黄金の王白銀の王

著者 :
  • 幻冬舎
4.05
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本棚登録 : 411
感想 : 114
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344013988

感想・レビュー・書評

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  • 対立する二人の若き王が、宿命を背負いながら、それぞれの信じる道を進んでいく。
    悲しすぎた。

  • 萌え(燃え)死ぬかと思った!!
    とにかく、すばらしい、男二人の関係性を克明に描き出した、人間ドラマである。
    この舞台となっている国では、2つの血筋の王家が殺し合いを続けていて、戦闘による王位奪取という形でほぼ、一世代ごとに王家が交代していく。
    交代のときにはほぼ負けた方の王家は皆殺しに近いひどい扱いをうける。
    そして、主人公二人は、この2つの王家の直系の当主通し。例によって一人は王座に即き、もう一人は父の代にその座を追われ幽閉生活を送っていた。
    互いに、自身の肉親を、もう一つの王家の血筋に殺されており、本人にとっても不倶戴天の敵。
    さらに親や周囲からも敵愾心を語られ、というか、それぞれの血筋はもはや、もう一つの血筋を滅ぼすことを、存在意義とさえしている段階にきている。

    さて、そんな憎み合い殺し合うことが生まれ持っての運命であるこの両者が、この関係を乗り越えるため、何よりも「国を守るため」に手を取り合うことから話は始まる。
    この両家の争いは何よりも国そのものを衰弱させていると気づいたからである。

    そして、現在王となっている櫓(ひづち)の妹を、幽閉中の薫衣(くのえ)が娶り、義兄弟なって盟友関係を(水面下で)結び、事態は動き出す。

    しかしここからが、単純ではない。
    まずこの二人以外の、それぞれの族の人々は殺し合うことが存在意義とさえ思っているのだから、味方からとにかく攻撃される。
    さらには、お互いの中にも相手を殺したいという気持ちが、その幼少からの環境によって、育っている。
    で、もう一つ決定的な燃えポイントなのだが、全くの個人としてこの両者が、お互いプライドをかけて相手にだけは負けたくないと思っているところである。両者とも常人の域をはるかに抜けて優秀なのだが、互いに自分には無い長所を見て嫉妬する。で、劣等感に駆られるたびに瞬間的に、殺してしまいたいと思ってしまうのである。

    まさに、白刃をのど元に突き付けあうような関係。しかし国を守るという目標を共有できるただ一人の相手。
    まさに行き詰まる関係である。


    さて、ここまで書くと関係性的にはほぼBLなのだが、この話が単なるBLにとどまらないところは二人の関係のみに世界が終始せず、世界は着実に周囲にも広がり、周囲の人々がこの二人の関係を決定的に動かすところにある。しかも女性が。
    二人とも薫衣の妻となる女性なのだが、このうち櫓の妹の存在は良かった。最後の最後で、この人がすべてに救いを与えるということは、本当にこの物語にやさしさを与えている。
    (たぶん、こういうストーリーを書けるということはこの著者は女性なのではないかと思う)

    純粋に権謀術数のうずまく、三国志みたいな作品としても読めるほど、政治の話のあたりは精緻に、冷酷に描かれているし、甘いところはない。サラリーマンでも、ぐっときながら読めるだろう。

    まあ、甘いところをつけば、この二人が関係を築ける前提条件となっているところが、強力な外敵が突如として現れたという歴史状況というところである。
    なんというか、そりゃ外敵が現れたら内部的にはまとまらざるをえないよなという気もするから、ちょっと甘いなと。
    まあ何より、国家を存続させる必要条件は外敵、仮想敵国の存在であるとはよくいったものである。
    その点ちょっと甘い部分をのぞけば、とても良くできた話であるし、なによりもときめきます。

  • 憎しみ殺し合う二つの王家が憎しみを乗り越えて一つになっていく話。これを読んでいると、リーダー(頭領)とはこんなにつらいものなのかと改めて思い知る。みちびく者という形で、リーダーの有り様を語っているが、その内容は途方もないほど重い。リーダーは孤独だというけれど、そんな言葉では顕しきれない、そんな責務をこの本で学んだ。

  • コテコテのファンタジー。
    永きにわたり戦い続けてきた二つの一族、鳳穐と旺
    厦。この争いに終止符をうつべ穭と薫衣は茨の道を歩むことになる。荷積の存在は大きい。素敵な女性だ。
    こういう世界観は大好き!!

  • ヒヅチと薫衣(クノエ)の2人の王が世の中を変えようとする話
    ノブレスオブリージュがかくあるべきかを示してくれる。
    自分たちではなく、次の世がより豊かであるようにというマクロ的視点から結託した2人が細やかな人間関係というミクロ的視点から描かれる。
    薫衣が辛酸を舐めたと思われる半生なのにあまり辛そうに書かれていないのは、ヒヅチと荷積(にお)の2人の兄妹に支えてもらった部分が大きい。王の妹としての強い覚悟を持つにも関わらず政に携らなかったために政の知識がない荷積だからこそ、薫衣のノブレスオブリージュの覚悟の理解者でありつつ政の喧騒を忘れさせてくれた存在だと思う。だから最終的に深く慕い合って癒され、自負を守りながらも覚悟を持ち続けられた。
    そしてヒヅチからの理解が何よりも折れずに覚悟を持ち続けられた要因だと思う。ヒヅチは上に立つ者としての細やかな気遣いがきっと誰よりも上手い。結託して初めに伝えた言葉が「皆の前では本意ではない振る舞いをする、薫衣の前で伝える言葉が本心だ」というのが何よりも気遣い上手を表しているし、その後も2人の時は対等であるようにと命令形と捉えられる物言いをしない、丁寧な言葉遣いをする、薫衣の不遜な態度も日頃のストレスだから仕方ないと受け流す、挙げればキリがない程に気を遣い続けてきたから薫衣も最後まで折れずに覚悟を突き通すことができたし、謀反のチャンスをマクロ的視点から退ける選択肢を選べた。上に立つというのはこういうしがらみに気を回せてこそ。争乱の世ではいい為政者になれなかった気がするけれど、そういった気遣いは平定し続いていく世の中を発展させる技倆として第一に挙げられると思う。
    墓所での2人の会話の「先祖を否定しているように聞こえる」「なにを聞いていた。初めからそう言っている」が衝撃的で好き
    ラストの薫衣が死んだところがよく分からない。生きることに疲れた?頭領ではなくなったから?それとも最後まで頭領として生きる為に死んだ?矜持の問題?考察の余地あり

  • 飛ばしながらだけど、読了。
    大局を見定め、その生を責とともに果たそうとすることの困難さを感じた。
    葛藤の本。

  • 国を守るため、二人の王はもっとも困難な道を選んだ

    さらっと読むつもりだったのに、読み出したら胸が苦しく、最後は涙目だった。
    互いに憎み、殺し合いを繰り返してきた二つの一族の頭領が、成すべきことを成すべく、二人だけで困難な未来に向けて耐え、乗り越えて行く展開は、必ず読み手を熱くさせる。
    この話はファンタジーだが、現実にも歴史の流れで憎み合う宗派や国がある。先のことを考えず、目の前の仇を討つことは、本当に国を、民を導く者の成すことではない。憎み、憎まれの連鎖を断ち切るには、大変な困難を伴うことではあるが、未来の、後世のために、目を背けてはならないのだと考えさせられた。

  • ブクログをきっかけに手に取り、一気によんでしまいました。何だか、中高生の夏休みに読みたかった本だと感じました。

  •  胃が痛くなるような話だった。綱渡りを渡り終えられるのか、綱が切れてしまうのか、後ろから落とされてしまうのか。読んでてしんどかった。これだけの話をよくこの長さにまとめたと思うけど、これでもっと長かったらとてもしんどくてつらかった。

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著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常生活のひだを的

「2013年 『ヤンのいた島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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