シェリ (光文社古典新訳文庫 Aコ 5-2)

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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334754013

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  • 49歳の元高級娼婦レアと、現在25歳であるシェリは彼が19歳の時から付き合ってきたが、そろそろシェリが年頃になってきたので、政略結婚のために別れる。6歳年下の清潔で爽やかな若妻。今まではレアが至れり尽くせり甘やかせてくれ、我儘言いたい放題、有りのままの自分をさらけ出せていたが、役割が生まれ、当然息が詰まり、出奔。母親も嫁もまた甘やかす。一度別れた2人は再開し「愛してる」とか言い、溜まった情熱をさらけ出すが、「なんか今はよくても、この先は色々無理が出てくる」「今別れるのが最善」となんとなく気付く。潮時。

  • 老いを自覚しつつある美女と、25歳下の美青年との恋愛。
    色彩豊かでみずみずしい文章。行ったこともないフランスの自然や贅沢なしつらえの部屋が目に浮かぶような気がする。
    その同じ筆で、人間の、特に若い男性の美しさを丹念に描く。産毛に宿る光まで描く細密画のよう。鑑賞するような描写は、男性が読んだら当惑するかもしれない。
    描かれる美しさは完全に外面的なもので、人柄の良さ等の内面的な美にはほとんど言及されない。主人公であるレアの価値観がそこにのみ置かれていることが分かる。そういう世界では、老いることは衰退でしかない。年老いた人の容貌に関する描写は、美しさの描写と同じ細密さにして残酷だ。

  • 老境に差しかかった元高級娼婦のレアと、美しいが高慢な青年のシェリ。忍び寄る老いを実感しつつも若いシェリにどうしようもなく惹かれ、恋情と母親のような保護本能とプライドの狭間で葛藤するレアの姿は生々しく、悲しく、そして凛々しい。見えない火花が散るような女同士の会話も刺激的だった。

  • 本を読むのは速いほうだと自負しておりますが、この本はなかなか読み進められず、一度挫折してしまったぐらいです。
    途中で投げ出すのは嫌だったので、気を取り直して最後まで読みました。
    私との相性があまりよくなかったのだろうなと。
    この訳者のほかの本を読んだときには夢中で読んだので、原文の作者との相性の問題でしょうか。

    あとがき&解説には、私が知りたかった情報が書かれていたので、最後まで読んでよかったとは思っています。

  • 老いを感じ、シェリに見放される運命も受け入れつつ再開後の別れでシェリのためのことばを捧げたレア、最後まで立派だった。なんて強い女だろう。
    そして若い男の心離れは、なんと残酷だろう。

  • 最初の数ページ、美しく若い少年のような愛人シェリが、50歳直前の高級娼婦レアの真珠のネックレスを弄びながら、僕にくれよ、僕の方が似合うよ、としゃべっているその場面に、思ったのはよくある大人の女向けのコミックスや安い小説類との、ものすごい類似性だった。
    つまり最初に軽蔑し、それでも興味からずるずる読んでしまったというわけだ。
    シェリの恋煩いとか、レアの才知ある言動とかそんなものは、それほど魅力を感じないが
    レアがついに受け入れざるを得ない老いというものと完全に向き合わされるラスト近くは、ああこれが書きたかったのかと納得した。
    評価が全て美と社交界におけるしゃれた知性のみから成る生き方は、さぞや苦しいことだろう。
    互いの見てくれよりも中身を尊ぶ思考を持とうとして、それが出来ない美的感覚の強さは、悲劇かもしれない

  • 言葉の流れが優雅でオシャレだった。
    高級娼婦という特別な立場だが、レアの気持ちは女性なら誰もが一度は体験するのではないだろうか。

    シェリが去ってゆくラストシーンは悲しい。

  • なんて芳醇な大人の恋愛小説なんだろう。
    自身の肉体の老いに加え24歳も年下の男性を愛した女の毅然とした姿がそこにあった。悩み、苦しみ、傷つきながらも己が人生にプライドを持つ女の美しさ。
    鮮やかな色彩描写で浮かび上がる麗しのパリを舞台に繰り広げられる恋。
    身を焦すその激しさは今を生きる私たちと何ら変わることなく、読者の心を揺さぶる。

  • 優雅な自然を背景に繰り広げられる恋愛物語である。
    言葉が綺麗であった。

  • 49歳の元高級娼婦のレアと24歳年下の美貌の愛人シェリの恋愛を綴った話。
    レアの日々の生活、シェリの容姿、季節ごとの花々や香りの描写がとにかく美しい。目の前に光景が広がるほど瑞々しい。かぐわしいとはこういうことかも。
    フランス文学の匂いを少し嗅いだ気分。

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