ソビエト帝国の崩壊: 瀕死のクマが世界であがく (光文社文庫 こ 11-1)
- 光文社 (1988年3月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334707132
作品紹介・あらすじ
レーニン、スターリンの天才がはぐくみ育てたソビエトは、かつて人類の夢であった。しかし、現在はどうか。平等理念のかげにいる、恐るべき特権階級。形だけのノルマ達成に責任のおしつけ合いをする農民、労働者。…ペレストロイカで世界中の注目を浴びるソビエトの実態とは?鬼才、小室直樹のデビュー問題作。
感想・レビュー・書評
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橋爪大三郎が推薦
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本書は法学者・社会学者である小室直樹が当時のソビエト連邦について分析し、その崩壊を予言した本である。本書は1980年に光文社カッパ・ビジネスのシリーズとして出版された書籍の文庫版で、1988年初版発行。1980年とはソ連のアフガン侵攻開始の翌年である。
本書では、第1章でソビエト連邦の社会・経済・イデオロギーなどについて分析し、この国がすでに内部崩壊しつつあることを主張する。第2章ではソ連の軍隊とその組織の論理について述べ、「ソビエト軍はみせかけほど怖くない」としている。転じて第3章では、日本が国際政治における戦略がない (特に軍事面) ことについて手厳しく批判する。
全体としてトピックセンテンスのはっきりした文章で、用語の定義も明確で非常に読みやすい。また、本書は33年前に出版された本であるが、第3章に見られる指摘、例えば有事において主権国家としての意思決定能力を保持する仕組みがないことや、戦時法規について知らないと正しく戦闘を放棄することができないこと、日米安保条約におけるアメリカ、ソ連とのパワーバランスなど、現在でも通用する議論なのではないだろうか。
もちろん本書は、社会学におけるひとつの分析に過ぎないのであるが、実際にソ連の崩壊を予言したという意味で非常に的確だったのではないかと思う。初心者にも非常に読みやすかったので★5つとしたい。
最後に筆者は、戦争は国際紛争解決のもっとも合理的な手段である (だから、戦争の放棄というのは発想上の誤りである)、と結んでいる。この文章が言うところをまだ私は理解できていないが、日中関係が軍事的に緊張している昨今の状況を踏まえ、勉強を進めて考えていきたい。 -
なかなか難しい。
ソビエトについての基本的知識をもう少しつけてから読んだら良かったかな -
「ソビエト連邦崩壊を前にそれを予言した」と評判の、評論家小室直樹のデビュー作である。
ソビエト崩壊が必然であることを、経済学、宗教学、社会学の見地から丁寧に考察しており、知的好奇心をくすぐられずにはいられない。