ここは退屈迎えに来て

著者 :
  • 幻冬舎
3.59
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本棚登録 : 2000
感想 : 277
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344022324

作品紹介・あらすじ

地方都市に生まれた女の子たちが、ため息と希望を落とした8つの物語。
フレッシュな感性と技が冴えわたるデビュー作は、
「R-18文学賞」読者賞受賞作「十六歳はセックスの齢」を含む連作小説集。

感想・レビュー・書評

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  • 短編集。すらすら読める。
    登場する人物たちは日常に退屈している。地方に住んでいるからだと思い都会に行ってみるが結局戻ってきたり。椎名くんが印象的。

  • 地方都市に住む人間の描き方が最高。“非リア充”だからこそ退屈な田舎を出て都会へ行くことを求める という解説があって、なるほどなぁと思う。求めてるものが明確にあるわけじゃなく、退屈だから、今のままでは納得いかないから、自分がありのままでいられる、生まれ変われる世界を求めて、都会に憧れる気持ち。そういうのって、たしかにあるよなぁ。

  • 地方都市を舞台にした連作短編集。ありがちな田舎賛美ではなく、また都会への憧れを書いただけの小説ではない。ロードサイド文化に馴染めない、地元で浮いている人物たちの都会への憧憬や挫折が色濃く詰まっている。田舎に対する鬱屈を抱えたまま地元に残り続ける人間は少数派であり、異端だ。そういった考えを一度でも抱いたことのある人間には痛いほど刺さる小説だろう。全ての短編には共通して出てくる人物がいるが、かつての憧れの人物が地方都市のレールに乗って徐々に変容していく様はリアルかつ恐ろしいものを感じる。同時に、田舎特有の世界の狭さを端的に表した上手い設定だった。非常にゾワゾワとした怖さを感じる反面、よくぞ書いてくれたといったような戦友に出会った気にさせられる小説。


  • 東京、二十歳。と 君がどこにも行けないのは車持ってないから
    が好きだった
    地方ガールはつらい 切ない
    ここで楽しくやってたら最初からどこにも行ってねーよバーカ
    椎名みたいな人はあんまり好きじゃないなとぼんやり思う

  • 初読

    タイトル通り、地方の、生活するには充分な、
    スタバもダイソーもニトリもTSUTAYAもある、
    でもじゃあここに無いものって?
    この退屈って、いわゆる閉塞感って一体何?っていう。

    中高生の時のキラキラしてた男子であった椎名くん自身は描かれていない。

    「地方都市のタラ・リピンスキー」と
    「君がどこにも行けないのは車持ってないから」
    が好きかな

    東京、二十歳。
    を読むと、同じ上京したての時でも
    「単館映画にもこんなに人がいる!さすが東京!
    そして私はやはり東京に向いている!イエー!たのしー!」
    だった私は能天気だったんだなぁ、と苦笑する。

  • 地方都市に住む10-20代の女子達の連作短編集。
    登場する女子たちのこじれっぷりが、とっても魅力的。
    そんな彼女たちの共通点は、椎名とのつながり。
    小学生の時から人気者、みんなの中心にいた椎名。高校を卒業した途端に普通の人になってしまい、今ではいいお父さん。
    各時代の椎名と、彼女たち。『ここは退屈』と思いながら、実は平和で幸せな時を過ごしていたんだなと、きっと思い返す日が来るのだろうな、と思います。

    さら~っと読んでしまったけれど、深かったです。
    もう一度読んでみたいと、終わった今、改めて思っています。

  • 単純に面白かった。
    R-18文学賞絡み(官能系)とは切り離して読んだ方がイイでしょう。
    自分は、ピース又吉「友達から同級生のその後を、聞いているような哀愁」という帯に惹かれて購入。
    中身は全八編からなる連作短編集。それぞれ異なる主人公による、陰の主人公、椎名一樹に絡んだエピソード達。それらが時系列を遡るように並べられています。
    インターネットの普及により、地方と都会の温度差は以前よりも小さくはなっているものの、地方の人間の、都会への憧れ、劣等感。地方の沈滞、閉塞感。地域ごとに細部は異なれど、大同小異。どの地方にいても、共感出来る部分はあるだろう。かくいう自分も、括り的にはUターン(都落ち)組。
    文章はネット世代特有の表現があったりと、全体的にサラッと軽い。また、その時代、時代の小ネタもなかなか効いている。
    個人的には、「アメリカ人とリセエンヌ」が一番好きかな。特にラストは二通りの捉え方出来るのよね。他に「地方都市のタラ・リビンスキー」はありがちなオチではあるが……。この3編目「地方都市の……」で前半の勢いから少しシフト。シフト後の方が自分は好み。
    さて、「友達から同級生の……」というのは少し共感出来たが、「哀愁」……はどぅかな。どのエピソードも「哀愁」というには甘酸っぱ過ぎんじゃない。
    コレも、オーヴァー40のオッサンに薦められる1冊ではないな。アラサー女子のオヤツ感覚の読書には、イイかも。

  • これ好きな人は『ヤング≒アダルト』って映画も好きだと思うし、『ヤング≒アダルト』好きな人は、これ気に入るのではないかと。。。

  • 2012年発行

    同世代の作家さんなので時代背景が手に取るようにわかる。最新作も気になるけれど
    これから一冊一冊出版された順に読んでいきたい。

    椎名くんが結節点となって独立した章が展開。

    地方の窮屈さや現状に満足できない自分から
    どう逃げ出して次のステージにいくか。。

    ティーンの頃から結婚するまで
    誰しもが抱える問題が明るく切実に描写されていた。

    そんな女子の葛藤や奮闘を背に
    椎名くんは彼なりにいろいろあったのかもしれないけど
    するりと地元で幸せを手に入れたようでその対比も面白かった。

  • 山内マリコさん初読み。
    田舎の描写の解像度がやけに高いなと思ったら、地元が同じだった。びっくり。
    そりゃリアルなわけだ。
    10代も20代も30代もそれぞれに不安定で、どうしようもなくて、愛おしかった。

  • まるで自分の学生時代を見ているようだ。
    田舎特有のまったりした空気感がひしひしと伝わってくる。(きつかったなー、あの頃)

    田舎が嫌で嫌で仕方なく地元を飛び出し、都内に出て、やっと自分は窮屈な場所から抜け出したと思った。
    「東京、二十歳」の朝子の気持ちは本当に良くわかる。
    「ここはわたしの居場所じゃないの」、本気で親に訴えていた。笑
    その結果、実際、彼女と同じ年齢で都内に出てきたな、私。
    朝子って私そのものだわ。

    都内に出て20年以上経った今、感じる事。
    誰かが迎えに来るかどうかは、運次第。
    誰も迎えに来ないなら、自分が自ら外に飛び出した方が方がいい。
    理想の王子様は待っていても来ない(ほとんど)。
    だったら、自分が王子になった方が早い。王子になった暁には自由の勝ち取れるおまけもついてくる。
    誰かに身をゆだねるより、自分で目的に向かって行動した方が自由度高い分、人生面白いと思います。

  • 何なのだ?
    なんだか楽しくない気分になる。
    どんよりとしたさびれた地方の退屈な空気に包まれる。
    別に妥協しなくても、惰性で生きなくても、地方に暮らしても青空は頭上に広がり、幸福を声高に歌う鳥の囀りは無限にひろがる。

  • ブックオフ、TSUTAYA、しまむら、西松屋、ココス、洋服の青山、ユニクロ、ガスト、ビッグボーイ、イオンモール!
    地方都市の郊外に並ぶチェーン店たち。

    高校のころ輝いてた彼も、30過ぎたら結婚して娘もいて、なんだかイケてない。東京でモデルをやっていた彼女も、地元に戻って結婚相談所で相手を見つけて結婚。
    中高生のころの人間関係しかないような地方都市で、地元愛を持つマイルドヤンキーにもなれない人たち。

    東京や大阪から戻ってきた結果、地元で自分を持て余す人もいれば、何者かになれるような期待を持って地元から都会に出ていく若者たちもいる。

    ---------------------------------------

    自分の人生こんなもんでしょ、と妥協した毎日を燃えカスみたいに地方都市で過ごす人たちの描写、とても素晴らしかった。痛快だった。

    もちろん地元には昔からの友だちや家族もいて居心地はいい。けれど、こんな退屈なところで自分の人生は終わっていくのか、という焦りのような感覚もないわけではない。だからといって、自分から何か行動するわけでもない。生活するには仕事をしなくちゃならないから、普通に働いて生活して、いつのまにか地元に馴染んで、妥協して、老いていく。

    マイルドヤンキーと呼ばれる人たちの哀愁を感じた。
    地元にずっといる、人生つまんなそうな中年になんて絶対なりたくなかったのに、自分も周りの友人たちも、みんな地方都市で生活しているうちにいつのまにかおじさんおばさんになっていくんだな。まるで、くすぶったままの燃えカス。
    それが人生。それが生活。

  • 田舎の中学校でモテるタイプの人間がめちゃくちゃ嫌いだったなあ、ということをしみじみ思い出した。田舎ってなんであんなにラブホ多いんでしょうね。

  • ロードサイドで戦う女子たちへ、当時そんな帯がついていたと思います。
    ハードカバーなんだけどおしゃれでどこかうさんくさく感じる表紙に一目惚れして購入しました。
    東京ではない、どこか画一化されたある地方での話。短編集なのでどこから読んでも楽しめるけども、全ての話にある人物が様々な視点で登場します。
    ああ~いるいる、こういう人!!そんな感想を必ず抱くと思います。
    そして出てくる戦う女の子たちに、共感の嵐。わーあなたも分かるし、あなたも分かる!私もおんなじ気持ち!と、ちょっと仲のいい女友達の話を読んでいる感覚。
    戦ってるのは私だけじゃないんだ、と少しだけ後ろを向きそうなときに読みたい本です。

  • 私は東京出身で、地方に住んだこともないけれど、少なくとも日本に住んでいる女の子はみんな共感出来るのではないだろうか。
    ドラマチックなことが起こるわけでもない日常。上辺だけの対人関係。全てがめんどくさく、どーでもいいのだけれども、愛おしい自分の人生。
    あーわかるよその気持ち、あーわかるーそういうのあるー。
    読めば読むほどあるあると思い、たまに涙が出るほどではないけれど、鼻の奥がツンとする物語。
    今、この年で、この環境にいる時に読めてよかった一冊。

  • 元々都心部出身で一人暮らしも経験なく結婚したせいでこのリアルさを実感はできない、が リアリティなのだろう、とは思う。

    なんとなくミニシアター上映の映画になりそうな雰囲気。椎名は誰かな…綾野剛あたり?オダジョーでは未だにかっこよすぎるし。

  • 2015.10
    もっとできるはずの自分、特別なはずの自分、何者かになれるはずの自分。少し前まで自分だってそうだった。いや、今もか?そういう経験をたくさんして女子は大人になる。

  • 私は生まれてからずっと東京に住んでいる。
    だから、田舎の子が考えてることは、分かるけど、本当に理解することはできなかった。

    中学の頃は、平凡な社会人になりたくなくて、所帯染みたおばさんにもなりたくなかったのを思い出した。
    でも今、わたしは平凡な社会人になりたいし、結婚をして子供も産みたいと思ってる。
    本にもあったとおり、多くの人がどこかで人生のレールを直されていくのかもしれない。
    だからこそ、もう一度、あの頃の自分が思ったことにまた挑みたいと思った。

  • 地方を礼賛するでもなく、唾棄するでもなく。
    たぶんこれが、そのどちらかの視点に偏っていたとしたら、ここまでおもしろくなっていなかっただろうと思う。
    どんな場所に生まれたか、どんな青春を過ごしてきたか、いまどこに暮らしているのか、それによって好き嫌いは別れるだろうけど、
    少なくともこれを読んで「特に何とも思わない」という人とは、僕は友達にはなれない気がする。

    固有名詞の使い方が絶妙だと思った。
    鬱屈とした田舎の空気感と微妙な「ひと昔前」感とが行間に満ちて、ページの間から流れ出してきて、
    まるで高校生の頃の、地元の田んぼだらけの道を歩いた時の土の匂いがするようだった。
    田舎っぽい言葉遣いはしていないのに。
    良い小説っていうのは、そういう「空気感」がちゃんと書かれているもののことを言うんだろうな、と思ってみたりした。

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著者プロフィール

山内マリコ(やまうち・まりこ):1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、12年『ここは退屈迎えに来て』でデビュー。主な著書に、『アズミ・ハルコは行方不明』『あのこは貴族』『選んだ孤独はよい孤独』『一心同体だった』『すべてのことはメッセージ小説ユーミン』などがある。『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『山内マリコの美術館はひとりで行く派展』『The Young Women’s Handbook~女の子、どう生きる?~』など、エッセイも多く執筆。

「2024年 『結婚とわたし』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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