- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334035112
感想・レビュー・書評
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先日、ノリピーこと酒井法子が覚醒剤を使っていたとして有罪の判決(執行猶予付き)が言い渡されました。今までの私の理解では、覚醒剤も大麻も同じな仲間と思っていたのですが、 この本の著者である武田氏によれば、大麻は麻薬ではないそうです。
そう言えば、大麻はオランダ等の一部の欧州では認められていたことを思い出し、日本も昔は大麻が自生していたということ聞いたことがあることを思い出しました。大麻が取り締まられることになった歴史的背景についても、この本では解説されていて、大変興味ある内容でした。
大麻は日本の暮らしにとも取り込まれている一例として、饂飩を食べるときにふりかける”七味唐辛子”には大麻の実が含まれていること(p18)です。でもなぜ、これは今も認められているのでしょうか。また、アメリカの禁酒法で、酒を飲むことは認められていた(p29)のは驚きでした。
以下は気になったポイントです。
・アメリカは1776年に建国されたが、これは白人側から見たもので、それ以前にはインディアンが住んでいて、政治体制もあった(p21)
・アメリカ独立宣言には、すべての人間(厳密にはすべての男(all men))という英語が使われていて、女性・インディアン・奴隷として連れてこられたアフリカ人は除外(p22)
・大麻(マリファナ)のタバコが流行った理由は、「ニコチン・タバコ」よりも習慣性がなく、値段も安かった、但し吸っているのはヒスパニック系であり、白人は数習慣がなかった(p26)
・アメリカの禁酒法は、手に入れたらいけない、という法律、1917年に成立(1920年に施行)1933年に廃止された法律、お酒を飲むこと自体は良いが、製造・販売・移動を禁止するもの、なので闇ルートから入手することになった(p29)
・禁酒法が成立するまでに、1826年に禁酒協会が設立、1851年にメイン州で禁酒法が成立(p32)
・禁酒法がアメリカに残した大きな傷とは、「公然と法律を破っても良い」という実例を作ったこと(p38)
・中国におけるアヘンの取り締まりは、イギリス商人の利益を損ねるもので、イギリス艦隊が出撃、アヘン戦争は2年にわたるものであったが、戦闘というよりも虐殺に近いもの、香港の割譲と2100万ドルの賠償金を得た(p91)
・100年ほど前まで、コカ・コーラにも少量のコカインは含まれていた(p94)
・日本では、日常生活で使う主な植物を、「三草(麻、藍、綿)」と、「四木(桑、茶、こうぞ、漆)」と呼んでいた(p99)
・七味唐辛子は、1)麻の実、2)生唐辛子、3)炒り唐辛子、4)芥子(けし)の実、5)粉山椒、6)黒胡麻、7)陳皮(ミカンの皮)、を組み合わせたもの(p100)
・1961年の国際条約にて、マリファナをアヘン、ヘロイン等の本当の麻薬と同じ取り扱いにした、アメリカなど数カ国以外では少量マリファナ所持を取り締まっていない、オランダ・デンマーク・イタリアでは公に使用が認められている(p161)
・緯度が25度くらいまでは、一人当たりの所得は低いが、それより高くなると直線的に増加する傾向あり(p168)
・もっとも強い動物が働き者で、朝から晩まで狩をしていると、餌食になる動物は減ってしまい、一番強い動物だけが増えて、あとは死んでしまう、その後にその強い動物は餓死する(p171)
・ロイヤル島には、狼:0.8トン、鹿:45トン、食物:2900トンで、生物連鎖がバランスされている、狼は自分の体重と同じだけの鹿を食べる、鹿は1週間に体重の60倍の草を食べる、その草を育てるために25平方キロの土地が必要(P177)
・人類だけにならなかったのは、第一に疫病、第二に戦争、第三に「活動しない」生活と麻薬というものが人類社会にあったから(P179)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
非常に興味深い内容でした。
あまり意見だけ書くとこいつ危ないんじゃないの?と思われてしまいそうなので・・・
前提として「麻薬は絶対に反対です」
その点は強調しておきます。
ただし、日本人の9割ぐらいは大麻とはなんたるかを
理解しないまま批判しているんだろうなと思います。
その第一の原因はマスコミの煽りすぎ。
第二の原因は自分で知ろうとしない、まさに無知の恥。
ではなかろうか。
さて、レビューですが、
本書は、大麻とはなんたるかをわかりやすく説明しているのに加え、
大麻取締法の成り立ちなどが非常に詳しく述べられています。
そして、今後こうしたほうがいいのでは?という提案で終わっています。
「偽善エコロジー」が面白かったので、手にとった本でしたが
こちらも非常に面白かった。
大麻は麻薬なんだから絶対に悪いと思っているほとんどの日本人は
知識を得てから悪いって言いましょう。 -
[ 内容 ]
大麻取締法遺反で逮捕された芸能人や文化人、スポーツ選手、大学生などを、テレビや新聞を中心としたマスメディアが袋だたきにする―同じような構図が、日々繰り返される。
しかし多くの日本人には、大麻がどういうものか、大麻取締法がどういう経緯で成立したか、そもそも痲薬とは何かという知識が決定的に欠けている。
にもかかわらず、なぜ大麻というだけで思考停止状態に陥り、批判の大合唱になるのだろうか?
日本人が日本人であるために、そして自らの頭で、科学的に考える習慣をつけるために、さまざまな側面から大麻問題を考える。
[ 目次 ]
第1章 大麻は痲薬か?
第2章 大麻とは何か?
第3章 大麻と日本
第4章 大麻とカンナビノールが精神に及ぼす影響
第5章 大麻と法律、大麻と社会
第6章 大麻をどうしたらよいか?
資料編
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
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☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
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共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ] -
新書は、読者に対して、専門的知見を読み解く鳥瞰図を与えてくれるものです。優れた本を一旦手に取れば、僅か数時間で、その分野のエッセンスを理解することも出来ます。
新書を手に取る読者の多くは、その道の知見を殆ど持たない素人です。悪意のある作者であれば、必ずしも通説とは言えない主張をわざと展開し、読者を完全にミスリードする危険性すら併せ持ちます。
武田邦彦氏と言えば、中部大学教授で、資源問題等に関する解説でテレビ・マスコミで有名な方です。「環境問題はなぜウソがまかり通るのか」シリーズや、「『地球温暖化』論で日本人が殺される!」、「暴走する『偽』環境ビジネス」等の著書で有名ですが、「大麻ヒステリー」という著作を手にしたので、メモしたいと思います。
特に酷いと感じたのは第4章「大麻とカンナビノールが精神に及ぼす影響」という章です。武田邦彦氏は「大麻は健康上は問題はない」とか「大麻はアルコールやニコチン・タバコよる安全」との主張をしています。しかしながら、武田邦彦氏が依拠する「科学的根拠」とするものは、1893~1972 年に作成されたものと極めて古く、例えば1997年に発表されたWHO世界保健機構のレポート等にまったく言及していません。また、大麻とアルコール・ニコチン・タバコとの危険性の比較でも、1963年と極めて古いレポートを参照しています。現在と過去では、流通する大麻に含まれるカンナビノールの成分に大きな隔たりがありますから、自己の主張に都合のいい古いレポートのみを持ち出すのは明らかに「ペテン」です。また、武田氏が参照している「1994年にアメリカ国立薬物乱用研究所(NIDA)の比較表」というのは、NIDAが組織として発表したものではありません。この比較表というのは、NIDAに所属する一研究員と外部研究者が恣意的にランク付けした表がニューヨークタイムズNew York Timesに掲載されただけのもので、査読、つまり専門家による科学的検証を経たものではありません。その証拠に武田氏は、この比較表の出典を一切記載しないという、科学者が執筆する文章として、あるまじき態度を取っています。
ということで、「大麻ヒステリー」を読む価値なしと認定したいと思います。 -
疑問に思っていることがほとんど解消された。
・大麻とひとことでくくるなかれ
・麻のスーツは大麻のスーツなんだぜ。
・酒、タバコより身体、精神に悪影響を及ぼさない(抜粋:アメリカ国立薬物乱用研究所調べ)
種類:依存性(禁断性)耐性(切望性)陶酔性
ニコチン:6(4)5(3)2
ヘロイン:5(5)6(5)5
コカイン:4(3)3(6)4
アルコール:3(6)4(4)6
カフェイン:2(2)2(1)1
大麻:1(1)1(2)3
・アメリカより駄目といわれた時点で思考停止
とはいえ悪法も法、私は酒だけで今のところ十分です。 -
環境問題もそうだけど「思考停止」こそが問題だという視点がよい。
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(200907)
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何も考えず「当然」だと思っていたことが事実だとは限らない。そういうことを考えさせられる武田先生の本。「大麻は麻薬」と思っていたが、それは間違いで「カンナビノールが麻薬」(「麻」の字は正しくはこの字じゃないんだけど…)だそうで。「大麻はいけないもの」ではなく、昔から日本人の生活に密接にかかわるものだったとは。「学問というのは社会の噂や迷信ではなく、一つひとつの事実を確認し、研究者自らがそれを判断することだ」ということばに納得
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大麻の無害性など科学的な検証を用いて多く人の誤解を解く類の本だろうなと思ったら意外と多角的に大麻を紹介した内容。
日本古来からある大麻文化、アメリカの悪名高い禁酒法から紐解く大麻課税法の真実が紹介され、最後は大麻取締法を引き合いに思考停止状態になった日本の現状から読者を啓発するような章で締められる。
著者はそもそも古くから生活に馴染みの深い植物であるのにその名が危険な印象で使われるようになってしまった「大麻」と、大麻に含まれ薬理効果をもたらす化合物「カンナビノール」を分けて捉え、日本においては第一段階として「カンナビノール取締法」と改めてから、さらに議論を経て現在不当に重い罰則を緩めていく方向でいくのが望ましいとしている。
日本は日本で考えるべきという主張は同感。それすらタブーになっているのは核保有の議論と似ていて日本はなぜこうも窮屈なのかと憂いでしまった。
ですます調で書かれている上に内容もあえて易しく書いているようで、青少年に向けた大麻教科書といった感じ。
09.7.13 -
2009年87冊目