光の庭

著者 :
  • 光文社
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感想 : 31
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  • Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334910778

感想・レビュー・書評

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  • 抱えていた孤独は三千花本人にしか分からない。
    起こった悲劇も仲良しグループであったはずのみんなにとってもどこは他人事で、強く意識するときもそれは自分を中心に捉えてしまっていることに恐怖がある。
    しかしそれはもしかしたら誰しも持つような狂気であるような気もする。

  • あらすじを読んで謎解きものかと思ったが違った。やっぱり吉川トリコが描くのは、女たちの心の深淵だ。

    高校時代の仲良し5人組。 
    「銀チョコラバーズ」とチーム名をつけて、くっつき合って笑い合って「5人揃えば最高で最強」だと信じていた。きっと誰もが経験したことがある、輝きに満ちた怖いもの知らずの日々。
    卒業から2年後、仲間の一人がバラバラ死体で発見され、彼女の死にそれぞれが罪の意識を抱えながら16年の月日を経て、4人は再会する。


    「本当に知りたいことのほとんどを私たちは卒業してから学ぶことになる。多くの場合、その学習には痛みを伴う。時には大きな喪失が要らないおまけのようについてくる。」p156

    「どこからが自分でどこからが相手なのかもわからなくなるぐらい同じ温度でひとかたまりになっていたあの春は、もう二度と戻らないのだ」p197


    それぞれの道に進む中で、もはや彼女たちは(私たちは)あの時の少女のままではいられない。
    けれど、自分が「あの春」からどれくらい遠くまで行けたか、あるいは未だ辿り着けないでいるのか、比較し意識し続けるのは、常に「あの春」を共に過ごした友人たちの存在だ。

    「私ね、思うんだけど、友だちって密に連絡をとりあって、ずっとそばにいればいいってもんでもないんじゃないかな。若い時はさびしさに負けてわからなかったけど、いまならわかる。どっかで無事に生きててくれるだけでいいなって。」p290

    相手を傷つけ、自分も傷つくような、未熟で剥き出しの人間関係の中で出会ったからこそ、かけがえのない存在。
    過去を振り返る作業は、痛みと後悔と身勝手な自己欺瞞とに満ちて、全編通して息苦しい。

  • ★3.5
    『彼女を殺したのは私だーー』

    「銀チョコラバーズ」というチーム名をつけ、「うちら最高!」と最強の仲良し
    女子高生だった五人組は、高校卒業後それぞれの道を歩んだ。
    二十歳の時、地元に残った三千花が少年らに暴行され、切断され池に遺棄された…。
    16年が経ちライターとなった志津は彼女の事を書くために友人たちに取材を始める…。

    東京の大学卒業後にライターとなるが挫折して地元に帰って来た志津。
    短大を卒業し〝毒母〟との関係に辟易しながら、いいなりに市役所に就職し
    自分の人生を諦めている麻里奈。
    奔放な美人で若い頃の読者モデルが自慢で、必死にセレブな生活にしがみつきながら、
    年下の男との不倫関係をせっせとブログに書き綴る理恵。
    20歳でデキ婚をし3人の子供を授かり、表面は変わらずサバサバとしたリーダーシップを
    演じながらも、友達たちのブログやSNSを血眼で探すネット中毒の法子。

    亡くなった「三千花」はメンバーの誰もと一番仲良しだった少女。
    彼女達の心を散り散りにしたのは、その事件であり三千花の存在そのものだった。
    犯人ではないのに、全員が心に闇を抱えて生きて来てしまった。
    キラキラしてた彼女達の心の内の見栄や羨望や妬みが渦巻くさまは読んでて辛かった。
    高校時代をとても親密に過ごし、これからもずっと仲良しでいるんだと思っていても、
    同じ環境に身を置いている間は笑いあっていられても、
    卒業して進路や環境が変化したり人生経験を重ねる内に疎遠になっていく…。
    思い当たる事がまるでない女性はいないと思う。
    同じ様に、私にも疎遠になってしまった学生時代の女友達が何人もいる。
    ここに登場する5人は、少し過激ですが、読んでて本当に辛かったです。
    淋しさや孤独に負けてしまった三千花が切なかった。
    ラストには彼女達にもいつか光がさすのだと予感させられて終わって良かったです。

  • 昔は仲の良かった同級生も月日が経つとともに大きく変化していくよなぁ。
    違って当たり前と思っておかないと、数十年経ってから会ったりできないかもしれない。

  • 2023/01/22
    なんとなく借りてみた本。
    人はいろいろあるし変わっちゃうこともあるよなぁ、と思った

  • 友人の死への罪悪感はあっても、彼女達のほとんどは己と戦おうとしなかったんだなぁ…。
    甘えてる。
    と言っても、胸を張って断罪出来る私でもないのだけど。
    私達のほとんどが多分そうなのだけど。

  • 仲良し“だった”女子5人組。
    こんなにも複雑で、
    だけどこんなにも繊細で。
    女同士ってこんなにも厄介な関係だと
    まざまざと見せつけられた感じ。

    とにかく一番不気味だったのが法子。
    彼女の異常に粘着質な執着心が恐ろしい。

  • 高校時代に仲の良かった5人組。
    そのうちの1人が殺されることによって
    残りの4人が,お互いの関係について
    考えていく・・・というもの。
    女同士の友情について,裏にはいろんな感情が
    入り混じっていることは分かります。
    が,5人の関係性については
    こんなに早い段階でそんな風に変化する?!
    と思う部分が多く,それほど感情移入できず。
    図書館で予約してた本が立て続けに届き
    急いで読んだ最後の1冊だったこともあったのかも
    知れませんが,評価は☆3つというところでした。

  • 女子高生5人は「あたしたち最高」の関係だった。だが、制服を脱ぎ捨てた時から変わってしまう。田舎過ぎず都会過ぎないそこに残った者、出て言った者。もう、高校生の時のように無邪気なだけではいられなくなる。そして、20歳で三代花は殺された。16年後に地元に戻ってきたライターの志津は、三代花が殺されたころの事を友達に聞こうとする。でもそれは開けてはいけない「パンドラの箱」だった。「最高の関係」だった友達へのねじ曲がった感情。もう、重なる事も無い友情。三代花の抱えていた閉塞感。もうあの友情に「光」は当たらない。

  • 「銀チョコラバーズ」というチーム名をつけ、「うちら最高!」と最強の仲良し女子高生だった5人組。
    田舎町の進学校を卒業後、それぞれの道を歩み、そのうちの一人が20歳にして殺される。
    それからさらに十数年の月日が経ち、フリーライターだった志津が田舎に戻ってきたことから彼女たちの時計が再びまわりはじめる。
    女同士の自尊心、自我、コンプレックス、優劣の競い合い、それぞれの思惑が絡み合いながら、かつての「仲良し」だった少女の死が少しずつ解きほぐされていく。
    登場人物はわかりやすい典型として描かれているけれど、大なり小なり、女性だったらこういった「昔の仲良し」との距離の測りあいや牽制に思い当たる部分があるはずだ。
    新しいテーマではないけれど、普遍的であるがゆえによくわかる、そんな物語だった。

著者プロフィール

1977年生まれ。2004年「ねむりひめ」で<女による女のためのR-18文学賞>第三回大賞および読者賞を受賞、同作収録の『しゃぼん』でデビュー。著書に『グッモーエビアン!』『戦場のガールズライフ』『ミドリのミ』『ずっと名古屋』『マリー・アントワネットの日記 Rose』『女優の娘』『夢で逢えたら』『あわのまにまに』など多数。2022年『余命一年、男をかう』で第28回島清恋愛文学賞を受賞。エッセイ『おんなのじかん』所収「流産あるあるすごく言いたい」で第1回PEPジャーナリズム大賞2021オピニオン部門受賞。

「2023年 『コンビニエンス・ラブ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

吉川トリコの作品

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