ぼくは落ち着きがない (光文社文庫 な 34-1)

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  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334749538

感想・レビュー・書評

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  • これから世界に向かってノックしようとしてる子たちのテリトリーに、ずかずかと踏み込む先生たち。
    ノックしてないし。無神経である。
    そこで彼らがどう対抗するかと思えば、「ありったけのゴミを持ち寄る」
    腹いせと実用性を兼ねた素晴らしいアイデア。

    一人じゃ大した量にならなくても、みんなで集めればゴミの山に…。

  • ちょっとここで純文学に行くか?でもちょっと重いなと思って手にとったのがこれ。図書館大好きな高校生の青春(?)小説、若干純文学。

    図書部員の中山望美は、毎日図書館の裏の図書部の部室に入り浸っていた。そこでは高校のマイナー部活の例に漏れず、部室でとりとめのない話あり、夢を語ることあり、自作の小説ありの日常が繰り広げられている。

    ということで、日常系小説とでもいうか、小さな事件が起こる普通の日々を、望美の感情とともにダラダラと綴られている。「〇〇じゃないか、とは言わなかった」なんていう、普通の小説に慣れている読者にとっては、何だよう、なにもないなら書かなくて良いようというような表現が最初から最後まで続くため、苦痛かもしれない。

    ただ、ある程度生々しい高校生の日常を楽しみながら読める人にとっては、非常にフレッシュな感覚で読めるのではないかと思う。個人的には面白かったしね。

    親友が宣言して登校拒否になったり、司書が小説家デビューしたりと、日常的にはやや大きめの事件も起こるが、それらも淡々と流れていく。ページを繰った途端に「〇〇が没になったのはもう2週間前の話だ」などと時間がすっ飛んだりする。

    今どきの小説としては、こういう特になんでもないことを、純文学のようにこねくり回した表現もなくダラダラと綴るというのは普通なのかもしれないが、頭が古いので新鮮に読めた。

  • 図書室にある図書部で起こる事件のみを描いています。
    主人公の望美は女子高校生らしさが全くないのですが、部員の観察者として優れていて、日常のちょっとしたやり取りが楽しい。
    何故ここでという所で終わっているので、ラストでびっくりする。

  • どこかで誰かがこの本を読んで「なるほど、本は役に立つなあ」と思っている瞬間が存在するなら、それだけで嬉しいな

  •  主人公の望美ちゃんがとても好きだ。ひょうひょうとしていて、自分のいる状況を受け止めるのが上手だなぁ、と。 
     それにしてもこの作品は帯に学園小説と書いてある割には、他の学園ものほど劇的な展開や刺激的な出来事も起こらない。が、それが高校生のリアルだと思う。そうドラマチックな出来事なんてなくて、日々は胸がざわつくような小さな出来事の積み重ねだよなぁ…。

  • 高校の「図書部」を舞台にした物語。何か事件が起こるわけでもなく、個性豊かな部員たちの日常が淡々と描かれる。こんなふうに書くと、よくある(本当によくある)ラノベ的学園世界を想起してしまうけど、この小説が書こうとしている世界は、たぶんそれとは違う。
    図書部の面々は、ゆるゆるとした毎日を過ごしている。部室でお茶を飲みつつダベり、漫画の貸し借りをして、「本来の」活動である図書室の貸出業務もおこなう。かつて文科系高校生だったすべての男女が「いいなぁ」と嘆息する日常がいきいきと描かれ、心地良いノスタルジーへと誘う。そして同時に、彼らがそのノスタルジーの奥底に沈めたものを呼び覚まし、ときおりヒヤッとさせたりもする。

    教室の皆に自分が仲間はずれにされているのではない、自分が皆を置き去りにして仲間はずれにしているんだー(中略)そういう逆転の見立てを、部員のうちの気弱そうな何人かは抱いているように見える。(p.97)

    「休憩休憩!」部室ではない、図書室内のテーブルで作業をしていた部員全員がほっとした表情。影の薄い浦田は黙って部室に向かった。(p.121)

    教室に居場所のなかった自分。
    そして、安息の地であるはずの文科系コミュニティーの中でさえ、上手く馴染めていなかった自分。
    「ラノベ的な」日常ではスルーされがちな、文科系高校生の「苦さ」を、この小説は見逃してはくれない。もちろんそれは、作者が冷淡だからではない。自分たちの「苦さ」を痛いほどに噛み締めて、その上で笑ったり泣いたり悩んだり怒ったりする彼らに向き合おうとしているからだ。そのためには、彼らの「苦さ」にも向き合わざるを得ない。
    現実では劣等感に苛まれ、フィクションでもまっとうに描かれない文科系高校生を文字通り「直視」しようとする誠実なまなざし。この小説の真価はそこにある。
    と、かつて文科系高校生だった自分は思う。

  • 本作の舞台である図書部部室。
    図書室を削って作られた細長いその部屋では
    繰り広げられる大騒動も事件も何もない。
    何もない風に書かれているけれど、図書部員たちは未来に向かって進んでいる。
    描かれていないところで影響を受ける些細な何かがそれぞれにあったことが伺える。
    その何かがわからないから何も起こっていない風に感じるのだと思う。
    何もないようでも部員たちは日々何かに出くわし何かを感じて、そして時には動き出す。
    そんなささやかな日々を抱きしめて離したくないと私は思った。

  • 図書部員・望美の視点が描かれる高校生の日常。とはいえ、登場するのは図書部員だけなので、非常に狭い世界だ。
    そうだよなあと思うのが156頁。
    この世の中の人は、誰もがただ会話するだけでも芝居がかる。即興で「キャラを演じる」。役割の中でボケたり、ツッこんだりもする。
    誰もがテレビや本や、あるいは先人たちのふるまいや、それぞれの心の中に降り積もった情報を参照して、言葉を外部に発しているんだ。
    上手にふるまえない人は、しんどい。当意即妙に冗談がいえたり、余計なこといわなかったり。「空気よめない」のは生きにくい。

  • 高校の図書部が舞台の青春ストーリー。
    図書部のメンバーは何となくクラスメイトと上手くいかない人が多く、さわやかな青春とは違う屈折した雰囲気が漂う日常が描かれている。
    最後まで大きな出来事がないのに飽きないところが本書の魅力だと思う。

  • 図書委員の話

    長嶋有はやっぱいいなーと思う

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著者プロフィール

小説家、俳人。「猛スピードで母は」で芥川賞(文春文庫)、『夕子ちゃんの近道』(講談社文庫)で大江健三郎賞、『三の隣は五号室』(中央公論新社)で谷崎潤一郎賞を受賞。近作に『ルーティーンズ』(講談社)。句集に『新装版・ 春のお辞儀』(書肆侃侃房)。その他の著作に『俳句は入門できる』(朝日新書)、『フキンシンちゃん』(エデンコミックス)など。
自選一句「素麺や磔のウルトラセブン」

「2021年 『東京マッハ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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