猫の傀儡(くぐつ)

著者 :
  • 光文社
3.92
  • (44)
  • (76)
  • (47)
  • (4)
  • (1)
本棚登録 : 394
感想 : 76
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334911652

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 猫町に暮らす野良猫のミスジは、憧れていた順松の後を継いで傀儡師となった。さっそく、履物屋の飼い猫・キジから、花盗人の疑いを晴らしてほしいと訴えられる。銅物屋の隠居が丹精していた朝顔の鉢がいくつも割られるという事件が起こり、たまたま通りがかったためにその犯人扱いをされているという。人が絡んでいるとなれば、人を絡めないと始末のしようがない。ミスジは傀儡である狂言作者の阿次郎を連れ出すことにした―。当代屈指の実力派が猫愛もたっぷりに描く、傑作時代“猫”ミステリー!!

  • 猫の新米?傀儡師のお話、連作短編でよみやすい。
    猫好きにはたまらない!!
    シリーズになると嬉しいなあ!!

  • ニャ〜。
    やっぱり西條さんはスゴイです。

  • 【収録作品】猫の傀儡/白黒仔猫/十市と赤/三日月の仇/ふたり順松/三年宵待ち/猫町大捕物 
     人間と動物のコンビもの。といっても、その役割を逆転させた捕物帖。

  • = 猫の傀儡

    ミスジが行方不明の順松の後を継いで傀儡師になったいきさつ。
    初仕事として,キジが銅物問屋の主が丹精した変わり朝顔の鉢をめちゃくちゃにした濡れ衣を晴らす依頼を受ける。
    変わり朝顔は,旗本の殿様へ献上する予定となっており,それが縁で銅物問屋の孫娘が殿様の縁続きの家に嫁にもらわれる事になっていた。しかし,娘は家に出入りする魚売りを好いており,嫁入り話を壊すために,自ら壊していたのだった。
    銅物問屋と魚屋では身分が違う,と思い込んでいたが,実は魚屋は大きな魚問屋の跡取りで,修行の一環で魚売りをさせられていたのだった。

    = 白黒仔猫

    ミスジが子供の頃に烏に襲われたのを救ってくれたのが順松で,その烏が三日月。三日月が白い仔猫をさらって飛んでいるところを,今度はミスジが救う。白猫は,ひょんなことから傀儡の阿次郞が飼う事になる。
    その後,黒い仔猫が行方不明になったのを調べる事に。黒猫は隣家の両替商の娘に可愛がられていたが,その娘も同時に姿を消した。娘が連れて行ったらしい。
    実は,娘は実の母親に疎んじられており,それを不憫に思った以前世話をしていた女が連れ出していたのだった。
    阿次郞が名主を立てて,両替商には養女に出すように進言する。

    = 十市と赤

    風呂屋の主人が境内で襲われ,下手人として十市という若者が捕まった。
    十市は自分ではないと泣くばかり。十市が可愛がっていた,野良猫の赤が縁で,ミスジになんとかして欲しいという依頼が来る。
    風呂屋は裏で金貸しをやっており,金を返せない料理屋夫婦が一計を案じ,
    十市に濡れ衣を着せる工作をしたらしい。
    しかし,赤が隠していた,十市をおびき出す手紙についていた重しの跡が証拠となり阿次郞が犯人を特定した。

    = 三日月の仇

    子供にいじめられていた烏をミスジが助けたところ,それは三日月の女房だった。
    女房は,団子の串みたいな物が飛んできて刺さったという。猫町ではこのところ同じような傷をつけられ,更には惨い殺され方をした猫が何匹も出ていた。
    ミスジがなんとか阿次郞に,団子の串が手懸かりだと知らせたところ,吹き矢ではないかと言う事になり,吹き矢を使う遊技場での情報から,武家の子供が犯人ではないかと見当をつける。
    吹き矢を吹いていた子供は見つかったが,それを無理に命じていたのはその兄で,惨い殺し方をしていたのもその兄だった。
    ミスジはそれを庇う弟とともに,兄に切られそうになったところを,三日月に助けられた

    = ふたり順松

    白猫(ゆき)とミスジと阿次郞が散歩していたところ,辰巳芸者の春奴がゆきは自分の姉芸者のものだという。
    それが縁で,姿を消した姉芸者(順松)と,同時にいなくなった時雨を阿次郞が探す事になる。時雨が飼っていた猫が順松で,同じ頃に姿を消している。
    芸者の順松と時雨は恋仲だったらしい。
    時雨は実は大西屋の元主人(婿養子)で,三年前に隠居して,弟に身代を譲ったという。
    その際,嫁(大西屋の実の娘)と離縁し,弟とその嫁が結婚した。

    = 三年宵待ち

    調べを進めていくうちに,大西屋の現主人(佐吉郎)から新たな情報を得る。
    佐吉郎と大西屋の娘は元々が許嫁だったが,ちょうど佐吉郎が身体を壊し,長い事回復しなかったために,兄に養子のお鉢が回ったとのこと。
    しかし,佐吉郎と娘は実は恋仲で,時雨との祝言の日にそのことを娘から打ち明けられた。そこで,兄は佐吉郎の身体が回復したら身を引く事にした。
    その間10年。
    一方で,芸者の順松は,16年前に押込みに会った叶屋の娘で,時雨と許嫁だったおもとであった。ふたりはほとぼりが冷めた頃に一緒になるつもりでいたらしい。
    それが両国の川開きの日で,ようやく二人で会えるというその日に,二人は姿を消した。その日,最後に時雨の姿を見たのは,履物小売りの丸吉の主だった。
    話を訊きに行くと,ミスジに対して恐怖と殺意を顕わにし,懐に潜ませた匕首を振りかざす。

    = 猫町大捕物

    丸吉の主が怪しいと睨んだ阿次郞は,一計を案じ,丸吉の主を罠に嵌める。
    丸吉の主は,16年前に叶屋を襲った墨縄一味の生き残りだったのだ。
    まんまと罠に嵌まった丸吉の主は,さらに猫町の全猫の襲撃を受け,神社の石段から転落する。一命は取り留めたが,その後お縄に。
    一味の残党が捕まったことを知り,各地を転々と逃げ回っていた時雨とおもとも江戸に戻ってくる。
    猫の順松は,丸吉の主が2人を襲うところを救おうとして,命を落としたのであった。
    時雨はどうも自分が傀儡で会った事を知っているようで,ミスジがあとを継いだ事も分かっているようだ。

  • 猫の世界

  • 猫には猫の心意気がある!!(。+・`ω・´)キリッ
    人を傀儡として使い猫の問題を解決させる猫の傀儡師。
    野良猫のミスジ(♂/2歳)が
    次の猫町の傀儡師に頭領から任命された。
    ミスジの傀儡に選ばれたのは自称・狂言作者の阿次郎。傀儡師と傀儡は一心同体。
    ミスジは猫なので人間の言葉は分かってもしゃべれない…
    そこで知恵を働かせあの手、この手で
    傀儡の阿次郎を誘導し
    真実に辿り着き事件を解決していくが…
    猫だけじゃなく、結果人間も助けることに…(。+・`ω・´)キリッ
    西條さんらしい人情(猫情)話。

  • てっきり猫が術みたいなので人間にのり移って事を成す話かと思ったら、猫が猫の知恵で人間を誘導する、傀儡師の訓練を受けてる優秀猫の話。おもしろい!人間が猫に使われるなんて。それも人間絡みの猫の事件のために。西條さんの時代物ファンタジー、とっぴなんだけど、ちゃんと違和感なく話になってるからすごいな~。ぜひ続編をこいます!その前に今春屋をお願いします!

  • 猫の為に人を操って働かせる。
    それが猫の傀儡師である。
    憧れていた順松の後を継ぎ、傀儡師となった
    野良猫のミスジ。様々な事件を傀儡である
    阿次郎(人)と共に解決していくうちに見えてきた
    先代傀儡師失踪の真相とは…
    「猫の傀儡」「白黒仔猫」「十市と赤」
    「三日月の仇」「ふたり順松」
    「三年宵待ち」「猫町大捕物」収録。

    【傀儡四箇条】
    壱、まず暇であること。
    弐、察しと勘が良いこと。
    参、若い猫並みの数寄心を持ち合わせていること。
    肆、何よりも猫が好きなこと。

    というわけで傀儡に(勝手に)任命された
    売れない狂言作者の阿次郎。
    先代傀儡師の順松に憧れるミスジの真っすぐさ、
    江戸っ子猫の情の篤さがかっこいい…!
    ミスジに上手い事使われる阿次郎も、
    阿次郎の愛猫、ユキなども良い味出してます。
    確かに猫って自分の思うように
    人間に色々催促してきますよね…
    あれは操られていたのか…
    連作短編集でどれも人情、謎解きもの。
    最後はうまくまとまっていて良かったです。
    個人的には「十市と赤」が切なかったですね…

全76件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1964年北海道生まれ。2005年『金春屋ゴメス』で第17回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し、デビュー。12年『涅槃の雪』で第18回中山義秀文学賞、15年『まるまるの毬』で第36回吉川英治文学新人賞、21年『心淋し川』で第164回直木賞を受賞。著書に『九十九藤』『ごんたくれ』『猫の傀儡』『銀杏手ならい』『無暁の鈴』『曲亭の家』『秋葉原先留交番ゆうれい付き』『隠居すごろく』など多数。

「2023年 『隠居おてだま』 で使われていた紹介文から引用しています。」

西條奈加の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×