ひょうたん

著者 :
  • 光文社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (274ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334924775

感想・レビュー・書評

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  • 先日読んだ『夜鳴きめし屋』の前作です。
    夜鳴きめし屋の主人公は長五郎という若者でしたが、
    この『ひょうたん』では、
    長五郎はわずか10歳の子供で奉公に行っています。
    長五郎の家は「鳳来堂」という古道具屋。
    切り盛りしているのは、
    長五郎の父音松と母のお鈴です。

    長五郎の代にめし屋に鞍替えするだけあって、
    古道具屋のころから、お鈴の料理の腕前はちょっとしたもの。
    友人を大事にする音松の元、
    夜な夜な鳳来堂に集う、音松の悪友たちも
    半分はお鈴の料理が目当てのようでした。
    あったかい料理と人情味のある夫婦の元には
    いつも人が集まってくるのでしょう。

    古道具屋の夫婦が遭遇する
    江戸情緒あふれる6編の短編集でした。
    この方ももう旅立たれたそうで。。。
    ほんとうに『夜鳴きめし屋』の続きが読みたかった。
    惜しい方を亡くしたと思います。
    ご冥福をお祈りいたします。合掌。

  • 借金を抱えた怠け者で、父の遺した骨董品店を潰しそうになっていた音松と、将来を誓い合った呉服屋の手代に捨てられたお鈴。そんな二人が寄り添って立て直した古道具や・鳳来堂を舞台に、江戸に息づく厚い人情と機微とを、当代きっての女流作家が情緒ゆたかに描く。
    (2005年)

  • 本所、五間堀に「鳳来堂」という古道具屋がある。芝居小屋にかかっているような定式幕で作った半纏や綿入れを一年中着ている音松と女房のお鈴。幼馴染の、料亭「かまくら」の勘助、駕籠かきの、徳次、酒屋の房吉は、年がら年中集まっては酒を酌み交わす仲間。

    夫婦には兄の質屋で修行中の一粒種の長五郎がいる。
    真面目に働いてる長五郎のためにも、貧乏はしても、後ろ指を刺されるようなことはしないと決めた。

    古道具屋に現れる、骨董好きな武士や、盗まれたものが店に集まってこないかと調べる岡っ引きや、義理のてて親に暮らしのために、詐欺をさせられる姉弟。

    様々な人がそれぞれの事情を抱えてやってくる。

  • 2017.1.29
    しょうもないなぁと思う音松は、正義感強いし、友達思いだし、いい男だった。日ごろだらしなくてもいざとなったら頼れる男。
    料理上手なお鈴もいい。
    毎晩店先で一杯つけてお酒のおもりなんて私はごめんだけど、素敵な関係。
    それでこの作者にしては下ネタ多く、ちょっとびっくり。
    このメンバーならこんな話がくり広げられるはず。
    私が読み始めたのは宇江佐さんが亡くなってから。
    もっと早くに読みたかった。

  • 古道具屋「鳳来堂」を舞台に音松、鈴子夫婦が日常の出来事を優しく紡いでいくお話。
    登場人物たちも魅力的。
    切ない話もあるけれど、人情話にはやっぱり宇江佐さんの語り口が好き。

  • 道具屋の主夫婦を中心とした短編集。
    ほんのりじんわりしみじみと、いいお話です。

  • 本書五間堀にある古道具屋・鳳来堂を舞台とする人情市井物時代六連作集。鳳来堂は借金をこさえ店を潰しそうになった音松と、将来を誓った手代に捨てられたお鈴の二人が、縁あって所帯をもち、立て直した古道具屋だった、連日音松の幼馴染の友人が集まりお鈴の料理で酒盛り…ある日、橋から身を投げようとした男を音松が拾ってきた。親方に盾突いて、男は店を飛び出してきたようなのだが…表題作『ひょうたん』・息子長五郎の奉公先の話が『招き猫』。江戸に息づく人情を巧みな筆致で描く、『びいどろ玉簪』の幼い姉弟の人生が切ない。

    六連作は、織部の茶碗・ひょうたん・そぼろ助広・びいどろ玉簪・招き猫・貧乏徳利。「ひょうたん」の続編が『夜鳴きめし屋』『ひょうたん』の世界から十数年後の音松・お鈴の息子長五郎が営む深夜居酒見世を舞台とした連作短編集。続編の『夜鳴きめし屋』 を先に読んでるが店も変わり別の作品の様、問題なし。

  • 夜鳴きめし屋の、主人公の父母の代のおはなし。
    そう思いながら読むと、なかなか感慨深いものがあります。
    痛恨の二度借りでなければね…

  • 時は江戸時代。
    どこかふやふやとしている音松としっかり者のお鈴が切り盛りする古道具屋、鳳来堂が舞台。
    お客は、様々な想いを抱えて、この店に古道具を持ち込む。
    そしてその古道具が、さまざまな物語を紡いでいく。

    江戸っ子らしい気風の良さと、人情のお話。
    泣いたり、笑ったり。
    人々は日々、そうやって生きている。

  • 宇江佐さんの市井話って、時に迷惑キャラが突出しすぎておなかいっぱいになっちゃうことがあり(そしてまた、私がヤケに気にするんだよね)この「ひょうたん」も、実は少々不穏な^_^;気配があったのだけど、大筋の優しさ、たくましさに救われて無事読み終わることができました。
    うん、私は迷惑キャラが嫌い、というより、そやつ^_^;に振り回される主人公たちが嫌いなんだ、ということに気付いた次第です。

    舞台は江戸の本所。小さな古道具を営む夫婦とその周りの人々の物語なのですが、かなりふらふらと頼りない夫・音松と、しっかり者の妻・お鈴、そして、音松の叔父の質屋に奉公に行っている一人息子の長五郎の織りなす日々のあれこれが、うん、人間、地道に働いていれば幸せになれるはず・・と思わせてくれるところが楽しかったです。

    音松は、友だちをうちに呼ぶのが好きで(いるよね、そういう人!実は、実家の父もそうだった。)お鈴はそのツマミの誂えに忙しい・・・。お鈴が家の前に七輪を出して魚を焼いたり、煮物をしている場面がよく出てくるのだけど、それがホントに美味しそう。(*^_^*)そして、友人たちも手土産を携えてきたり(来なかったり・汗)、お鈴自身が呑み屋に行かれるよりはずっと安いと、しっかり納得しているんだよね。

    商売のすったもんんだや、悲しい出来事もあったけど、それをなんとか乗り越え、まだ彼らの日々は続いていく。どうぞこのまま、質素ではあっても幸せに暮らしていけますように、と思える好編でした。(*^_^*)

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著者プロフィール

1949年函館生まれ。95年、「幻の声」で第75回オール讀物新人賞を受賞しデビュー。2000年に『深川恋物語』で第21回吉川英治文学新人賞、翌01年には『余寒の雪』で第7回中山義秀文学賞を受賞。江戸の市井人情を細やかに描いて人気を博す。著書に『十日えびす』 『ほら吹き茂平』『高砂』(すべて祥伝社文庫)他多数。15年11月逝去。

「2023年 『おぅねぇすてぃ <新装版>』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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