みなさん、さようなら (幻冬舎文庫 く 14-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 51
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  • Amazon.co.jp ・本 (427ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344415195

感想・レビュー・書評

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  •  2007年発表、久保寺健彦著。小学校の卒業式で起きたある事件をきっかけに団地から出られなくなった悟。団地内には彼が務めることになるケーキ屋をはじめ、幼稚園や医院があり、彼は一生団地で生きていくことを決心するが、団地に住む同級生達は一人また一人と去っていく。
     全体的に主人公の少し頭の悪い感じに馴染めなかった。特に致命的なのが、たまに当たり前の単語や地名を主人公が知らなかったりする描写があること。彼は団地内の噂を聞ける立場にいるわけだし、本だってたくさん読んでいるのだから、ちょっと描写としてやりすぎだろう。
     主人公の引き籠もった理由に関しては一応納得がいったが、何だか少しありきたりな気もする。ラストシーンもそうだが、著者が設定として配置したという感じが滲んでしまっている。そのシーンに絡むキャラの深みがもっと描写されていれば、そうは感じなかっただろう。
     その他のストーリーに関しては割とよくできていると思う。一点不満だったのは、団地が滅びる寸前に主人公が出て行ってしまったこと。あくまで主人公の物語なのでしょうがないのだが、もし仮に団地の滅びる時点までしっかり描き切れたならば、時代を象徴する名作になっただろう。

  • 団地から出られなくなってしまった理由、
    そうだったの・・・。
    知り合いが次々と団地を去っていくのを見送るのは、
    焦りの気持ちがあっただろうな。みんなは普通に
    平気で団地の外に出られるのに自分は出来ないって。

    団地の中だけで生活するって、意外とやろうと思えば
    できちゃうもんなんだなぁ。ただ何をするにもすぐに
    噂が広まるね。常に周りに目があるのは不自由ね。

    でも考えてみれば私だって似たようなものかも。
    ほとんど寄り道することもなく職場の行き帰りと
    スーパーへの買い物と図書館ぐらいしか行動範囲が
    ないんだから。さすがに団地よりはもう少しエリアが
    広いんだけど。限られた行動範囲の中で生活してる
    っていう面では私も悟とあまり変わらないことに
    気づいてしまった・・・。

    タイトルの「みなさん、さようなら」は一本調子の
    サラッとした言い方じゃなくて、小学校の下校時の
    挨拶、ほら、ちょっと伸ばしたリズムの
    「みぃなぁさん、さよ〜なら」の方なのね。

  • のほほんとした内容かと思っていたので
    びっくり!
    かなり重くて深い話だった。
    最初はちょっと退屈で後半は一気に読んだ。

    濱田岳くん主演の映画もDVDで観たい。

  • 今年見た本で、『ふがいない僕は空を見た』に次いでいい本かもしれない。

    泣けた!
    リアルだった。
    ぜったいどこかに、こうやって廃れていってる団地がある。

    気に入った。
    結局、彼にいちばん影響を与えていたのは、スーさんだった。

  • 風変わりな主人公で、一見、甘酸っぱい青春団地ストーリーのように思われましたが、読み進めると、主人公の心の闇が見られ、奥深い作品でした。主人公の周りの登場人物も個性があり、そこも魅力の一つでした。

  • 面白かったです。一気読みでした。主人公はとても素直な良い子。外に出なかった分純粋になれたのかもしれませんね。

  • 2013/03/05
    あまり表に出てこなかったお母さんだったけど、それだけに苦労や愛情が想像できて、最後は泣けた。
    映画も観たい。

  • 小学校の卒業式で異常者により同級生を失った渡会悟。そのトラウマから団地を出れなくなり、団地内で一生を過ごす決意をする。
    今度こそ同級生を守りたいという気持ちが痛いほど伝わる。身体を鍛え、団地内をパトロールし、恋愛も勉学も就職も友情も限られた範囲で叶える。そして、何よりも偉大なのは、そんな息子を黙って見守る母・ヒーさん。表舞台に出ない地味な存在だが、その愛の深さは計り知れない。

  • 小学生の時のトラウマが原因で団地から一歩も出られなくなた主人公。主人公は成長するのに反比例するかのように廃れていく団地。その様子に心当たりがあるだけにやけに切なくなりました。
    ものすごくせまいコミュニティの中でこうも人の成長を描けるのはすごいと思いました。

  • 団地で一生生活すると決めた主人公の少年・渡会悟。彼の生活は、引きこもりではなく、極めてストイック。極真空手家・大山倍達に師事(といっても関連書を団地内のコミュニティセンターで読み漁り)し、体を鍛えに鍛え続ける。勉強もコミセンの図書室で行い、仕事、恋愛、失恋、人生のイベント全てを団地内で経験していく。序盤ではその理由は語られないけれど、団地に執着する本当の理由を知りたいとページを進めることに。最近ドライアイになった僕の目が思わず潤みました。
    *文庫版で読むときは裏に書かれてある「あらすじ」、読まないことをお勧
    めします!

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著者プロフィール

1969年東京都生まれ。立教大卒業。2007年「みなさん、さようなら」でパピルス新人賞、「ブラック・ジャック・キッド」で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞、「すべての若き野郎ども」でドラマ原作大賞特別賞の新人賞三冠を達成。他著に『空とセイとぼくと』『オープン・サセミ』『ハロワ!』『中学んとき』『青少年のための小説入門』などがある。

「2022年 『明日はきっと お仕事小説アンソロジー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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