英雄の書 (カッパ・ノベルス)

著者 :
  • 光文社
3.22
  • (24)
  • (46)
  • (89)
  • (28)
  • (11)
本棚登録 : 630
感想 : 91
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (570ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334077068

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 「気をつけろ。〈英雄〉は"輪"に居る。諍いの時代が到来するぞ」

    宮部みゆきのファンタジーである。基本的に、彼女がこの20年間嵌っているロールプレイングゲームの世界の小説版といっていいのかもしれない。

    「物語を紡ぐ」とは、どういうことなのか。

    彼女は、自分の小説世界に分け入って帰れなくなったことがあったのではないか。

    物語が現実か。現実が物語か。

    現実には、現実を凌駕する様な陰惨で非現実的な事件も起きる。毎日新聞連載が07年からだそうだが、小泉というエセ〈英雄〉も跋扈していた。

    「物語とは何だ、ユーリ」と、アッシュは逆に尋ねてきた。
    「"紡ぐ者"が創るお話。嘘でしょう」
    「"紡ぐ者"ばかりが作り手ではない。人間はみな、生きることで物語を綴る」
    ラトル先生も同じことを言っていた。人間は他に生きる術がない、と。
    「だから物語は、人の生きる歩みの後ろからついてくるべきものなのだ。人が通った後に道ができるように」
    だが、しかし。
    「時に人間は、"輪"を循環する物語の中から、己の目に眩しく映るものを選びとり、その物語を先にたてて、それをなぞって生きようとする愚に陥る。〈あるべき物語〉を真似ようとするのだよ」
    その〈あるべき物語〉は、様ざまな名前で呼ばれる。あるいは正義。あるいは勝利。あるいは征服。あるいは成功。
    (略)
    "紡ぐ者"どもは、己の罪を自覚しようがしまいが、一方で希望を、善を、美を温もりを、命を寿ぎ、人に安らぎを与える物語を紡ぐことで、かろうじて業と共に生きることを許されている。この地で"咎の大輪"を回す無名僧どもと、"輪"に生きる"紡ぐ者"どもは、〈英雄〉と〈黄衣の王〉がそうである様に、ひとつの盾の裏表なのだ。(537p)

    迷宮から戻って来た宮部みゆきは、「かろうじて業とともに生きる」ために、こういう"物語"を紡がざるを得ない。

    宮部みゆきの、50歳を前にした、一つの作家宣言だったのだろう。しかしこれは一冊で終わらすべきだ。「ドリームバスターズ」でも同じことをやろうとしている気がしてならない。

  • 主人公の言動に子供とはいえイライラさせられる。大変な場面に直面してるのはわかるのだけれど、あまり共感できなかった。結末のエピソードは、宮部さんらしさで引き込まれるけれど、意外性は低い。

  • 悲嘆の門をうっかり先に購入し、o女史がそれならとプレゼントしてくれた本。
    カッパノベルスの本はほとんど読んだ覚えがなく、1ページが上下段になっているのに戸惑い、文庫版だと上下巻の2冊構成だったので、なかなかのボリュームで読みごたえがありました。
    実を言うと、大人になってからファンタジーの類いはちょっと苦手になっていたので、本がしゃべりだしたときには、若干苦笑いしてしまったのだけれど、さすがの宮部さん。ちゃんと大人が楽しめる内容になってました。
    少年が同級生を殺めてしまうというかなり重い事件を発端にしていたので、何がそうさせたのか?が興味を引くところとなり、先を読みたいと思わせる感じでした。
    あとはユーリがどう考えても小学生とは思えないけれど、まあこれも守護の法衣とオルキャストになったからということで無理やり納得するしかなさそうかなというところでしょうか。
    それでも旅のおかげで年齢以上に成長してしまっただろうとは思います。
    まあとにかく、カッパノベルス版。少し重いけど、一気に読めて良かったかもです。

  • うーん。RPGのノベライズみたい。

  • 途中まではすごく引き込まれたのに、
    そっからが長い。
    メインの兄を捜しに行ってからが、なんだか妙にあっさり。
    途中までがすごくよかっただけに残念

  • うーーん!
    ハズレでした!!
    とにかくペース配分が悪いというか疾走感がありません。何回も同じ話をされているように感じました。お!っと思った途端に、巻き戻されちゃうような…
    読後も全くスッキリしないです。

  • 2021/09/03
    ・いやよくわかんねえ

  • 冗長でした。

  • 「悲嘆の門」を読むのに、英雄の書が世界観として前作に当たるということで図書館からレンタル。
    ファンタジーということだったのでハマれるか不安でしたがぐいぐい読める筆致はさすが宮部みゆき!と言った感じでした。
    葛藤する主人公、ユーリ(友理子)。
    でも落ち込み過ぎず、しっかりと現実と向き合おうとするユーリが好感でした。

    世界観の説明が、小学生のユーリじゃなくても難しく、わかったようなわからんような、、、あれ?そうじゃないの!?(ユーリと同じ勘違いをする)という理解力の無さを発揮するものの、ある意味それがユーリとともに進んでいるようで読みやすかったのかもしれません。

    ラストは賛否があるようですが、私は好きでした。
    というか、なんとなく気がついていた感じも。
    仕組まれた事にはまでは気がつきませんでしたがなるほどそういうことか!という納得があり、自分的には伏線も回収されて気持ちのいい終わり方でした。

    アジュやアッシュやソラも素敵なキャラクターで、違うサークルで今も生きているのかなと思います。
    悲嘆の門では彼らは出てこないようですが、楽しみです。

  • 58/368

全91件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1960年東京都生まれ。87年『我らが隣人の犯罪』で、「オール讀物推理小説新人賞」を受賞し、デビュー。92年『龍は眠る』で「日本推理作家協会賞」、『本所深川ふしぎ草紙』で「吉川英治文学新人賞」を受賞。93年『火車』で「山本周五郎賞」、99年『理由』で「直木賞」を受賞する。その他著書に、『おそろし』『あんじゅう』『泣き童子』『三鬼』『あやかし草紙』『黒武御神火御殿』「三島屋」シリーズ等がある。

宮部みゆきの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×