十三角関係―名探偵篇 (光文社文庫 や 23-2)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (647ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334731229

感想・レビュー・書評

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  • 荊木歓喜もの全作品(合作をのぞく)が、これ一冊で読めるというお得な文庫版全集。ミステリとしては物理トリックによる不可能犯罪ものがメイン。原色で塗りたくった悪夢のような作品世界にはこうしたトリックが嵌まる気がする。ベストは「帰去来殺人事件」。メイントリックのとんでもなさには唖然呆然。よくもまあこんなことを思い付くものだ。

  • ミステリー傑作選2<名探偵編>はキャラクターのおもしろい名探偵が登場、魅せられた痛快読み物であった。

    八つの短編「チンプン館の殺人」「抱擁殺人」「西条家の通り魔」「女狩」「お女郎村」「怪盗七面相」「落日殺人事件」「帰去来殺人事件」と一つの中篇「十三角関係」。

    『雀どころかクマタカの巣みたいなモジャモジャ頭。大兵肥満だが、年はちょっと見当のつかぬ男。ちんばで、おまけに右の片頬に三日月のような傷跡がある。』新宿のチンプン館というボロアパートに住む酔いどれ医者「荊木歓喜」ものシリーズ。

    はっきりしたキャラの面白さのきわめつけが「ガックリ、ガックリ」。その表現がユニーク。何のことかと思ったら?片足が不自由な主人公の歩く姿の特徴からきてるのだ。

    お医者だけれど売春婦の闇堕胎が専門。昭和二十年代が舞台なのでさもありなん、売春禁止法案がちらほら出ているころ。身辺に起きる事件に巻き込まれ異色の探偵となって解決に手貸す。

    それが非常に痛快。そんなことあり?と言うほどのミステリーマジック。なるほど単なる娯楽読み物だけではない、人の心の奥底に訴えるものがある。

    何かあるだろうとはテレビ番組から想像はしていたが、山田風太郎という作家の幅の広さの魅力だろう。非日常の世界に日常性を描く才が長けていて、わかるのだ。おもしろくて人生のためになる気楽な読み物。病み付きになる事請け合い。

  • 「帰去来殺人事件」が特に良かった

  • 「異端の探偵」
    山田風太郎2作目。名探偵編という事で、茨木歓喜という一貫した探偵役が登場する巻。本格ミステリとは言えないか。歓喜先生は、犯人の動機に同情し、時に自身も犯罪に加担することさえしかねないような破天荒な人物だが、どこか憎めないばかりか、時に鋭い人間観察眼をのぞかせる人物である。その当時の時代背景や、作者自身の人間に対する考察(ネガティブなものと思うが)が作品からうかがえると思われる。

  • 戦後の日本の有り様も読む事ができる、荊木歓喜医師が活躍する探偵物。短編〜長編まで収まった一冊。
    綾辻氏と有栖川氏の対談で表題作を知りまして、読みました。

  • 長くなりそうなので、レビューは『帰去来殺人事件』『十三角関係』のみです。
    「帰去来殺人事件」
    山田風太郎といえば、僕のなかで変格的なミステリを書く作家というイメージがあったのですが、今作は真っ直ぐド直球の本格ミステリの傑作短編でした。(結末に限っては普通の探偵小説とは一線を異にしていますが…。)まず足跡の問題がすごく良くできています。答えはすぐそこにありそうなのに、手が届かないもどかしさ。そして特筆すべきは、あまりに悪魔的なアリバイトリックです。これは○○トリックの派生系でしょうが、この一作をもってして完璧に作り上げられています。どこからこのような発想が思い浮かぶのか、不思議で仕方がありません。そしてラストは名探偵荊木歓喜らしい締めくくりでとても満足しました。
    「十三角関係」
    帰去来にくらべて落ちる印象はあるものの、長編で荊木ものが読めるのは嬉しい限りです。本作で面白いのは、短期間で被害者の部屋に幾人もの怪しい人物が出入りし、どの段階で殺されたのかがわからない、さらに死体は四肢を切断されていた、という舞台設定でしょう。初期に殺されていれば、そのあとの人たちは死体を見ているわけですが、登場人物たちが人を喰ったような奴ばかりのため安易に容疑者を絞れない。そして訪れる解決編で指摘される犯人は意外すぎるもの。しかしそれを成立させてしまう山田風太郎の並々ならぬ手腕が凄すぎます。
    日本屈指の名探偵、荊木歓喜の登場作すべて詰まった本書は、ミステリファン必読でしょう。

  • 帰去来殺人事件だけ再読した。

  • 【チンプン館の殺人】【抱擁殺人】【西条家の通り魔】【女狩】【お女郎村】【怪盗七面相】【落日殺人事件】【帰去来殺人事件】【十三角関係】収録。

    型破りでアウトローな名探偵・茨木歓喜が活躍する傑作選です。
    長編の【十三角関係】は、複雑な人間関係の中に組み込まれた構図と、真犯人の動機の凄まじさが印象に残る傑作です。
    短編の中では、【帰去来殺人事件】が私的ベストです。探偵役である歓喜自身が深く関わったプロットが秀逸でした。
    その他はやや小粒な感じでした。

  • 2001.3.20.初、並、帯なし
    2013.2.15.白子BF

  • 帰去来殺人事件が抜きん出て傑作である。探偵自身も罠にはめる構造と胸に染みる人間心理。表題作は歓喜先生の魅力があまり発揮されていないように思われ残念である。説教じみた語りが多くこれでは鼻につく。対して被害者の魅力は作中人物のみならず読者をも魅了してやまない。それだけに一見理不尽な犯人の動機に同情と理解が生まれる。

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著者プロフィール

1922年兵庫県生まれ。47年「達磨峠の事件」で作家デビュー。49年「眼中の悪魔」「虚像淫楽」で探偵作家クラブ賞、97年に第45回菊池寛賞、2001年に第四回日本ミステリー文学大賞を受賞。2001年没。

「2011年 『誰にも出来る殺人/棺の中の悦楽 山田風太郎ベストコレクション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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