。
    (〜中略〜)
    日本と同じ漢字文化圏の韓国の人やシンガポールに移住した華僑の人たちは、漢字を日常的には使わなくなっていったので、ルーツとなる中国の歴史が書かれた古典を読むことが難しくなってしまいました。
    (〜中略〜)
    これらの国々と比較しても、日本は本当に恵まれています。

  • 著者は能楽師であり、古典の普及にも力を
    入れているそうです。

    自国の古典を、訳文はもちろんのこと、原
    文さえもこれだけ多くの作品に触れること
    ができる日本は、世界でも非常に稀有な存
    在と言えます。

    ヨーロッパに国でも、なかなかここまでは
    ないそうです。

    そして古典には、今の日本人が前を向いて
    生きるヒントがたくさん隠されています。

    「学校で習ったけれど、全く分からなかっ
    た」という人は多いはずです。それもその
    はず、多くの作品には男女の機微などが赤
    裸々に表現されています。

    思春期の高校生などにとっては授業に身が
    入らなくなるような内容なのです。そのた
    め、退屈な場面しか教科書に載せられてい
    ないそうなのです。

    大人になりある程度の人生経験も積み、そ
    れでも日々の悩みが尽きない人こそ、古典
    を読むべきです。そんな一冊です。

  • 宗教や文化の源泉に触れたくて読了。古事記、日本書紀、和歌、能や狂言、俳諧、江戸時代の戯作まで、幅広く取り扱って安田さんらしい軽妙な切り口で解説してくれる。流石に何百年と読み継がれているからには、人間の本質みたいなものが含まれていて、特に困難な時、不安定な時の指針みたいなものを指し示してくれるんだろうと思う。古典のエッセンスである「鎮魂と慰霊」「温故と知新」などの意味がわかるし、様々な「語源」も知ることができ、ますます古典に興味を持つようになった。

  • 古典に興味をもったひとにおすすめ。情報が多いので再読しながら味わうことにする。

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著者プロフィール

安田 登(やすだ・のぼる):1956年生まれ。 能楽師のワキ方として活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。関西大学特任教授。 著書に、『身体能力を高める「和の所作」』(ちくま文庫、2010年)『異界を旅する能』(ちくま文庫、2011年)、『日本人の身体』(ちくま新書、2014)、『身体感覚で『論語』を読みなおす――古代中国の文字から (新潮文庫、2018年)、『見えないものを探す旅――旅と能と古典』(亜紀書房、2021年)『古典を読んだら、悩みが消えた。――世の中になじめない人に贈るあたらしい古典案内』(大和書房、2022年)、『魔法のほね』(亜紀書房、2022年)など多数。

「2023年 『『おくのほそ道』謎解きの旅』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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