雨の中の涙のように

著者 :
  • 光文社
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感想 : 76
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  • Amazon.co.jp ・本 (293ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334913618

感想・レビュー・書評

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  • 連作短編8編で章ごとに語り手が変わり,堀尾葉介との何らかの接点を描くことで最終章の葉介自身の語りによる「美しい人生」で完結する.彼の抱えてきた哀しみを思うと堪らなくなるが,それでも例えば出会った人からもらったよもぎのお守りなど,幸せを感じた瞬間は時々あったのだと信じたい.映画の名場面が重要な見せ場になっていて「セントオブウーマン」をまた観たくなった.

  • え?芸能界の話⁈と思ったけど、
    この作家さんのお話はやはり面白い。

  • 圧倒的なオーラを放つスター、堀尾葉介。彼の「光」に触れると運命が動いていく。どんなに苦しいものでさえも──。心を動かすことにおびえている人々が過去と向かい合う姿を、丁寧に、繊細に、そしてドラマティックに描く感動作

  • 八章構成で各章ごとに主人公が異なるが、どの章にも「堀尾葉介」がキーマンとして登場する。最後の章は堀尾葉介を主人公に終幕する小説。自分はこういう構成の短編集がそもそも好き。

    堀尾葉介という一見完璧に見える人物の輪郭が少しづつ明らかになりつつ、各章の登場人物が人生の転換点の選択をしたり、気持ちの有り様を変化させたりする場面が描かれる。それぞれ短編なので長編のような大きな感動を得られるわけではないけれど、各章の文章量がちょうど良く、さっと読める割に、いろんな人物の人生を見知った感覚になれるので、読書体験としてとても楽しかったので星5評価。

    各章のタイトルが洒落ていて、ついつい次の章を読んでみたくなる。

    各所で往年の映画が引用されているのも興味深い。私が好きな「スカーフェイス」や「素晴らしき哉人生」も引用されていたので嬉しかった。

    穿った見方で気になったポイントを挙げるとすれば、多くの章は主人公が男性で、それぞれ人生の岐路を迎えている状況なのに、ちゃんと恋愛関係の対象となる女性がいる点。悩んでいるときにそんなに高確率で身近に気になる女性いるもんかね?と少々嫉妬混じりの不満を覚えた。

    ともかく、ちょっとした時間にすこしずつ読み進めることができ、毎章きちんと満足いく読書体験が得られる良い小説でした。

  • 遠田作品はこれでもか!っていうほど不幸を背負った男性の話が多いんだけど本作は珍しくそうでもないなぁっと思いながら読み始める。
    堀尾葉介というスターに関わった人達の物語。
    全部の章が男性目線で語られる遠田さんらしい連鎖短編。
    どの章も堀尾葉介に魅せられた。
    でも最終章で悲しい気持ちに。。。
    だけどこれが遠田潤子なんだよなぁ。。。

  • 短編集なので読みやすかったが、途中で辞められるのでいつもよりのめり込んで一気読みしなかったから読むのに時間が切ってしまった。

  • 遠田潤子さんを読んで、初めて心から良かった!と思えた作品。
    『冬の鉄樹』をはじめ、絶望の先に見えるものを深く掘り下げ、探りだすように、厳しい視点と筆致で描く作品は、熱量も完成度も高く、読み応えがあるのだが、同時に「どん底」と言えるほど暗く、気力・体力を削られる。
    何度も書くが、ロシア文学のような暗みと救いのなさが持ち味なのだと思っていた。
    ところが、今作は短編連作というかたちで、実に多彩な設定、人物が描かれ、哀しくも温かな作品が連なり、最終章のタイトルそのままのように幕が下りる。その余韻の優しさにずっと浸っていたくなるような、素晴らしい物語だ。
    短編が巧い、というのは、作家として優れている証左でもある。
    遠田さんの実力はよくよくわかっていたつもりだが、この物語を通して、やはり凄い作家さんだと思ったし、何より、遠田作品に欠かせない美しい描写が、短編だけにより際立って活きたように思う。
    こんな時代だからこそ、再び温かな作品で、そっと読者の心を優しく灯してくれることを、切に願います。

  • これまで読んだ遠田さんの本の中では一番救いがあって好きです。

  • 1人の俳優の幼少期から壮年期までを、かかわってきた人たちの視点から描いた、連作短編集のような長編小説。

    容姿端麗で実力派、周囲への気配りも完璧で非の打ちどころのない俳優、という出来すぎの主人公だが、逆に語り手として登場するのは心に傷を抱えてつらい日々を送っている人たちばかり。彼とかかわったことで一筋の光明が見えてくるという各章のストーリーは、地に足の着いた人たちの苦しみを伴っているため、主人公が嘘っぽくならないところが上手い。
    それぞれの話には、観たことのある映画が効果的に用いられていたため、イメージも膨らませやすかった。雨のシーンも印象的。ラスト、本人の語る章だけは、ちょっと甘めかな。

  • 遠田潤子さん作品の3冊目を読了。いつもの作風をブラックとするならライトグレーな感じ(褒めています)。スター俳優となった「堀尾葉介」が絡む連作短編集。各章のタイトルにもある映画の多くは有名な作品だが少し古くて覚えていない。人生は辛く悲しいだけではなく、前を向いて歩いていけるものだ。優しい内容で是非とも再読したいと思える良書でした。お勧めします。

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著者プロフィール

遠田潤子
1966年大阪府生まれ。2009年「月桃夜」で第21回日本ファンタジーノベル大賞を受賞しデビュー。16年『雪の鉄樹』が「本の雑誌が選ぶ2016年度文庫ベスト10」第1位、2017年『オブリヴィオン』が「本の雑誌が選ぶ2017年度ベスト10」第1位、『冬雷』が第1回未来屋小説大賞を受賞。著書に『銀花の蔵』『人でなしの櫻』など。

「2022年 『イオカステの揺籃』 で使われていた紹介文から引用しています。」

遠田潤子の作品

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