僕のなかの壊れていない部分

著者 :
  • 光文社
3.30
  • (44)
  • (69)
  • (177)
  • (30)
  • (13)
本棚登録 : 665
感想 : 98
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334923631

作品紹介・あらすじ

強烈な個性を持つ男の女性関係を描き、小説の大きな役割に真っ向から挑んだ著者の最高傑作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 見えるものばかり追いかけてばかりいたら、人はどんなことにでも絶望するしかなくなってしまう。過去のトラウマにより、驚異的な記憶力を持つ、非凡な青年。彼には、才色兼備のスタイリストの恋人と、子持ちのバーのママである愛人、SMプレイ相手の人妻という女性関係があり、さらに家庭教師の元生徒だった少女と、たまに泊まりに来る弟のような青年という疑似家族がある。

    愛について、生と死について、突き詰めて考えずにいられない彼の内面を通して、作者は「何が一番大切なのか」を問いかける。 デビュー作『一瞬の光』で注目を集め、村上春樹にも比較される異才の最高傑作。書き下ろし。

  • 主人公が良い方に変わるのか、より壊れていくのか気になって一気に読んだけど、変わらないままだった。必要とされる喜びを感じてるのに自分勝手に振り回して突き放して痛々しい。でも人は変われないしぽっかり空いた穴は他のものでは埋められないよねと思った。私は枝里子さんに感情移入だなぁ。まっすぐで一生懸命で、理解しよう理解しようって相手を想う姿勢に共感。でもわかり合える相手じゃなくて、嫌いになりたくないって頑張ってる姿が痛々しくて苦しかった。端から見るとわかるけど、渦中にいるとわからないんだよね…。あと、そんなに出てこないけど性描写がえろかった(笑)大西夫人がドM過ぎる。旦那さんが20歳上の貿易商で一年の半分は海外にいる、いろいろ満たされない有閑マダムな感じに描かれてて熟女想像してたらまさかの32歳だった(-∀-;)…。

  • この人が新刊を出すと、好きじゃないのになんでか買ってしまう。「なんで好きじゃないのか」を検証するために読んでいるような気がする。んで読後に「あー、やっぱ好きじゃないわ」と確認したいのだろう。

  • 15年ぶりくらいの再読。
    本作、何といえばいいか。そう、ダメンズの『僕』こと、松原直人の独壇場とでも申し上げておきましょう。

    ・・・
    この御仁、とにかく性格が良くない。

    素直じゃないというか、ああいえばこういう。しかもその辛辣さは仲のよい彼女とかに対して一層高まる。読んでいてもこちらがムッと来る。文学系ウンチクを繙き上から目線で『お前知らないだろうけど』という風にディスるのも超一流。
    海外旅行に行くのってそんなに意味あるの?とか、趣味へのディスりもヤバ目。他人の趣味にそこまで言うか?的な。

    ・・・
    更に、それほど性格が良くないのに、結構モてる。

    作中でも、そこらのモデルよりも美しいといわれる枝里子と付き合い、シングルマザーの朋美といい中になり、30過ぎでご無沙汰となっている大西夫人と褥を共にする。
    でもって、これまた性豪かというくらいガンガン。どこで覚えたんだよ。

    ・・・
    極めつけは、これでいて某T大卒業、三十前後で1000万プレーヤーとのこと。容姿については書かれていませんが、どんだけうまくいっているんだ?って感じ。

    ・・・
    でもやっぱり性格が悪くて結局は一人に戻ってゆくと。

    後半に向けて、貧しい家に生まれ、片親に育てられるも捨てられた経験があり、それがトラウマになっていることが仄めかされます。とはいえ、他人はどこまで斟酌するべきか。

    私的には、枝里子の父親が枝里子に言ったように、あれはおかしいと思います。ない。娘を持つ親となった今、一層そう感じます。

    表紙の帯に絶賛云々とありましたが、個人的にはそこまでかという印象でした。

    ・・・
    ということで久方ぶりの白石氏の再読でした。

    村上春樹氏の作品でも度々でてくる『僕』も、独自な感性と洒脱な言葉遣いで相当我が道を行きますが、今回の『僕』こと直人くんは結構強烈だったと思います。題名の壊れていない部分がどこだったのか分かりませんが、大分壊れちゃっている気がしました。

    単行本で読みましたが、文庫で解説付きで読んだ方が良かったかと今更ながら少し後悔。

  • 題名も良いし、内容も良い。
    随所で哲学的思考が上手く含まれている。
    この著者の他の作品も読みたい。

  • 面白い

  • 幼少期にトラウマ的に傷つけられた人間は、防衛本能が働き人との関係が回避的になる。
    本当は必要とされる人間となりたい承認欲求は誰よりも強いが意にそぐわない事があるとすぐに関係を破壊してしまう。
    主人公は幼い頃に母親に捨てられるという経験をした。この経験から思考力は深くなったが人間関係には非常にドライになる。
    一方で愛情に包まれて育った人間は、傷付いても人間関係を深く構築しようとする。
    このストーリーはそんな思考や価値観が違う二人が、感情をぶつけ合い、お互いに傷付け合い、癒しあったりする。
    普通だとこんなぶつかり合いの中で感情の距離感は縮まっていきそうだが、感情を正直にぶつければぶつかる程、二人の違いが明瞭になっていくのがリアル。


    心に残った言葉
    ・人の感情は火花の様に瞬間の明滅で、そのひとつにもともと何の統一もありはしない。
    ・人生というのは死と直面しないと、本当の力も人間の生の粘り強さも示すことができない。

  • 2018.03.05 朝活読書サロンで紹介を受ける。

  • 死の受容は、一切皆苦であり、輪廻の中に人は存在していて、全ての物事は然程意味の無い事である。過激な性描写も然り。親からの愛情を受けない環境で育った主人公は、典型的な回避依存であり、去るなら、近寄るな。これでもかと傷付けても尚、自分を求めるのであれば、今度こそ離れないと確信出来る。無意識に試さずにいれない。去られるのが怖いし、傷付けるから、先に離れたくなる。自分が愛される事を信じていない。本当は必要とされたい。それが、拓也との河原での場面に現れている。

  • 一部、自分を見ているようで耐えきれなく、もしくは「阿呆か…」と感じざるを得ない場面も多くて困る。
    嫌いではないのだけれども、ではなぜたまにこの人の本を手にするかというと、この作家がなにか今までの書いてきたテーマ、もしくは考えてきたテーマを凌駕する瞬間を見たいからなのかもしれない。

  • Amazonレビューでの賛否両論。
    ディスられっぷりが逆に読みたくなる本。

  • ずっと気になっていたタイトル。

    3人の女の人と関係を持って、不安定なバランスで保っているようでありながら、一貫してどこか冷めていて、どことなくずっとひとりぼっちな感じ。
    付き合ってる女の人3人だけじゃなく、拓也・ほのか・雷太の3人の子どもたちが主人公にとってすごく重要な気がした。

    人が幸福になるには、自分よりも他の存在を愛することで、それは男女の恋愛感情を超えたものだと考えると、幸福になれそうな終わり方。

  • とりあえず読んだけど、何だかよく理解できなかった。

  • 生きる意味について,改めて突き付けられました

  • “僕”という人間はどうしてこんなに偏屈で独りよがりなんだろう。こんな人を好きにはなれないが何故か気になってしまう。彼を理解したい、彼の壊れている部分を埋めてあげたい、救ってあげたい気持ちになる。枝里子もそうなのかな。

  • 嫌な本だな・・・。
    主人公に全く感情移入できずひたすら嫌悪感だけが・・・。

    でも・・
    何か今の自分にチクチクと痛い問いかけをしてくる・・・。
    人生観・生死観を自分に考えさせる1冊。

    また読みたいような読みたくないような・・・w

  • 虚しい。

  • 真知子さんの話を物語の序盤から匂わせていたけど、案外あっけなく真知子さんの説明がなされてしまったなぁと思った。あと、主人公が家族についてのコンプレックスがあるみたいだけど、母親に言及する話がちまちま出てくるだけだったなと思った。
    何かが劇的に変化する物語ではないけど、ところどころで出てくる人々のセリフに共感しきりだった。
    あと、常岡さんの文章の引用を読んでホホーッと納得した。

  • 話はちょっと難しくてよくわからなかったけど、きっと主人公の男の人は生きにくいだろうなァ−。と思った。
    少しだけ自分と重なるところもあったりなんかした。
    あと2・3回ぐらい読まないと理解はできないような気がする。

  • 京都旅行からはじまる男女のおはなし
    めぐちゃんおすすめ
    古典的な哲学者などのことばが引用されたり、キーという感じの表現が散りばめられている

  • なんだろう。
    哲学的で自分の中の琴線に触れる何かがあった筈なのに、結局最後まで掴み切れなかった。
    ある側面では、物事の真理を突いているからこそ、冷たくて誰かを傷つけるけれど。
    ″「死にたい」という言葉に「じゃあ死ねよ」と突き放すんじゃなくて「だったら一緒に死んでやるよ」くらいのことを言ってやるべき″
    と言った彼に、壊れた優しさを垣間見た気がした。
    時間を置いて熟読したいけど、夫人との唐突で過激な性描写に再読の意欲が削がれた。

  • 主人公に嫌悪感を持ちながら読んだけど、自分と似てるところがあるのを否定できなかった。
    見たくないもの、認めたくないことを目の前に突きつけられるような感じ。

  • 哲学的な小説。
    人生は、考えれば幾らでも考えることは出てくる。
    そして、物事は深く深く掘り下げることができる。
    思考に限りはなく、突き詰めていくと果てしない旅のようにどこまでも続いていく。
    深く見つめる人の行動はどこか違うところがあるような気がする。
    私の近しい人にも主人公のような人がいる。
    近付けたかと思うと遠ざかり、捉えどころがなく、けれど愛情がないわけではなく、思いもよらぬところで深い優しさを見せたりもする。

    読めば読むほど、新しい発見に出会えそうな本。

  • 主人公は多忙を極める30歳。才色兼備の枝里子という恋人がありながら、人妻、離婚歴のある子持ちの女性とも関係を続ける。驚異的な記憶力を持つ奴だが、胡散臭い曲者、壊れた感情の人間。
    こんな奴居るだろうけど、知り合いになりたくない。でも女性をひきつける魅力ってあるんだろうな

  • 高校生の時に読んだからか、主人公になにこいつ!と思いながら最後まで好きになれず、ましてや共感もできず、お姉ちゃんの本棚に返却しました。今読んだら違う感想かもしれないけど、手元にないのでなんとも言えず。いつかまた機会があったら読んでみたいかも。

  • 主人公の怜悧さや冷酷さは人としての欠陥に思えると同時に人間らしいとも感じる。
    難しい話。

  • 一番好きな本

  • 難しいお話でした。
    白石さんのお話は、理屈が多い。
    でも、一字一句をしっかり噛みしめて、飲み込んで読んでいくと、
    ちゃんと消化できて、自分の心の栄養になる。

    ほんとうに居場所が欲しかったら、まず足を止めて、ここのここに、自分で自分の居場所を作るしかないのよ。
    ここよりほかのどこかなんてないのに。天国も地獄も、あの世もこの世も、みんなここなのに。 (文中より)

    白石さんの本を読むのには、
    かなりの根気がいるのだけれど、
    きっとまた、手にとってしまうんだろうな。

  • 本当に私を憂鬱にしてくれる作品。
    それなのに手放せない。いつも枕元に他の本とは区別されておかれている。

    どうしてこんな出口がないんだろう。そもそも主人公が面倒臭すぎる。何がしたいのかわからない、はずなのにわかってしまう。要するにシンプルに生きられない人の典型。何事も考えすぎなのだ、悪い方向に。そして小賢しい方向に。自分の非を認めていながらそれでもいいやと開きなおる、というか善処すること、変わることを諦める。
    なんかもう読んでいて面倒。
    何もかもわかってるような口叩いてるんじゃないっ!って叱咤したくなるような。
    それでもって性描写が割とハードなところも疲れた原因かも。

    なんだか主人公に重なる人が身近にいるせいか色々と忘れられない作品。

    【あなたはね、この世の中のいろんなことに自分だけの違った答えを見つけようとしているのよ】

  • 時間に余裕があり、物事を深く考えたい時におススメの一冊。

    生きる意味というのが、この作者の作品の中で深く深く言及されている。生きる意味・価値というのは、人にどれだけ喜びを与えられるかで決まってくるらしい。人の幸せというものは、他者を幸せにしてこそ得られる充足感のようなものだと。
    自己犠牲という言い方はあまり好きではないけれど、自分の幸せも追求しつつ、大切な人への自己犠牲も適度に行いながら生きていくのが幸せの近道だとこの本を読んで感じるようになった。

    世の中では愛が根幹になっている。
    最後にハリー・ポッターを救ったのも愛。
    ロンダ・バーンの「the secret」でも愛が叫ばれている。

    この作品の中で言及されていた人の幸せを願う気持ちも愛である。
    こんな素敵なパワーが世界に満ち溢れ、皆が笑顔で暮らせるようになった時、いがみ合いや戦争もなくなると思う。
    話がそれてしまったが、愛という力は偉大だなぁと感じた。
    日々の生活の中で、できることから愛を発信していきたいと思う。

全98件中 1 - 30件を表示

著者プロフィール

1958年、福岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。文藝春秋に勤務していた2000年、『一瞬の光』を刊行。各紙誌で絶賛され、鮮烈なデビューを飾る。09年『この胸に深々と突き刺さる矢を抜け』で山本周五郎賞を、翌10年には『ほかならぬ人へ』で直木賞を受賞。巧みなストーリーテリングと生きる意味を真摯に問いかける思索的な作風で、現代日本文学シーンにおいて唯一無二の存在感を放っている。『不自由な心』『すぐそばの彼方』『私という運命について』など著作多数。

「2023年 『松雪先生は空を飛んだ 下』 で使われていた紹介文から引用しています。」

白石一文の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×