”核”を求めた日本 被爆国の知られざる真実

  • 光文社
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784334976750

作品紹介・あらすじ

核開発・保有の模索、持ちこみの黙認。非核三原則は骨抜きにされていた。元高官、技術者、学者、そして被爆者たちの多角的視点から、わが国の本当の姿に迫るドキュメンタリー。

感想・レビュー・書評

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  • ”核”というと、まず頭に思い浮かべるのは原子力発電、福島原発のこと。それは2011年3月11日があったから…
    もちろんヒロシマ・ナガサキに原爆投下があったという歴史的知識ももちろん強くある。
    しかし、本書で一番のテーマとされている核拡散防止条約や核の傘など、軍事的核兵器に関する日本の裏事情については、恥ずかしながらほとんど知らなかった。民主党政権になって、この問題を取り上げていたことすらはっきりとは覚えていなかったし。
    唯一の被爆国である日本。その一国民として、今まで無関心に生きてきたことを反省するとともに、国(政治)の動きをもっとしっかり見ていかなければいけないと思った。

    最終章、被爆者の谷口さんの言葉では思わず涙してしまった。忘れてはいけない。一人一人が真摯に向かい合って、考え、意思を持たなければいけない。

  • 「3.11」後、日本の核政策が根本的に問われるなかで、「平和利用」が「軍事利用」と切っても切れない関係にあったことが明らかになってきている。当時話題になった同タイトルのドキュメンタリー番組を見逃したので、書籍版を手に取ってみた。
    1970年にNPT加盟を決める直前の1968~69年にかけて、日本政府が、原発を転用した核武装の可能性について真剣に検討していたこと、日本とならんで核武装の可能性が懸念されていた西ドイツと秘密裏に協議をもっていた事実は報道でも明らかにされた。このエピソードを明かした元外務官僚の村田良平氏によれば、交渉相手のドイツの外交官は「これからは核兵器保有の意味がなくなるように外交関係の基本を変えていかなくてはならない」と語ったという。しかしその後の日本がたどった道とは、アメリカの「核の傘」を求める一方、「核兵器をつくる能力は保持する」という目的を国民から隠したまま原発を増設し続け、「非核三原則」を掲げながら、自ら骨抜きにするというものだった。国連における核関連決議の賛成率がつねにアメリカと歩調をあわせたものであることを示すグラフは、衝撃的なほどに主体性のない日本外交の姿を映し出している。
    取材班メンバーが書いたものだけにリーダビリティは高いし、興味深い事実も知ることができるが、いかんせん分析の広がりと深さに欠ける感じは否めない。専門書で補足し、これは入門書として読むのが正しいかもしれない。

  • 「NHKスペシャル」取材班が、当事者や極秘文書から核をめぐる真実に迫ったものです。
    表沙汰にはされてこなかった新事実に驚かされます。

  •  同名の「NHKスペシャル」を作った取材班がまとめた番組の裏話を集めた本です。あいにく番組を見逃したので,こうして本になってくれてよかったです。
     記者達がどんな思いでインタビューに行ったのか。そんな気持ちがリアルに伝わって来て,さすが文才がある人達だなあと思いました。
     それにしても,「非核三原則」なんて日本国民に向けて言っていただけ…。やはり「政府は嘘をつくもの」と思っていた方がいいんだろうなあ。
     最後の管首相と被爆者の話を読んで,立場が人を変えているうちは,だれも日本を変革なんてできないよな…と思いました。

  • 唯一の被爆国として「核の廃絶を訴える」日本と、安全保障上「米国という核の傘に頼ってきた」日本。この相反する事実を長年日本は放置してきた。本書は、NHKスペシャル取材班の取材手記。取材から2つの重要な事実が判明した。1つは、1960年代後半、「”核を持たなければ一生二流国だ”という危機感から、NPT締結前に日本が西ドイツに極秘接触していた」事実。2つ目は、国連での核廃棄、核縮小に関する採択で日本の過去から現在までの賛成率はたった55%でるという事実。(いずれも、NHKスペシャルで放映された)
    佐藤首相のノーベル賞のスピーチの骨子「日本は核をいつでも作れる技術を持っているが、あえて作らない」この姿勢は、日本内部で核を必要とする声と、核を持てない現状を踏まえて導き出した現実解であろう。また、西ドイツからのメッセージ「核を持たなくても、国際的な発言権を持つ経済力・国力を作るべき」も当時の日本の目指すべき方向を示している。今日本は少なくとも片方を失いかけている。
    NHK取材班の声として「事実を視聴者に伝える」という気持ちは分からなくも無いが、核の犠牲者の方を映した上で、「人道的な正義」と「外交的な正義」を天秤に掛けて視聴者の判断を仰ぐのはそれはあまりにも無責任なのではないだろうか。

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