往復書簡

著者 :
  • 幻冬舎
3.52
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本棚登録 : 4306
感想 : 669
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344018839

感想・レビュー・書評

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  • やはり短編は苦手だ。急に話が落とされるのが苦手なのか、肝心の部分は読者に任せる感じが苦手なのか。
    けれど、どの作品もとても勉強になった。

  • 『告白』で、これ以上ないというくらい秀逸なタイトルを冠した各章の構成の見事さ、
    心理の最深部にまで踏み込んで抉り出すような冴えた筆致に目を瞠ったけれど
    私の脆弱な精神ではついていけないなぁと思ってしまった湊かなえさん。

    この『往復書簡』は他の作品に較べると、心温まるエピソードも救いもあるとの評判に
    「今度こそ好きになれるかも?!」と勇気を振り絞って挑戦したのですが。。。

    どうしてどうして。
    遠くも近くもない絶妙な距離から、人間を残酷なまでに観察する視線も
    登場人物のなにげないひと言からじわじわ滲み出る毒も
    語られるエピソードが一見優しげに見えるだけに、かえって深々と胸を刺します。

    1篇めの『十年後の卒業文集』では、
    「文章の上手さに定評のある湊さんなのに、どうしちゃったの?」と
    どうしようもなくざわざわした違和感を抱かせる、
    冒頭での「~わね」・「~なの」・「~かしら」連発の、
    昭和初期を思わせるような不自然な文体こそが謎解きの要となっていたり

    「楽しい青春時代でしたね」というありきたりなひと言で、
    冷え冷えとした余韻を生んでしまうあたりに凄味を感じたけれど

    2篇めの『二十年後の宿題』では、
    次々明かされる残酷な真実にクラクラしながらも、最後の手紙にほっとして
    「大場くん、梨恵さんと結ばれたのね、よかったよかった」と思った次の瞬間
    「え?これって。。。大場くんの文章じゃないし!」と愕然とし、
    気を抜いた分、冷水(しかも真水ではなく泥水)を浴びせられた気分になって

    3篇めの『十五年後の補習』では
    主人公のふたりにとっては愛に満ちていて美しいけれど
    時効では拭いきれない罪を抱えた結末が、どうにも割り切れなくて

    湊かなえさんは凄くて、達者で、素晴らしいけどやっぱり、
    「同じクラスにいても、きっと友達にはなれないクラスメイト」
    のような作家さんなのよ、と自分に言い聞かせるのでした。

  • 手紙のやり取りを読みながら、過去の事件を客観的に想像していく、変わった作りのミステリー。

    相変わらず頭を使わせてくれる。
    面白く読めました。

  • 告白以来の湊かなえ。
    (告白も読んだかな?)

    3部作でそれぞれ独立。
    ①放送部の昔の友人と事故について
    ②恩師からの以来で6人の教え子と事故について
    ③中学時代からの恋人と昔の事故について
    全て往復手紙での描写のみ。
    こう書くと全て昔の事件について明らかになっていく中でミスリードというかどんでん返しがある。
    その中でも私はやっぱり恋愛に絡めたミステリーが好きだったから③が印象深いかな。
    何回もどんでん返しがあって、愛を感じるのだけど、最後なんもお咎めなしとはならないのかなって。
    それぞれが短いってのもあって、読み進めていくとハマるね。

  • 手紙のやり取りだけで充分楽しめた。
    読み進めていくうちに真実が浮かんできたり、最後どんでん返しがあったりと、あっという間に読了。

  • つまらなくはないけど展開に特別大きな波がなかったかなあ。

  • 語る人によって見方はこれほど変わるのだということが、手紙を通して伝わってきました。みんなで笑い転げたという記憶は、別の人にとっては疎外感を感じる記憶であったり、自分がとても気に病んでいたことは、相手にとってはなんてことなかったり。第三者として読んでいると、自分の持っている価値観や思い込みによって物事を判断することがいかに曖昧で、歪みが生じているかがよく分かりました。気にすることないよ♪と言った感じの本はたくさんあると思いますが、また違った角度からその思い込みを説明されたように思いました。

  •  図書館より
     手紙のやり取りから徐々に過去に起こった事件の真相が明かされていく趣向の短編が三編収録されています。

     自分のことから書くと手紙を書いた経験は数回くらいしかありません。手紙以前に文字を書くことが嫌いという体たらくぷりです(苦笑)論述の試験でも「文字を書かすなよ、キーボードを打たせてくれよ」と思ってしまいます(笑)

     理由としては手が疲れる、字が汚い、時間がかかる、といろいろありますが、何より大きいのは書き直すのが面倒、ということがあります。論述試験の途中で論理がおかしいことに気が付いたときの絶望といったら……。序盤なら消して書き直すことも可能ですが、後半だとそのままつっきってしまうことが多いです。消した後の文字がうっすら残っているのもなんだか気に入らないですし……。で、そのたびに思うのが手書きで何か書くときは思いつきで書くと後が大変になるかもしれない、ということです。

     ここで話は戻ってこの本の形式についてです。この本の手紙のやり取りを読んだとき、この手紙たちは書き直した後の残っていない綺麗な手紙たちが自然と想像できました。

     それがなぜなのか考えてみると、登場人物たちが手紙の内容について、思い付きなどでなく、真剣に向き合って書いたということが伝わってきたからだと自分は思います。

     手紙は手間がかかる分、いろいろな思いも文字の上に乗っかるような気がします。三編すべてある事件に対しての新たな考察が加えられるわけですが、対面では話せない、話にくいことではあるし、かと言ってメールでは手紙のような思いを支え切れないように思います。そういう意味ではこの手紙で過去の事件の真相が明らかになるという趣向は、新しくもありながら、ある意味では書かれるべくして書かれた作品だったのかもしれません。そして真相が明らかになった時、手紙を書いていた人の真の思いがようやく読者の前に表れてきます。これを知った時、こういう伝えたい思い、真剣な思いがあったから、この手紙は書き直しのない、きれいな手紙で脳内に再生されたのだなと納得できました。

     内容としては湊作品らしいひやりとした人間の見方が描かれるところもあるのですが、それ以上に温かさに包まれるものも多くて読後感はいいものが多かったです。『告白』のような悪意の突っ切った作品も湊さんの味だと思いますが、温かい作風も決して苦手ではないのだなあ、ということが分かりました。

     このような作品レビューも公表することを前提で、手書きで書くとするとまた違った内容になるのかもしれないとも思いました。別にこのレビューを真剣に書いてないというわけでもないですけど(笑)

  • 途中で止められなくなり、一気読み。
    読後感は、もやもやと爽やかがmix。
    救われなさそうで救いのある終わりでよかった★
    湊さんの話はやっぱり面白いっっっ!

  • ここのところ少しハードな作品を読んでいたので、その息抜きにと思って読みました。湊かなえさんらしい無難な作品といって良いと思います。
    個人的に雰囲気が一番好きなのは、はじめの作品です。が、3作ともなんとなく(とくに1作目)先が読めてしまい、オチがわかってしまうのが少し残念でした。ただ、私が湊さんの作品を読むと、あまりに登場人物が多く、伏線も複雑で、混乱してしまうこともしばしばあるので(笑)、比較的登場人物が少ないこの作品は読みやすかったと感じました。
    しばらく、湊さんを読んでみることにします。

著者プロフィール

1973年広島県生まれ。2007年『聖職者』で「小説推理新人賞」を受賞。翌年、同作を収録した『告白』でデビューする。2012年『望郷、海の星』(『望郷』に収録)で、「日本推理作家協会賞」短編部門を受賞する。主な著書は、『ユートピア』『贖罪』『Nのために』『母性』『落日』『カケラ』等。23年、デビュー15周年書き下ろし作『人間標本』を発表する。

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