- Amazon.co.jp ・本 (433ページ)
- / ISBN・EAN: 9784334751586
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
ゴーギャンをモデルにしつつ、かなり相違点多いそうです。いろいろぶっとんだイカれ男だったので、史実とは異なると知ってなぜか少し安心した。
株式仲買人→画家、西洋文明→未開のタヒチ、まるで対極にあるようなものを切望しながら前半生を苦しみ生き続けてある日ようやく解放されたのか、あるいは漠然とした憧れを秘めたまま平穏に生きていたところ、ある日突然天啓にうたれて考えが変わってしまったのか、ぜひゴーギャン本人に聞いてみたい。
ストリックランドのねじくれた天邪鬼な嫌らしい性格、個人的には読んでて全然嫌ではない。一応は筋が通っているし、なんなら魅力的ですらある。
彼の人生そのものへのスタンスとして、知人・世間のことは気にもかけず、とにかく自己を追求する姿勢はかっこいいが、とても真似できるものではない。
でも本人は生きにくいとも思ってなかったんだろうな。
絵画をみて、そこから何かを感じ取れる人でありたい。 -
解説を読むとよりおもしろい
どこまでも心が求める「なにか」を追い求め苦悩する
己の中の芸術を突き詰め続ける -
再読。俗いなぁ。うん、俗い。ストリックランドを取り巻く人物も、高潔を装い俗人からは超越してる様に見えて性欲には抗えない彼自身も、西洋との対比でいかにも開放的に描かれるタヒチの風景も。とはいえ、徹底して通俗さを押し通すことでしか描けない人間性の本質というのもある訳で、そんな悪態を尽きながらも読み進めてしまう自分も、結局は通俗な人間ということか。それにしても男尊女卑的な視点は最後まで目に付いたのだが、解説を読み終えて目から鱗。ストリックランドに憧れる主人公のボーイズラブ小説、なるほど、そういう見方もあるのか。
-
ゴーギャンをモデルとしている画家ストリックランドの半生を追った作品。作家である「私」が、ストリックランドとの交流や、彼の死後にタヒチで会った人たちからの聞き取りのような形で話を構成している。
ゴーギャンを描いた本だと、ほかにマリオ・バルガス=リョサの「楽園への道」を読んだことがあるが、対象への踏み込み具合でいうとリョサの方が数段上である。「月と六ペンス」では「ストリックランドめ、墓まで秘密を持っていったか」という感じで、何か逃げてしまっているのだ。そのあたりがモームらしいところなのかもしれないが、ちょっと消化不良に感じてしまった。 -
中盤に出てくるダーク・ストルーヴの滑稽なまでの善良さよ。あんなふうに人に尽くすことはできないと思う。一貫してある画家の運命をたどる作品。最初と最後に彼の奥さんが出てきて、言い分が変わっているのが浅はかだな。タヒチに行ったあたりからだれてくる…
-
図書館で借りた本。ストリックランドはゴーギャン、ストルーブはゴッホ、作家はモーム自身をモデルにしてる話かな。とにかくストリックランドは女にモテるのだが分かるような気がした。人間の誠実さを美徳とするなら正反対の性格。だが野性味溢れる身体を持ち、圧倒的な天才さを感じさせる絵画を描く。全ての人を魅了した訳では無いが原始的・狩猟民のような力強さを感じた女性は本能で惚れてしまうのだろう。月は理想・六ペンスは現実。理想を追求し続けるストリックランド。最期はタヒチの山奥で家の壁に絵を描いて癩病で死ぬが絵に圧倒される医師、遺言で家を燃やす現地妻。寂しい老年期では無かったと感じた。
-
初めてきちんとモームを読んだ。
昔の大衆小説、だと思ったんだけど。読みやすいけど、みたいな。 -
これ自体も悪くはないのだが、個人的には新潮文庫版の訳のほうがよりすっぱりとまとまっていたように感じる。チャールズ・ストリックランドという画家のモデルとなったポール・ゴーギャンの絵を見ながら読むとより質感がリアルに感じられる…かもしれない。