明日の記憶

著者 :
  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924461

作品紹介・あらすじ

「まずお歳を聞かせて下さい」「ここはどこですか」「次の三つの言葉を覚えて下さい。いいですか、あさがお、飛行機、いぬ」「今日は何曜日ですか」「さっきの三つの言葉を思い出して、言ってみてください」人ごとだと思っていたことが、我が身に起きてしまった。最初は物忘れ程度に思っていたが、若年性アルツハイマーの初期症状と告げられた。身につまされる傑作長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 50歳で若年性アルツハイマーになる男性の話。



    仕事では部長を務め、
    娘が近々結婚し、孫も産まれる。

    老後は妻と趣味を活かして…などと
    想像していた未来や
    今の生活がどんどん崩れていって
    とても怖かったです



    本人目線で書き進められていて
    途中何度も読むのが辛くなる。


    と、同時にどうなってしまうのか気になって
    先を見てしまう。

    そんな作品でした。


    主人公の思いや葛藤、
    支えていく妻の思い、
    周りの理解のなさや憤り、


    なにより記憶がなくなっていく辛さや恐怖
    いろいろなことを教えてくれました。



  • 著者の日経新聞(2019)でのエッセイがとても面白かったのがきっかけで、代表作をと思い、こちらの一冊を選びました。

    若年性ではありませんが私の父もアルツハイマーであること、私自身も50代であることなど重なる部分も多く、興味深く共感を持って読み進みました。
    相当な取材をされたと思いますが、アルツハイマーの症状の描写が大変リアルで想像を超えていました。
    アルツハイマーを理解しようといくつか本を読みましたが、この小説が一番、症状を理解出来るのではないでしょうか。
    過去の父の置かれた状況や気持ちを理解出来なかった事を悔やみながら読みました。

    物語は心温まる終わり方で良かったです。
    私自身もなんだか救われました。
    大変感動しました。

  • 50歳になる広告代理店勤務の男性が、若年性アルツハイマーと診断される。
    徐々に失われていく記憶、職場での不安、自分が自分でなくなっていく恐怖。
    その時自分は…

    映画を見ていたことを忘れて、手に取りました。
    読み始めて、すぐに思い出し、映画のキャストをそのまま当てて、読み進めました。
    職場でのシーンがつらかった。
    周りの人達に知られないように頑張り続けていたものの、不審な言動に、周りは気付いていたという事実、胸が詰まります。
    告知が必要な病気なのだとは思います。その上で、対処しないとならないことが多いでしょうし。
    でも、最終的にすべて失うのなら、知らずにいた方が幸せだということもあるのかも、なんて考えてしまいました。

    最後のシーン、妻の立場としては、本当に辛い。
    一日も早く、治療薬が開発されることを望みます。

  • 若年性アルツハイマーがテーマ。
    もうすぐ50で、会社では部長で、まだまだこれからというのに、
    病は突然やってくる・・・
    知らなかったのですが、この病気は死に至る病気なんですね。
    ただ記憶が失われていくだけではなく、
    体の細胞も生きていく事を失っていく・・・

    哀しいのは、忘れないように努力しても、
    (そんな事をしたんだろうか?)と後で人から聞いて、
    まったくその事が記憶に無い事。

    同じ事を繰り返して話してるんじゃないかと、
    人の顔色を常に伺っていなくてはいけない。
    精神的にも追い込まれていってしまう。
    本人も辛いけど、いつか忘れられてしまう家族も辛い。

    主人公は物事を忘れないように「備忘録」というノートをつけている。
    だんだんとそれもひらがなが多くなっていくのだが。
    この辺は、先日読んだ「アルジャーノンに花束を」と重なる。

  • 若年性アルツハイマーの話。

    主人公が鬱の症状とともに、物忘れがひどくなり、病院に受診をすると、若年性アルツハイマーといわれます。

    最初は必死に仕事をして、一生懸命隠し続けます。

    奥さんも、これがいいと聞くと、夕飯などに出したり飲ませたり必死になっていきます。

    私も、主人公と年齢が近く、しかも、親も認知症だったので、どうなっていくかというのがわかるので、(主人公の親も認知症だったので、ああなるのか?みたいな感じで苦しみます)切なかったです。

    認知症が進んでいる状態は、本人も意識があるので辛いですね。

  • 映像を見ているかのように情景が浮かんだ。家庭内。職場。全ての風景が。同じ年頃だからかなあ、、すごく身近に感じてしまった、、、
    何気ない生活の中で、些細な体調の変化を感じてからの不安をあれこれやと何かのせいにして目を背けていつもの生活を送ろうとする、送りたい気持ち。でもアルツハイマーだと診断される。自分も辛い。奥さんも辛い。少しずつ少しずつ記憶が無くなる怖さ。でも向き合って行く強さ。結末は何となく想像はしつつ、、、読み終えた感想をどう言えばいいんやろ?アルツハイマーの怖さはかなり感じた、、ネタバレのまま言ってしまう術しか持たないから、この星の数で満足度を察してもらいたい。映画もそのうち見てみよ〜

  • 何年も前の本屋大賞で取り上げられていて以来、気になっていました。改めて確認したら、2005年本屋大賞2位だったのですね。
    感動する話と記憶していたのですが、思っていたものとはちょっと違ったようです。とてもリアルで読み応えのある1冊でした。

    タイトルから推測できるかもしれませんが、本書は記憶障害を抱えた主人公の物語です。
    働き盛りの男性が、若年性アルツハイマーと診断される。
    記憶が零れ落ちていく恐怖と、他人にバレて今の場所にいられなくなるかもしれないという焦り。
    誰でもなりうる病気なので、非常に身近で、読んでいて怖いですよね…。当事者になるのも怖いし、その家族になるのも怖い。怖いものだらけです。

    記憶だけでなく、見当識障害と呼ばれる時間や場所の認識ができなくなる部分や感情のコントロールができにくくなる部分なども忠実に書かれていて、忘れるのならメモしておけばいいというものではないことがわかります。
    記憶がないということは、体験を自分のものにできないっていうことなんですよね。自分の書いた日記が、他人の日記を読んでいるように感じる…のだとしたら、切ない。別段何か解決策などが提示されるわけでもなんでもないんですが、野性的な野焼きのシーンが好きです。
    炎のエネルギーに生きる力をもらえるような気さえしました。

    表紙は映画の1シーンみたいですが、映画も見てみたい。

  • 若年性アルツハイマーに侵された主人公の心の葛藤と身体の葛藤。

    この人が置かれた状況を誰もが他人事とは思えないんじゃないかと思う。主人公がだんだんと病気に侵されていく過程が、すごく怖い。それは詳しく過程が説明されている訳ではなく、一見正常に見える主人公の日記や言動や行動などが辻褄があわなくなっていたりして、ひやりとする。

    仕事の仲間や血縁、更には家族まで忘れてしまい、自分という人格がなくなってしまうという事を正気で受け入れられるだろうか?と考え込まされた。いくら頑張ってもどうにもならない事って本当にやりきれないし、本当に辛い。

    これは誰にでもおこりうる物語だからハッピーエンドはない。最後は涙が止まらなかった。いろんな気持ちを考えてしまって。でもいろいろ考えるきっかけになると思うから是非たくさんの人に手にとってもらいたい本。

    今の時間は永遠ではないってこと。

  • 大事な人の顔も名前もわからなくなる、忘れたことすら忘れてしまう・・・自分がそんな病いに侵されていくのはどんな気持ちなんだろう。主人公や家族の姿をリアルに想像するたびに、何度も涙がこらえきれずにボロボロと泣いてしまいました・・・。

  • 「自分が自分であるために」がよくわかりました。
    医療者には人に誠実であって欲しいと思えるお話でした

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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