半島を出よ (下)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344007604

感想・レビュー・書評

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  • Phase two 11-2011年4月11日……美しい時間

    ほんとに美しいと思う。

  • 今回の書評は、この作品の核心部について触れているため、これからこの作品を読もうと考えている人には薦められない。すでに、読んだ人や別に読む気のない人以外はあえて触れないほうがいい、と思う。

     ぼくが学生時代に序章だけ書いて放置している
    「ZEAL(ゼアル)」というタイトルの小説のクライマックスで、ぼくの母校で小説の舞台となる福岡大学の、一番シンボリックな建物である「文系センター」を倒壊させるつもりでいた。
     この「文系センター」は16階建で2階から15階までにゼミ棟と称して、教授たちのプライベートルームがあり、最上階には七隈を一望するスカイラウンジが設けられている。当時の福大では比較的ま新しい建物だった。
     そして、1階は4分の3ぐらいが吹き抜けとなっていて、何本かの柱で支えられているように見えたので、その柱を爆発物かなにかで取り除けば簡単に倒壊するんじゃないかなあ、とぼくはそこを通るときいつもそんな想像をしていた。
     だから、教授たちが集うこのシンボリックな建物は、ぼくが生まれるちょうど1年前に起こった東大安田講堂事件のように、大学のシンボリックな建物を血気盛んな過激な学生たちによって、平成のこの時代に破壊して、ぼくの小説が大団円を迎えさせるにはちょうどよかったのである。

     「半島を出よ」を読み終えて、村上龍の創造力が、当たり前だがぼくの規模をはるかに超えていたことに圧倒されると同時に、ぼくが規模は小さいが倒壊しようとしたシンボリックな建造物を、同様に(それもぼくが住む福岡のシンボリックな建物だ)倒壊してくれたことに、すごく親近感と満足感を覚えた。
     村上龍は「半島を出よ」で、福岡ドームとシーホークホテルを朝鮮軍によって占拠させ、福岡及び九州を支配下に置くなどという荒唐無稽なことをさらっとやったと思ったら、クライマックスではそのシーホークホテルを17、8歳の少年たちの手で倒壊させてしまったのである。
     だが、この作品がいわゆる近未来シュミレーションの類でまとめるのは少し違う気がする。村上龍の作品は、これまでどれもとても「いたたまれない」「切ない」ラストで、すごく「もどかしい」感覚に陥るものが多かった。だから、この作品の意外なハッピーエンドに違和感と同時にすごく共感を覚えた。
     「半島を出よ」のラストでシーホークホテルが倒壊するという未曾有のラストを描きながら、結果的にそれによって朝鮮支配から解放され、日本を含む世界のパワーバランスが安定するという皮肉にもポジティブなエピローグでまとめられている。
     さらには福岡が日本という国からの独立採算の道へと進んでいこうとする。それは、朝鮮軍から福岡へというインディペンデントの連鎖にも見える。また、生き残った北朝鮮のふたりはおそらくこれまでよりは幸せに生き続けるのだろう。そして、実行犯の少年たちもイシハラもこれまでとなんら変わりない日常の中で生きていくのだろう。彼らは、どちらも日本で起こったこの事件によって、孤立から独立へ、人間的に昇華したのではないかと考えられなくもない。

     村上龍は「半島を出よ」のあとがきで、「『昭和歌謡大全集』という小説の登場人物の生き残りとその新しい仲間が福岡でテロを計画しているが、それより先に北朝鮮のコマンドが福岡を制圧してしまう・・・」と書き出している。
     少年犯罪などに加担しもしくは自ら実行し、社会から排除されたてきた少年たちが、同じような少年期、青年期を過ごして大人になったイシハラたちのもとに集う中で、国際的に孤立した国の兵士たちによって自分たちの住む場所をまた追い立てられる状況で、その抵抗と解放が結果的に兵士たちの孤立からの解放と、福岡の日本からの解放と、三重の解放をやってのけた、という解釈がぼくにはもっともしっくりくる。

    だから「半島を出よ」は、贖罪の中であえて生きていくことを選んだ人々の物語だ。

     ところで、この作品も映画化がすすんでいるらしいが、日本ではなく韓国で進んでいることにとても期待が持てる。村上龍もあとがきで述懐しているように、この作品には北朝鮮側の視点が不可欠だったと思う。でなければただの勧善懲悪の一方的な話で終わってしまっただろう。だからこそ、この作品を映画化するには朝鮮人の視点が必要になるのは当然であり、韓国人の手で製作されることにとても興味深く感じるのだ。

  • 請求記号:Fムラカ
    資料番号:010866515
    装丁:鈴木成一デザイン室

  • がーーー時間かかった。
    これネタバレなしにどうレビュー書こうか。
    のっとられそうな九州。
    北朝鮮からは十二万の後方部隊も出発する。
    国は相変わらずそんな事態にも関わらず、
    何の作戦も持ち合わせず、傍観するに留まる状態でいた。

  • 村上龍にしか書けない群像劇。

  • 学部ゼミ読書会1月用に読んだ本。
    最初は何だかカタカナ名前が多かったり、難しかったり、読みづらくて読む気にもならなかったが、どんどん勢いに飲まれていった。
    経済状況が悪化した日本の状況が、もしかしたらコウなるかも知れないと思ってしまい、怖かった。
    イシハラの奇妙さが笑えたりしつつ、思ったより下巻にすぐ進みたくなった。
    そして、2009年にアメリカがアジアを歴訪した際に、韓国と中国には宿泊したが、日本には数時間の滞在だった、という描写に、この人はよく分析している、と驚いた。

  • 読むことを止められなかった。それぞれの登場人物の思いや立場が繊細に描写されていると思う。また、どこかユニークな印象もあり、最後にはニヤリとしてしまった。読み終わって、やっと肩の荷がおりたような気分だ。しかし、北朝鮮の人々の名前は中々覚えられなかった。

  • 身の毛がよだつような恐ろしさを感じてしまいました☆
    何がコワイって、この小説の中の日本の状態です。
    アメリカ$の暴落の後、日本円が下落。
    国債も株もみんな暴落して大ピンチ。
    アメリカが少しは助けてくれるかと思いきや
    反対にひどい仕打ちを受けてしまう。
    当然失業率も過去最高を記録してしまう。
    現実の日本もこんな風になったらどうしよう!
    なんて思っちゃったりして。

    詳しい感想は↓
    ゆるり気ままな主婦の日記・半島を出よ
    http://housewife-diary.wonderful-shop.whitesnow.jp/?eid=146

  • すごくハラハラして、続きが気になってしょうがない!
    一字たりとも、目が離せない。

  • おもしろかった
    北朝鮮兵士と少年ホームレス集団との戦い…
    武器の説明は読んでても実物知らないしあまり想像できなくてその辺はほとんど読み飛ばしてしまいましたけど…

    09'11'16

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著者プロフィール

一九五二年、長崎県佐世保市生まれ。 武蔵野美術大学中退。大学在学中の七六年に「限りなく透明に近いブルー」で群像新人文学賞、芥川賞を受賞。八一年に『コインロッカー・ベイビーズ』で野間文芸新人賞、九八年に『イン ザ・ミソスープ』で読売文学賞、二〇〇〇年に『共生虫』で谷崎潤一郎賞、〇五年に『半島を出よ』で野間文芸賞、毎日出版文化賞を受賞。経済トーク番組「カンブリア宮殿」(テレビ東京)のインタビュアーもつとめる。

「2020年 『すべての男は消耗品である。 最終巻』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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