黄金の王白銀の王

著者 :
  • 幻冬舎
4.05
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本棚登録 : 411
感想 : 114
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  • Amazon.co.jp ・本 (410ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344013988

感想・レビュー・書評

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  • 国を一つに統べるということの難しさを考えさせられる。骨の髄までしみこんだ反発心は、簡単には消せない。固有名詞に難解漢字を使いすぎなのがネックだが、それをこらえて読むべき一冊。

  • 架空歴史ファンタジィなんだろうが、魔法や奇妙な生き物といった非現実的なものは出てこないし、どちらかといえば地味な展開をたどる。しかし主人公たちが置かれている状況は相当ハードだ。

    元は同じ王の血を引く不倶戴天の敵同士の部族―作中では片方が支配者となり、もう片方が苛烈な弾圧を受けている―の頭領同士が主人公。ある意味では彼ら自身が非現実的。少なくとも彼らが30年にわたって成そうとしたことは非現実的なほどの難事だ。つまり、互いにときに虐げ、ときに虐げられて憎悪しさらに虐げる負の連鎖を徐々に止めていくこと。そのために王は周囲の「殺せ」、あるいは父祖から託された「殺さなければならない」という圧迫、さらには自分の「殺したい」という感情を抑え、敵方の部族を守り地位を引き上げようと繊細微妙な綱渡りを自ら選ぶし、かたや隷従させられている側の頭領は己の部族を守るために敵である王のもとにとどまり、己が名を捨て彼と親族になり、敵からの侮蔑と不信を一身に浴びる日々に耐え続ける。この国で尊ばれている「迪学(ジャクガク)」が導くところの美徳は、私利に走ることは恥ずべきことであり、大局にたって成すべきことを成すというもので、彼ら頭領たちの行動原理もこれにもとずいているわけだが、これがいかに苛烈な試練となりうるか、を30年の歴史の中で描き続ける。読み応え十分。こういうのとても好み。でも難読な人名・地名で読者を減らしてる気がする。

  • 理想を実現するのは本当に難しく、他者からの誤解や非難を甘んじて受けなければならない時がある。なすべきことがはっきりしていて、行動を起こせるのならまだしも、行動を「起こさない」という判断を下すには揺るがない信念と勇気が必要なのだなと思った。みちびく者のあるべき姿を描いている、そんな作品。本物の勇気とは何か、誇りとは何かを考えさせる珠玉の名作だと思う。

  • 読書完了日2008年12月03日。

  • なんか哲学のようなものを感じた。
    小難しいものではなく人としてどう生きるか、みたいな。
    読みやすく心が洗われる物語でした。

  • (途中で止めた)

  • あ、幻冬舎なのか!!笑
    この本、なんっか好きやったーwマンガ化とか、しやすそう。
    薫衣の、強さにおどろき。ただ、みんな名前が難しいんだなーーーー。

  • 2008/07/24読書開始
    おもしろすぎて死にそうだ。この本すごい。

    2008/8/10読了
    萌え(燃え)死ぬかと思った!!
    すばらしい筆致でもって、男二人の関係性を克明に描き出した、人間ドラマである。
    この舞台となっている国では、2つの血筋の王家が殺し合いを続けていて、戦闘による王位奪取という形でほぼ、一世代ごとに王家が交代していく。
    交代のときには負けた方の王家は皆殺しに近い凄惨な扱いをうける。
    そして、主人公二人は、この2つの王家の直系の当主どおし。例によって一人は王座に即き、もう一人は父の代にその座を追われ幽閉生活を送っていた。
    互いに、自身の肉親をもう一つの王家の血筋に殺されており、本人にとっても不倶戴天の敵。
    さらに親や周囲からも敵愾心を語られ、というか、それぞれの血筋はもはや、もう一つの血筋を滅ぼすことを、存在意義とさえしている段階にきている。

    さて、そんな憎み合い殺し合うことが生まれ持っての運命であるこの両者が、この関係を乗り越えるため、何よりも「国を守るため」に手を取り合うことから話は始まる。
    この両家の争いは、何よりも国そのものを衰弱させていることに現在の王、櫓(ひづち)は気づいたからである。

    現王、櫓(ひづち)の妹を、幽閉中の薫衣(くのえ)が娶り、義兄弟なって盟友関係を(水面下で)結び、事態は動き出す。

    しかしここからが、単純ではない。
    まずこの二人以外の、それぞれの族の人々は殺し合うことが存在意義とさえ思っているのだから、味方ともいえる同族からとにかく攻撃される。曰く、さっさと相手を殺してしまえ。どうして反乱しないのかと。
    さらには、お互いの中にも相手を殺したいという気持ちが、その幼少からの環境によって、育っている。

    で、もう一つ決定的な燃えポイントなのだが、全くの個人としてこの両者が、お互いプライドをかけて相手にだけは負けたくないと思っているところである。両者とも常人の域をはるかに抜けて優秀なのだが、互いに自分には無い長所を見て嫉妬する。で、劣等感に駆られるたびに瞬間的に、殺してしまいたいと思ってしまうのである。

    まさに、白刃をのど元に突き付けあうような関係。しかし国を守るという目標を共有できるただ一人の相手。
    まさに行き詰まる関係である。


    さて、ここまで書くと関係性的にどこのBL?なのだが、この話がどこにとどまらないところは二人の関係のみに世界が終始せず、世界は着実に周囲にも広がり、周囲の人々がこの二人の関係を決定的に動かすところにある。しかも女性が。

    二人とも薫衣の妻となる女性なのだが、このうち櫓の妹の存在は良かった。
    基本的に、櫓も薫衣も長になる人物として徹底的に利他的であるよう教育されており、自分の感情は抑えるものと思っている。
    現王の妹である彼女もそうなのだが、最後の最後で、この人が、自身の感情を思いのままに爆発させることですべてに救いを与えるのだ。彼女の存在とこの場面は、本当にこの物語にやさしさを与えている。(たぶん、こういうストーリーを書けるということはこの著者は女性なのではないかと思う)

    純粋に権謀術数のうずまく、三国志みたいな作品としても読めるほど、政治の話のあたりは精緻に、冷酷に描かれているし、甘いところはない。サラリーマンでも、ぐっときながら読めるだろう。

    まあ、甘いところをつけば、この二人が関係を築ける前提条件となっているところが、強力な外敵が突如として現れたという歴史状況というところである。
    なんというか、そりゃ外敵が現れたら内部的にはまとまらざるをえないよなという気もするから、ちょっと甘いなと。
    国家を存続させる必要条件は外敵、仮想敵国の存在であるとはよくいったものである。
    その点ちょっと甘い部分をのぞけば、とても良くできた話であるし、なによりも自己を犠牲にする男の姿に燃えられる良い話である。

  • ミャンマーのtopの人あたりに読んで反省してもらうといいかもしれないね

  • ○2008/05/01 
    可愛い表紙に反して?架空の国が舞台ということで地名、そして特に名前の漢字が難しく、ごついイメージだった。でもそれなのによくカタカナ語が出てくるなぁ、とちょっとギャップも感じたけど。
    最初は名前が覚えられないってこともあって入れなかったけど、真ん中くらいまでで名前を飛ばしてもなんとなく分かるようになって、それ以降は特に苦もなく読めた。主人公2人はちゃんと覚えたけど。
    ストーリーは戦国時代っぽく攻めや守れや血筋だと重かったりややこしかったりしたけど、とにかく穭(ひづち)と薫衣(くのえ)がすごい。成長していく過程といい、はじめから持ってる子ども離れした資質といい、2人が特に魅力的だった。
    時代、地域関係なく、上に立つ人が考えなければならないことってすごく重くて重要だ。

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著者プロフィール

1963年広島県生まれ。鳥取大学農学部卒業。91年に日本ファンタジーノベル大賞に応募した『リフレイン』が最終候補となり、作家デビュー。98年、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞。骨太な人間ドラマで魅せるファンタジーや、日常生活のひだを的

「2013年 『ヤンのいた島』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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