シャーロック・ホームズの回想 新訳シャーロック・ホームズ全集 (光文社文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (497ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334761677

感想・レビュー・書評

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  • ヘビイな文芸もの読書が続いたので、息抜きにミステリーを読むことに。久々のホームズである。

    事件の真相…に関しては、斬新なものはあまり無いように思った。一方で、犯人たちのそれまでの半生、背景の描き方に人の哀れを思わせるものが幾つかあった。そうした人生の悲哀、物語の点が印象に残った。
    具体例は、ネタバレ度が強いので、あとの段落で後述する。↓

    ところで、ふと思う。
    究極的にはすべての探偵小説は「叙述トリック」なのではあるまいか、と。
    この作品集でホームズの短編を次々に読んでゆく。はじめは、事件の断片的な情報、限られた断面のみが報告される。やがて、ホームズの推理により、事件の別の断面が次第に姿を現し、その深層が詳らかになってゆく。
    終幕に至り、冒頭の事件の叙述は、あたかも海上の氷山の一角であった如く、限られた一断面のみが叙述されていたことがわかる。
    かようにして、読者は、筆者の語り口に翻弄され、掌の上で転がされながら、そうやって翻弄されることを楽しむのである。ホームズの短編を読んでいて、かように、真実を明らかにする語り口の定型の妙を実感。そして、極論かもしれないが、この作品集所収の短編の多くが「叙述トリック」のような気がしたのであった。


    <以下、大いにネタばれ あり>

    ********
    ・「黄色い顔」:英国の片田舎で暮らす白人女性…。彼女には秘めたる過去があった。かつて米国南部で黒人と初婚。肌の黒い娘もいる。そんな物語が明らかになる。

    ・「グロリア・スコット号」:1855年クリミア戦争の頃。オーストラリア行きの囚人護送船が舞台。囚人らは反乱を起こして船を奪取、看守や軍人を虐殺。しかし護送ん船は爆発事故で沈没。誰も知らぬ遭難事故となった。英国に帰った男はこの罪を隠して生き、財をなして地主となり老境にある。ところがある日、惨劇を生きのびた船員が現れる。地主の老人は過去の亡霊(罪の意識)におびえながら生きていたのだった。

    ・「背中の曲がった男」:インド植民地で功を成して英国に帰還した大佐。その軍人の前に「背中の曲がった男」が現れる、心身がボロボロになった苦労人らしいその男の出現に大佐は驚愕し怯える。男はかって自分がインドで「セポイの乱」のとき、恋敵だった彼を敵に売ったのだった。大佐に裏切られて敵地で拷問を受けるなど辛酸を嘗め尽くしズタボロの人生を生き延びてきた彼は「背中も曲がった男」になっていたのだ。
    ***
    この作品集、かように、秘めたる過去や裏切りの過去を生きて来た者の、怯えや後悔を織り込んだストーリーが目立ち、ちょっと異色な印象を与える。
    ***** 

  • ホームズ、昔いろいろ読んだはずなのに、すっかり忘れている自分にビックリ。
    モリアーティ教授との最後の事件は初めて読みました。
    漠然としすぎて、お互いの凄さが今ひとつピンとこなかった、というのが正直な感想です。

  • ホームズに兄っていたのか!弟キャラというフィルターを通して読むとまた違った風に見えてきそう。

  • ホームズシリーズの短編第二編。長すぎず、短すぎず、起承転結がしっかりしていてどんどん読みたくなる。当時から大人気だったというのも納得。やはりホームズとワトソンのキャラクターが魅力的、作品を重ねるごとにキャラクターに愛着を感じるので、本作の最後の話が当時の読者に与えた衝撃も理解できる。

  • ホームズのシリーズを読み進めている訳だが、正直なところ(小説史的な重要性は別として)熱狂的なファンが多くいることがイマイチ理解できないでいる状況。
    例えばモリアーティ教授が初登場することになる『最後の事件』だが、「モリアーティ教授は凄いヤツだ」ということが書いてあるだけで具体的にどうだということが無いため、入り込めないのだ。

  • 前作、冒険の方が油にのってますね。
    実際、この回想の方はシリーズの人気出てしまい辞められなくなって仕方なくコナンドイルさん書いていたそうで。
    ホームズのキャラで一番素敵なところはアヘン中毒なところ。不義密通に関して非常に扇情的だとして社会通俗を乱す懸念をしていたくせに、アヘンはオッケーなんですね。今じゃ逆転してるあたり、なかなか面白いなあ。

  • ホームズの短編。どの話でも些細なキーワード1つで正確な推理をしていてスゴイ。一番インパクトがあったのは、やっぱり「最後の事件」で、緊張感がありつつのスピーディな展開で、一気に読んでしまいました。モリアーティはこの話にしか登場しないはずですが、まさに宿敵という強烈な印象でした。

  • 読みはじめから読み終わりまで時間がかかりすぎてしまったせいか、
    あまり強く印象には残らず。
    『~冒険』の方が面白かったかな。

  • 原点回帰その2。
    ホームズって本当にワトスンくんしか友達いなさそうだな…。
    大人になってから読むとまた一味違う印象。ホームズの性格の悪さ(狡猾さ?)が妙に笑える。

  • 2006年10月11日読了

著者プロフィール

アーサー・コナン・ドイル(1859—1930)
イギリスの作家、医師、政治活動家。
推理小説、歴史小説、SF小説など多数の著作がある。
「シャーロック・ホームズ」シリーズの著者として世界的人気を博し、今なお熱狂的ファンが後を絶たない。

「2023年 『コナン・ドイル① ボヘミアの醜聞』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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