目の見えない人は世界をどう見ているのか (光文社新書)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334038540

感想・レビュー・書評

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  • 新たな視点たくさんでわくわく

  • 「目の見えない白鳥さんと…」の白鳥健二さんも登場します。あっちは感性鋭いノンフィクション作家、こっちは美学(芸術や感性的な認識について哲学的に探究する学問)の専門家による本。きっと違った視点で語られているのだろうなと手に取りました。

    不勉強で美学という学問分野そのものを全く知らなかったけれど、なかなか興味深い学問のようです。ただし本書は専門書ではないので表面的な面しか触れていません。それでも、点字を読む能力と文章を読む能力の比較とか、点字を読める人の触覚が特に優れている訳ではない事とか、なかなか面白い内容でした。

    個人的には昨今のSDGsやバリアフリーでの支援疲れを感じていたので、最終章の「善意のバリア」や「つかえ」の話が腑に落ちました。

  • 私は目が見える人のはずだけど(まぁ、かなりの近視ですが)、今まで見えてなかったものが、見えてきそうな気がした。

    「牛乳は噛んで飲め(それくらい感覚を研ぎ澄ませよ、ということ)」と教えてくれた大学の恩師を思い出したな。

    ヨシタケシンスケの『みえるとかみえないとか』も、優しさがあっていろんなことに気づかせてくれる絵本だったけど、この本の優しさも好きだった。

    この著者の経歴も、なんか面白そうで気になる。

  • 盲目の人と接することがあり、何か得られないかなと読んでみたが、易し過ぎて特に新しい発見はなかったかな。これが初見ならばいい入門書なるのかもしれない。
    読むのならば、目の見えない白鳥さんと~でいいと思う。追加でコテンラジオの障害の歴史やヘラルボニーの活動を知ると、より理解が深まると思う。

  • 間違いなく良書。視覚に障がいのある方のイメージがひっくり返ると思いますし、いかに薄っぺらいイメージで理解した気になっていたかと、読了後猛省しました。

  • 社会モデル(「障害が問題なのではなく、障害があることで抱える不自由を解決できない社会が問題なのだ」という考え方)がとてもよく理解できる名著だった

    僕たちの社会は多様性とか言いながら、マジョリティの視点を捨て切れていないんだ

  • 本川達雄「ゾウの時間ネズミの時間」
    時間感覚は生き物ののサイズによって違う。ゾウにとっての一秒はあ、にも満たないかもしれないが、アリにとっての一秒はあーっというふうに長い。時計のような絶対的な時間は本当はないものであって、個々の生きもののサイズに対応した主観的な時間があるのみである。
    足りない部分を想像力で補って、さまざまな生き物の時間軸を頭に描きながら、他の生き物と付き合っていくのが、地球を支配し始めたヒトの責任ではないか。この想像力を啓発するのが動物学者の大切な仕事だろうと私は思っている。(138項)
    フランス語ジュヌセクワ(je ne sais quoi)いわく言い難いもの。例えばモテる人の魅力のように、感じ取る事はできるけど、言葉にしにくいもの。分からなぃのではなく、分かってはいるんだけど、言葉にできないもの。
    美学は、要はこのジュヌセクワに言葉でもって立ち向かっていく学問。痒いところに手を届かせようとする学問。
    同じ空間でも視点によって見え方が全く異なります。同じ部屋でも上座からと下座から。ノミの視点で床から見たり、ハエの視点で天井から見下ろしたら、全く違う視点が広がっているはず。私たちが体を持っている限り、一度に複数の視点を持つことはできません。
    耳で見て目で生生端で物空手口で書かねば上をわからず。出口鬼三郎
    ダイアログインザダーク
    自立とは依存先を増やすことである。自立と言うと、依存を少なくしていき0にすることだと思いがちです。しかし、周りの人から切り離されることではなく、様々な依存可能性をうまく使いこなすことこそが障害者の自立であると。健常者=自立している人と思いがちですが、その実態は自立しているふりをしているだけなのです。そう考えると、周囲のスポーツサポートをうまく生かしながら生きている障害者とは、むしろ依存のスペシャリストであると言えます。
    ソーシャル・ビュー
    作品を見て、新しい発見があったりだとか、気づきがあったりだとか、感動した時が行って良かったと思う時だ。美術館に行って良いと思う時。
    鑑賞するとは、自分で作品を作りなおすことなのです。見えない人がナビゲーターと呼ばれます。見える人から言葉を引き出し、その場を作り出しているのは見えない人の存在です。

  • 「障害を面白がる」という様々に誤解を生みそうなスタンスの重要性を、具体的な事例を多数挙げつつ説いている。「見る」という認識作用は、必ずしも「眼」という器官で「見る」ことに限られない、ということを実例をもって示していて、目から鱗である。

  • 目の見えない人に、何を聞いてみたいだろうか。
    そこは暗闇の世界なのか。
    聾唖の人をどのように区別し、愛するのか。
    寡黙な優しさを感じられるのか。
    盲目の世界において、美しさとは。
    価値観はどのように変わるのか。

    残念ながら、本著はそういう観点では、インタビューをしない。また、登場する「目の見えない人たち」は、生まれつきではないから、イメージの記憶を持つ。映像記憶の無い人に関心があったので、先の質問リストも合わせて、少し残念だった。

    ジュヌセクワ。
    フランス語で「いわく言いがたいもの」、言語化の対義語。暗黙知みたいな事だが、それだと、視覚障害者には伝わらない。視界から消える事で不自由に感じるもの(大多数)、逆に消える事で却って集中力を増す、または、囚われなくなるもの。

    脳内で映像化し、その映像化のために言語があるとしたら、映像を持たぬ視覚障害者にとって言語とはどのような役割なのだろう。色々、消化不良な感じが拭えない。

  • 図書館で借りた。
    タイトル通り、目の見えない人はどのように世界を見ているのか、世界を感じているのかを記された本。著者は現代アートの専門家で、目の見えない人が4人ほど本の中で登場し、インタビューなどを交えつつ、どのような見え方をするのか、またどんな意識をしているのか、はたまた無意識のうちにどんな考え方やどんな捉え方をするようになるのかを知ることができる本だ。
    死角がない、また違った視野が広がる、体の動かし方が変わる…といった話はこの本を読むことで知れる感覚だ。面白い。

    こういうのは知る・理解するという一歩が大事かなと思った。

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著者プロフィール

東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長、リベラルアーツ研究教育院教授。マサチューセッツ工科大学(MIT)客員研究員。専門は美学、現代アート。東京大学大学院人文社会系研究科美学芸術学専門分野博士課程修了(文学博士)。主な著作に『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』『目の見えない人は世界をどう見ているのか』『どもる体』『記憶する体』『手の倫理』など多数。

「2022年 『ぼけと利他』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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