- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784326154265
感想・レビュー・書評
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知的に刺激を受ける。理解度5割といったところ。
勉強しようという気になる。いつのまにかいろんな事が分かっているようだ。
講義をしてから10年経つだろうから,議論の幾つかには結論が出ているかも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
# 書評☆2 ヒトはなぜ協力するのか | 人が協力するのは元々そういう性質だから
## 概要
職場で同僚からの協力が得られなくて悩んでおり,どうすれば協力を仰げるか探していてあたった内の1冊だ。
「人はなぜ協力するのか」という問いを検証するための研究成果などの紹介・考察となっている。
翻訳本であり,しかも学術よりな内容のため,読みにくかった。文量自体は160ページ程度と多くはないのだが,堅苦しい論調と結局結論が見えない論理展開で何がいいたいのかわかりにくかった。
書名で掲げられている問いに対しては,冒頭での幼児に対する協力行動の実験が物語っている。それは,人は元々協力する性質を持っているから。社会性が身についておらず,言語の理解もままならない生後間もない幼児に対する実験の時点で,困っている人を助けるような協力行動があったので,結局これが言いたかったことなのだろうと思った。
ただし,こちらが求めていた「どうすれば他人に協力行動を仰げるか」についてはほぼ何も参考になることがなかった。読みにくい論調を我慢して読んだかいがなかった。
## 結論
心理学の研究者にとっては,論文の引用などがあり参考になるのかもしれない。それ以外の一般人には,読みにくい内容の割に得られるものが少ないので,オススメしない。
パーマリンク: https://senooken.jp/blog/2019/02/09/ -
文化的ラチェットという考えはとても魅力的。生物学的機能から、多様な文化・高度な文明を説明するためにたった一つの「私たち性」という機能と動機付けを想定することで(この機能を説明する進化的論理は菜食行動の一言で済まされ、曖昧な点も残るが)全てうまく説明し、それをユニークな実験で実証する。
トマセログループの研究はシンプルに面白く直観的に理解できて、実験場面を想像するとニヤッとしてしまうところも個人的に好きだ。
研究のコンセプトが分かりやすくインパクトもあり、かつ他領域との連携可能性も大きく広がる魅力的な研究者だと思う。後半の批判により、トマセロの荒削りな点、要検討部分に鋭く光が当てられる構成も良い。
生態学的共生、つまり微生物から哺乳類全般にかけての相利性を扱うことやどこまで学習、社会化の過程に焦点を当てるか、ゲーム理論的な合理性、利己的行動をどう説明するか、そして社会性における「ことば」の扱いについてもこの本ではほとんど触れられていない。
このようにどこを切っても面白く、検討の価値が見出せること自体が優れた研究であることの証左でもある。 -
2624円購入2018-03-09
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「他種とは異なる、ヒトの協力的な関わりはいかにして進化したのか」「ヒトの協力性の基盤となる仕組みはどういうものなのか」といった問いに対して、諸領域の学者が連携して取り組む。
1歳過ぎくらいで既にヒトは援助行動を自然に行うことや、ヒトが指さしで教示的な情報伝達ができるのに対して類人猿は「指示・命令」でしか指さしを理解できないことなど、初めて知った。
ヒトは生来援助的な性向・社会規範への強い感受性を持ち、社会的経験を通して、援助すべき対象を選考するなど行動を調整できるようになる、というのは分かりやすい。
個体の視線を手掛かりにして注意を共有すること、双方向的に意図を読むことなど、ヒトは互いの志向状態に敏感である。加えて社会的・文化的慣習の順守や同調への圧力など、「同じゴールを共有して行動する」ことの基底に、たくさんの要素がひしめいていることが分かった。
罪悪感や恥の感覚も、そうしたシステムと絡めて考えてみると面白い。
認知機能と言語能力の関係や、まだまだ謎の多い利他性に関して、さらなる研究の進展が待たれるところだ。 -
著名な認知心理学者による講演。シンポジウムの記録らしく、著者の講演記録の後に異なる分野から4人のコメントが寄せられている。人間の幼児に対する実験や、霊長類に対する実験を対照させながら、人間が本性的に持つ、他人と協力する性向を明らかにしようとしている。論旨はかなり明快であるし、紹介される実験も興味深いものが多い。
他人と協働することへの原初的な傾向からヒトの高度な社会制度へ向かって、著者は「連携と協力」「寛容と信頼」「規範と制度」の三段階を設定している。例えば困っている他者を助ける傾向はチンパンジーにもある。他者の手に届かないところにあるものを取ってあげる、などの行動だ。しかしヒトの特徴は、情報を他者に提供しようとすることだと著者は述べる(p.20)。ヒト以外の動物は他者に情報を知らせる意図で行動しない。そういうと、例えば敵を発見した際にチンパンジーが発する警戒音声はどうかと考えられる。これは他者に対する情報提供をしているように見える。しかし、著者によれば、他者がその情報を得た(他者も敵に気付いた)状況でもこの警戒音声は発せられるから、情報提供の目的ではないのである(p.24-26)。
著者の力点は協働というところにある。つまり、利他性よりも「相利性」に力点が置かれる。制度に基づいて集団で暮らすというヒトの特性を成り立たせるのは、単純に他人を助ける利他性ではなくて、協働した場合に全員が利益を得られる相利性であると考える(p.48)。逆に利他性は相利性の中から生まれてくる。協働を行うには、他者の行為や意図に注意し同調しなければならない。他者に同調する傾向はヒトに特異的であり、それは幼児期(生後1年半)からすでに見られる(p.79f)。一方、チンパンジーには注意を共有する傾向が無い。自分があるモノに注意を向けていることを他者が理解しているという第二階の理解がない(p.83-85)。
さて、こうしたヒトと霊長類の違いをもたらしたものは何か。なぜこうした違いあるのか。著者は、霊長類には協働行為を必要とする場面が無く、ヒトにはあったと述べているだけだ。ここは機械仕掛けの神のようで、やや落胆した。
「協力的活動を共有して力を合わせる人々こそが、ヒトの文化の創始者たちなのです。こういったことがヒト進化の過程でどうやって、なぜ生まれたのかは分かっていません。しかし、採食(狩猟でも採集でも)の文脈で、ヒトは、他の霊長類とは異なって協力者にならざるを得なかったのだと考えることもできるでしょう。」(p.83f)
こうした著者の見解に向けられた4名のコメントはどれもなかなか面白い。利他性でなく相利性を基盤に置く著者に対して、やはり利他性によってこそ自分の利害と集団の利害が一致するとする意見もある(p.97-100)。また、チームワークは菌類のレベルまでみられるもので、ヒトがこの地球上でもっとも協力的なわけではないという見解もある(p.116)。
「ヒトの典型的な個体発生はこのように、他の霊長類の個体発生に含まれない文化的な側面を必然的に含んでいます。ヒトはひとりひとりが、自分の文化に属する他のメンバーがどのようにものごとをこなすのか、さらには、自分がどのようにすることがメンバーたちに期待されているのかを学習しなければなりません。種特有の認知的・社会的スキルを多様な社会的文脈のもとで発達させることはチンパンジーにも可能です。しかし、ヒトの文化的ニッチと、それに参加するスキルおよび動機づけとを抜きにしては、ヒトの子どもは、順当に機能する一個人とはなり得ないでしょう。ヒトは、文化と言う文脈の中で成長し成熟を迎えるような生物学的適応を遂げています。われわれは、協働をおこなうことでさまざまな文化的世界を築きあげ、そして、絶えずその世界に適応しようとしているのです。」(p.87f) -
2008年にスタンフォード大学がホストとして行った「人間価値についてのタナー講義」、マイケル・トマセロによる「ヒトはなぜ協力するのか」の講義とその討論、「協力を可能にする、こころという認知システムがいかなるものであり、そのシステムがいかに進化してきたか」という問い(協力はいかに進化したか、その協力を可能にする心的基盤はいかなるものか)に関するトマセロと同僚たちの研究、チンパンジーなど大型類人猿とヒトの乳幼児の比較行動実験により、「他者を援助する」、「他者に協力する」という行動の発達と進化を講義しています。比較行動実験は門外漢にとっても大変興味深い内容です。ここにその内容を要約するには紙面が足りませんので、興味を持たれた方は、是非、本書をお読みになることをお勧めします。
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1 ヒトはなぜ協力するのか
2 フォーラム -
2歳児も他者を援助し協力する。協力を可能にする「こころ」の進化をめぐる最先端の議論。「学び合い」の原点がここに! OPAC → http://p.tl/2pVO
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ヒトは生まれつき助ける。そして助けるように育てられる。
農業を始めたときから、人類の進化が始まった