最後の家族

著者 :
  • 幻冬舎
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本棚登録 : 406
感想 : 72
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344001213

作品紹介・あらすじ

家族について書かれた残酷で幸福な最後の物語。

感想・レビュー・書評

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  • 引きこもりの息子、母、父、妹 それぞれの目線で物語が展開して行く

    後半に出て来る弁護士さんの言葉が心に刺さる
    「女性を救いたいというのは、DVの第一歩」
    「救われたことがない。自分でそうおもっている人は、あなたみたいに、正直になれない」
    「親しい人の自立は、その近くにいる人を救う」

    自分が母なので母の視点で読んでしまうが、昭子が自立した事で秀樹が救われて良かった

    父、秀吉はあまり好きではないが、解雇が決まってから何とか家や学費を残したいと頑張っている姿が可哀想で見ていられない
    早く家族に打ち明けて楽になって欲しいと思う

    子供達が家を出た後の喪失感、凄く良くわかる
    「喪失感は、離れていった大切な人間の記憶を、心のどの場所に仕舞っておくかを決めるために必要」
    と言う言葉が心に残った

    秀吉も会社が順調だったら、知美の大学に行かず結婚もしない相手とイタリアに行くなんて許せなかっただろうと思うし、結果皆んな良い方に進んで良かった
    ただ、カウアイ島への不倫旅行の部分は必要だったかは疑問(笑)

  • これからおれはどうすればいいんだ。
    自分に聞いた。
    答えは明らかだった。
    一人で生きていけるようになることだ。
    それだけが、誰か親しい人を結果的に救うんです。

    引きこもりの長男、秀樹は結局ユキを救えなかったが、弁護士を目指すために専門学校へ。

    智美は近藤とイタリアへ。

    昭子は延江とハワイへ。
    でも離婚したり再婚したりはない。

    秀吉は解雇され、コーヒーの喫茶店へ。

    母が自立していく姿がかっこよかった。

  • なんだか過去に読んだことあるような気がするのだけど,ブクログに書いてなかったのでこの機に。

    お父さんお母さん,引きこもりの20代男子,女子高生の家族それぞれの視点でお話が進んでゆく。

    ヒキー男子だけでなく,お父さんは旧態依然とした終身雇用前提の会社のしくみから。
    おかあさんは家族に奉仕することのみを前提とした専業主婦ライフから。
    女子高生は広く浅い友人関係ととりあえず大学という事なかれ主義から。
    それぞれから自立してそれぞれの道を歩き出すという話です。

    もっと救いようのない話かと思ったら,思いのほかゆるーいハッピーエンドだった。かといって全部が100点の正解ではないんだと思う。でもそれはそれで,それぞれがした選択の上に成り立っているわけで。常識だからとか世間体がとかで流されたんじゃない,自分の意思であり決定が真ん中にあるのが大事なんだろうな。

  • 私は自立ができない。
    わかっていて、苦しくて、あがいてあがいて、それでも毎日はすぎていく。

    「親しい人の自立は、その近くに居る人を救うんです。一人で生きていけるようになること。それだけが、誰か親しい人を結果的に救うんです」
    じわーっと残るなぁ。ほかにも残しておきたい言葉がいっぱい。自分に向き合う本。

  • ある家族の話。
    父 : 秀吉 母 : 昭子 長男 : 秀樹 長女 : 知美 の4人家族。
    引きこもりの秀樹、その秀樹を治そうとする昭子、家族はいつも一緒に食事をするべきだと思っている秀吉、大学進学を控え自分が何がしたいかを悩みながらも家族を見ている知美。
    時系列によって重なりながらそれぞれの視点で物語がすすんでいく。同じ事をそれぞれがその時間を語り継ぐのだが、それぞれの視点や心の動きがそれぞれから同じ時間をなぞるので、家族の葛藤やすれ違いなど、様々な人間模様が浮かび上がってくる。
    家族であり、それぞれを思いやったり不満を持ったりするのだが、それぞれが自立することによってこの家族がそれぞれに旅立っていく。
    結末は読んでいただきたい。

  • They can't make me quit
    対等な人間関係に、救いたいという欲求はない。

    「誰かを救うことで、自分も救われる弊害は大きい。」小説のセリフではなく、著者のあとがきに記されていました。

    自分が救われたいために、誰かを救おうと思ったことはありません。まして、誰かを救えるほど大層な人間ではありません。誰かと繋がっていたいとも思いません。自分が生きていくのに精一杯です。

    でも、生きていくには誰かと繋がっていなくてはなりません。真の自立とは何たるかを考えます。

  • 最後の家族 - bookworm's digest
    http://tacbook.hatenablog.com/entry/2014/09/28/153430

  • 読み始めて辛くて読むのをやめようかと思った。今まで読んだ本の中に、こんな思いをした本があっただろうか。
    家族そろってする食事は一番大事という父、秀吉。家族とは、という父親の理想のの形を強要される家族。
    引きこもりの秀樹、高校卒業後の進路を考える由香、母、父。それぞれが自分の道は自分で決断するようになる。家族でも依存せず自立することが大事。それが1番の幸せであり救いになる。
    小説とはいえハッピーエンドで終わってよかった。

  • 久しぶりに読んだ村上作品。
    とても興味深く、あっという間に読了。

    私は母親なので、母の立場で読んでしまっていたので、ちょっと、最後の昭子には、納得できなかったかも。
    年下の不倫相手?恋人?と、旅行してしまったんだ…という気分だった。
    でも、それが、彼女の自立だったのかも。

    最後は形はバラバラになったけど、以前よりちゃんとした家族になったかのような内山家。
    ある意味のハッピーエンドで良かったです。

  • 人間関係に恐怖を感じる、引きこもりの息子。
    リストラされそうだけど家族に言えない父親。
    家族に内緒で若い男と会っている母親。
    大学進学よりも海外へ行きたい娘。

    家族4人の視点から見る2001年の秋冬。
    言えない気持ちがみんなある。

    -----------------------------------------

    弁護士の先生がかっこよかった。

    救いたいと思うのは、その相手を対等に見ていないということ。
    見下しているということ。
    救うことで自分も救われようとしているということ。
    気づかないうちに、相手に依存しているということ。
    相手を支配したいと思っているということ。
    その気持ちが暴力を生む。

    家にだって外の世界にだって問題があって、生きていくのが辛い。
    だからって誰かに依存していくのは自分のためにも、相手のためにもならない。だからって引きこもってるわけにもいかない。生活にはお金が必要。
    自立こそが親しい相手を救う手段。

    お父さんとお母さんは子どものことも考えなくちゃいけないから大変。
    つらい時期をそれぞれが乗り越える家族の話。

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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