作品紹介・あらすじ
有名スポーツ選手のマネジメントを手がけ、敏腕女性経営者として知られる著者は、仕事で訪れた児童養護施設で、拗ねた目をした男の子・ナオミチに出会った。やがてナオミチは著者に心を開き、著者はナオミチを家族に迎え入れようとする。しかし二人は引き裂かれ、ナオミチは行方不明に-。十年間「会いたい」と思い続け、やっと捜し出したナオミチは、背の高い青年になっていた。そして再会の二ヵ月後には、永遠の別れが待っていた。
感想・レビュー・書評
絞り込み
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「早く家に帰って まず家族を大事にして下さい。」
世界平和のために何ができるかについて語ったマザーテレサの言葉を思い出した。
望まれずに生まれてくる赤ちゃんのために、その命を救う施設や行政の仕組みがある。
命を救うことは、大切な事だ。だけど、大切な命を救っても、その命が誰からも愛されていると感じられないまま、誰かに必要とされていると感じられないまま、生きねばならないことが、どんなに残酷な人生をもたらすかを、この本は切実に示している。
命を助けるだけではすまない。
命を助けるということは、命の行く末に責任を持つということだ。
本に登場する普通の身の上の普通の大人たちは、みんな捨てられそうな命を救おうと、少しでも助けようと、ひとりひとりが自分にできることを精いっぱい、時には過剰なほどやったに違いない。
だけど、その命は、結局は救われなかった。
なぜか。
自分のすべてを投げ打ってでも、そのありのままの命を無償で受け止めようとする存在がなければ、やはり、その命は救われないのだ。
社会福祉として、ボランティアに携わることも大切だと思う。でも、まず自分の周りにあふれる身近な命を、自分は救えているのだろうか、大事にできているだろうかと、問い直したくなる本だった。
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図書館にて借りてきました。
とても悲しい内容だけど、実話モノは避けずに読むようにしている。
知っておかないといけない気がして。
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「暴力をうけたほうは、一生わすれないんだ。暴力はすべてを奪うんだ」
文中の言葉です。
この言葉がすべてを語ってくれていると感じました。
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違う環境で育っていたら・・・、そう思うととてもやりきれない。
ナオ君のことを私も忘れない。
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少年ナオが踏み切りに消えた衝撃的なシーンから始まる。
実話の為、描写がとても生々しい。
物語は著者の女性と少年ナオとの出会いから、蜜月期間のエピソード、別れ、10年後の再会を経て、最初の衝撃的シーンへとつながる。
あらすじから悲劇である旨が書いているので覚悟して読んだが、読後はずっしりと重たい気持ちになった。
ナオの生い立ち、望まれない出生の子供の現実、施設とはどんなものか、ホストファミリーや養子縁組の話なども書いてあり、とても勉強になる。
ナオは平成生まれ。
決して昔の話ではない、今現在のお話。
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とても良い本に出会うことができました。心からそう想いました。
どんな形であれ人として生まれてきた命の尊厳、弱者を守る心の寛容さ、組織としてのコミニティではなく人のつながりとしてのコミニティの重要さ、セーフティネットの必要性と色々なことが物語の中で勉強になりました。オガちゃんの痛みを知る人こそ持てる真の優しさ、著者”次原悦子氏”(アンティ)の全力の魂の問いかけ・・事実で綴られた物語を読みながら私は普通に生まれ育ち良かったと他人事のように想っている自分がとても恥ずかしくなりました。今年始め”伊達直人”現象が全国で起こりとても良いことだと想いましたが、今も孤児たちが必要としいるのは物質的な義援以上に心の支援だと感じます。私にもできることが有れば・・・
読後感=”踏み切りに消えたナオ” 出来る限り多くの方に読まれますように・・・・
次原悦子の作品