奇想と微笑: 太宰治傑作選 (光文社文庫 も 18-1)

著者 :
制作 : 森見 登美彦 
  • 光文社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334746926

感想・レビュー・書評

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  • 森見登美彦の源流をたどれば太宰治にたどりつくのかもしれない。そう思わされる太宰治の短編集。

  • 太宰のオマージュ作品。作者も編集後記で言及しているように、この小説は太宰の作品の中から「ヘンテコであること」「愉快であること」に主眼を置いて選別されたもの。太宰というと暗いイメージが強いが、この小説では所謂太宰らしい作品は掲載されていない。リズミカルな文章に堅実な構成。特に、これまで太宰を苦手としていた読者に固定観念は捨てて素直に楽しんで欲しい。

  • 太宰治は難しそうで苦手・・・。
    でも森見さんは大好き!な私。

    この本のおかげで太宰治の世界にちょっとだけ入ることができました。

  • 森見さんが選んだ太宰治の傑作の数々です。
    春休みの家族旅行中にお供にしていたのですが、面白くて、わーっと読めてしまいました。

    あっ こんな太宰もいたんだ!って発見があります。『斜陽』とか『人間失格』とかの暗い話よりも、私はこの傑作選に入ってる話のほうが親しみやすいので好みです。「初めての太宰」に良いかもしれないです(´^ω^`)

    『失敗園』『カチカチ山』『貨幣』『ロマネスク』『満願』『畜犬談』『親友交歓』『黄村先生言行録』などなど、大好きな話がたくさんできました。

    なにより、森見さんの編集後記が良いです。このひと太宰大好きなんだろうなあ、と。

  • 惚れたが悪いか

    満願
    「ああ、うれしそうね。」と小声でそっと囁いた。
    ふと顔をあげると、すぐ眼のまえの小道を、簡単服を着た清潔な姿が、さっさっと飛ぶようにして歩いていった。白いパラソルをくるくるっとまわした。
    「けさ、おゆるしが出たのよ。」奥さんは、また、囁く。

    『井伏鱒二選集』後記
    これらの作品はすべて、私自身にとっても思い出の深い作品ばかりであり、いまその目次を一つ一つ書き写していたら、世にめずらしい宝石を一つ一つ置き並べるような気持がした。


    猿面冠者
    ほんとうは怒っていないの。だってあなたはわるくないし、いいえ、理窟はないんだ。ふっと好きなの。あああ。あなた、仕合せは外から?さようなら、坊ちゃん。もっと悪人におなり。

    女の決闘
    「尊敬しているからこそ甘えて失礼するのだ。」

    私は若くて美しい。いや美しくはないけれど、でも、ひとりで生き抜こうとしている若い女性は、あんな下らない芸術家に恋々とぶら下り、私に半狂乱の決闘状など突きつける女よりは、きっと美しいに相違ない。

    薄情なのは、世間の涙もろい人たちの間にかえって多いのであります。

    「女は、恋をすれば、それっきりです。ただ、見ているより他はありません。」

    破産
    「浮気は男の働きと言いますものねえ。」

  • 畜犬談と走れメロスがお気に入り。失敗園と貨幣も良い。全篇通して「面白い」と思ってしまった私は、編者 森見登美彦の思うつぼにハマってしまったのか。

  • 太宰治氏の作品から著者が厳選したものを著者のタッチで書き変えた傑作集。太宰氏の作品は内省的なイメージがあって読んだことがなく、本書で選出されている作品も、原作を知らないものばかりだった。そのイメージが覆るくらい、本書の作品は読みやすかった。独特の視点で偏屈的な考え方を持つ登場人物が多いのだが、決して暗い気持ちにはならない。これも森見マジックにかかったのだろう。「カチカチ山」「畜犬談」「貧の意地」など、決して明るい話ではなく、後味も良くない。でも、どこか気になる。個人的には、「服装に就いて」と「女の決闘」が好き。

  • 太宰のファンとして、この本ほどずるいものはない。こんなに面白いものだけの短篇集を一気に読むなんて、贅沢にも程がある。

    でも、私は森見ファンとしてこの本を読んだのです。決して再読なんかじゃない。

    結論から言うと、大好きな森見さんが、もっと大好きな太宰のことを、大好きということが、とてもとても嬉しくて楽しい本。太宰の良さ、太宰好きの森見さんの良さが相乗効果で半端無い!

    笑える笑える。おちゃめな太宰。自虐的な太宰。毒舌な太宰。ばかな太宰。もう全て切れ味抜群。エピソードではなく文章で、ここまで笑えることは本当に幸せだと思う。ありがとうございます。

    そして、改めて読み返してみて発見が多々ありました。ていうか自分忘れすぎ。
    まず一つ。森見さんの言うとおり、「走れメロス」は決して感動の友情ストーリーではない。そんな優等生ぶった読み方ではなくて、もっとリズミカルに、もっとひねくれて、ツッコミを入れながら楽しむものだなぁと。
    そして、「猿面冠者」のすごさ。何も感じなかった自分はどれだけ馬鹿なんだと思うばかり。太宰すごい。
    色々読み返してみようと思いました。

    面白すぎて感想がうまくまとまりませんが、編集後記にあるように「太宰治なんて、『走れメロス』と『生まれてきてすいません』の人でしょ?」っていう人に、ぜひ読んでほしい。
    太宰好きな人が太宰を好きなのは、欝だからじゃなくて、笑えるからなんだよ!巧いからなんだよ!あと、優しくて純粋で頑固だからなんだよ、私は。いや、欝好きの人もいるかもしれませんけれども。


    個人的に入れて欲しかった短編・・・
    「チャンス」「乞食学生」「美少女」「グッド・バイ」「おしゃれ童子」

  • この作品集の中で私の好きなものは『カチカチ山』です。
    カチカチ山のお話における兎は少女、そしてあの惨めな敗北を喫する狸は、その兎の少女に恋をしている醜男という設定で、独自の解釈を展開していくところが愉快でなりません。
    あのちょっとやり過ぎじゃない?って感じの仇討劇も、少女である兎だからこその純粋な残酷さなのです。
    それに対比して、救いようのない狸の愚鈍さが見事に描かれていて、湖に沈んでいく寸前にも「惚れたが悪いか…。」などと能天気なことを呟くところが痛い、痛すぎる。やはり、とことんシニカルです。

    そのほか『令嬢アユ』『ロマネスク』『女の決闘』なども面白いと思いました。
    そして最後に『走れメロス』を入れているところは、森見さんの愛(DAZAIへの)なのかしら?
    ちゃんと読んだのは中学の教科書以来でしたが、私には相変わらずスポ根もののようでしたw

  • もともとは森見登美彦氏が好きで読み始めた。

    読み終わるころには、太宰治も好きになっていた。
    太宰治の鬱々としたのも、
    ヘンテコ愉快なのも、どちらも同じくらい好き。

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著者プロフィール

1909年〈明治42年〉6月19日-1948年〈昭和23年〉6月13日)は、日本の小説家。本名は津島 修治。1930年東京大学仏文科に入学、中退。
自殺未遂や薬物中毒を繰り返しながらも、戦前から戦後にかけて作品を次々に発表した。主な作品に「走れメロス」「お伽草子」「人間失格」がある。没落した華族の女性を主人公にした「斜陽」はベストセラーとなる。典型的な自己破滅型の私小説作家であった。1948年6月13日に愛人であった山崎富栄と玉川上水で入水自殺。

「2022年 『太宰治大活字本シリーズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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