- Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344415195
感想・レビュー・書評
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やっと団地を出られたシーンがアッサリ。
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(*01)
廃墟文学とも呼べるのかもしれない。人に住まわれなくなる建物は、廃墟化によりそこに潜在させているモノ性を現すこととなる。家や店が持続的には更新されえない(*02)ことは歴史を紡ぐことの困難を示し、この困難の代償として主人公らの警邏の意味をとらえうる。主人公は終盤に網羅的な団地史の困難に気付き、住人の数だけの個人史が集団し、編集される場所としての団地を悟る。
(*02)
後半には、団地という住むための機械の機能を継続させるために、既存ストックの活用として単身者や外国人労働者の受け入れを始められる。20世紀末からの日本という国、団地の集団の様な国の政策を反映してのことと思う。ゲーティッドなコミュニティの崩壊でもあり、団地にあったゲート性の劣化とも考えられる。団地にあった排他性(*03)は、経済成長期の住まいへの憧れの反面でもあった。団地への憧れが薄れれば、ゲートの敷居は低くなる。流失と侵入によりかつて憧れられた均質性は失われるが、異文化の多様に団地はどのように晒され反応していくだろうか。
(*03)
主人公が団地の敷地を出ないこと/出れないことは、個の心の問題であるとともに、団地あるいは日本の閉鎖性の戯画として描かれている。どこかいびつなマッチョは、子ども心に核があり、ゲートの外への通過儀礼(*04)を経なかったことによっても形づくられている。この小説はいわゆる学園ものではないが、ほぼ放課後のみを描いた学園ものであるとも言える。学校以後の小説でもある。同質性を橋渡しとしながら、学校を囲い込むものとしての団地、団地を囲い込むものとしての日本という入れ子構造をベースとした物語でもあった。
(*04)
通過すべき、乗り越えるべきゲートや壁というのは、空間的なものというでなく、時間的な、歴史、過去、上の世代であった。こうした象徴として主人公の師匠であるところの菓子職人が存在していた。主人公は、この菓子を基礎にビルドゥングしていく。そのケーキや契機にはトラウマが仕込まれている。このトラウマな事件は、廃墟としての団地の予兆となっているのだろう。 -
トラウマによって団地に縛り付けられる主人公。でもそれは全然暗くはなく、むしろ滑稽ともいえる明るさで描かれている。団地の中だけで全て完結していたのが、時代の流れによって不自由が起きてくる。その中で自分の道を模索しなんとかうまくやっていく主人公。
母の死によって団地を出ることになるのだが、殻から飛び出し新たな人生を歩んでいく主人公の未来が思い浮かべられました。 -
一生団地から外に出ず暮らそうと決心した悟。単純で真っ直ぐな彼の日常と、それを見守る母親の愛を描いた作品。団地は母親そのもので、悟は孫悟空の様にその手の上で自分のやりたい事を自由にやっていただけなのだ。きっと。映画も面白かった。
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団地内で生きる。古い団地に住んだ事がある者にとっては共感できる箇所があるはず
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映画を観てから1年以上経ってからの原作読了。
原作には丁寧に描写されている部分が多くて、
作品の詳細をまた違った形で味わうことができた。 -
とある団地に引きこもってる人の話。なんていうか…うーん。
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映画を見たあとに読む。
映画はお母さんの大きな愛に泣け、
小説は少年のひたむきさに心打たれた。