災害社会学入門 [シリーズ災害と社会 第1巻] (シリーズ災害と社会 1)

制作 : 浦野 正樹  吉井 博明  大矢根 淳  田中 淳 
  • 弘文堂
3.67
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感想 : 3
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784335501012

作品紹介・あらすじ

災害は社会の仕組みを可視化する!阪神・淡路大震災以降、続発するわが国の被災状況と向き合う、実践的な学としての災害社会学。その最新の研究領域を紹介。

感想・レビュー・書評

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  • 災害社会学入門の良書。
    これを読めば災害についての基本的な知識がまとまるはず。
    ただし、外国の事例・研究が多く肝心の日本における事例・研究についての記述が少ないため、「日本災害史」(本棚参照)などと一緒に読むとOK

  • 2007年初版発行の一冊。国内の地震では中越沖地震(2007年)、海外ではスマトラ沖地震(2004年)あたりまでの研究成果を念頭に書かれた一冊。

    個人的には、自分が一定範囲での基礎知識がある地学(特に地震)分野と、隣接分野であり今世紀に入るころから伸びている印象のあった防災社会学の関連を知りたくて知った一冊。

    いくつかの気づきがあった一冊なのだけど、基本的に未知の分野なので気づきは随想的。
    まず、最初の総論の部分で意外だったのは、自分が思っていたより防災社会学の歴史が長く、そしてその研究対象も広い、ということ。日本だと「災害=天災」なんだけど、海外で災害社会学が伸びるきっかけの一つが「戦災」の研究だったりして、その研究対象に第二次世界大戦での日本社会の被災状況なども入っていたりする。

    そしてその歴史の長さゆえに基本理論はかなり前に構築されていて、「災害時に社会的脆弱性が露わになる」なんてのは社会学的には常識中の常識(それは地学におけるプレートテクトニクス並みの常識)で、そこからの回復力(=レジリエンス)とその地域社会の研究、そしてその実践へとスコープが移っている。

    個人的に不思議であり納得でもあったのは、社会学徒の人たちがその”理論”の啓蒙よりもその実践の方に重きを置きがちなこと。「よその研究畑」からすれば「その理論を知らしめた方がみんなに理解されるだろうに」と思う。でも、知っているが故に「それを早く世のために役立てたい」という研究者の気持ちも分からなくもない。

    各論に多くの章を割いており。
    刊行後の東日本大震災、そしてコロナ禍という”今の”事象と照らし合わせると、いろいろと思うところはあった。
    特に、復興の段で取り上げられた「物語復興("まずはどのような街にしたいかという総論を共有することから(p.157)"はじめて各論の議論は後にする復興手法)」は理想的ではあるんだが…3.11の顛末を考えた時には限界を感じた一節ではあった。


    最後に。
    地学と防災社会学の違いとして一番大きいところは「観察対象」にできるかいなか、なんだろうな、とは感じた。
    理系では(最先端の量子力学などをのぞけば)、人が観察することで現象が変わることはない、それが基本。
    でも社会学は見てる方も見られる方も同じ社会に属している。だからこそこの本は最後に”被災地調査におけるラポール(=人間関係の構築)”の重要性を説いている。
    被災地調査を通して、"インフォーマントにとっての調査者との「出会いの喜び」"、すなわち"「還元」がラポール構築の初期段階にすでに含まれている必要がある"(p.258-259)らしい。
    だからこそ「還元」が最初に提示しやすい実践的研究がやりやすい、という部分もあるのかもしれないし、それがある種の「社会実験」でもあるんだとは思う。

    他の理系はさておき、地学の場合「まずは観察・観測。考えるのはデータが出てから」みたいなとこが割とあって。なるほど、これはかなりアプローチの違う学問だ、と感じさせられた。


    社会学系の人からしたら私は「社会学のつまみ食い」的なアプローチで読んでしまった読者の一人なんだろうけど…「それでもいいからつまんでみて」とばかりに文章は読みやすく、章わけも細かいから気が向いたところから気が向いた時間に読める一冊。
    その辺の心づかい含め、社会学の懐の深さを感じさせてくれた一冊でした。

  • 広く基礎知識を得ることができた

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