あなたへ (幻冬舎文庫 も 14-2)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344418240

作品紹介・あらすじ

富山の刑務所で作業技官として働く倉島英二。ある日、亡き妻から一通の手紙が届く。そこには遺骨を故郷の海に撤いてほしいと書かれており、長崎の郵便局留めでもう一通手紙があることを知る。手紙の受け取り期限は十二日間。妻の気持ちを知るため、自家製キャンピングカーで旅に出た倉島を待っていたのは。夫婦の愛と絆を綴った感涙の長編小説。

感想・レビュー・書評

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  • 倉島英二は63歳で、10歳年下の妻、洋子を53歳の若さで、悪性リンパ腫により亡くします。

    英二は富山刑務所の職員で受刑者に工芸を教える仕事をしていました。
    妻の洋子は亡くなる前に遺言を二通残し一通目には遺骨は故郷の海に散骨して欲しいという願いが、そしてもう一通は故郷の薄香という九州の町の郵便局に局留めで残していたことを知らされ、洋子と二人で乗るはずだったキャンピングカーで、旅に出ます。

    旅先で元高校の国語教師で種田山頭火を愛読する杉野や、「イカめし」販売員の田宮、南原らと出会い数日間、一緒に旅をします。
    杉野は元受刑者で、青森刑務所で、出会っていることに英二は気づきますが、英二は最後までそれを口にしませんでした。
    杉野が再犯の容疑で、警察に捕まった時、何のてらいもなく、杉野のことを「友達です」と答える英二の人柄は本当に誠実であると再確認しました。

    南原の口添えで、薄香に住む吾郎という漁師を紹介され、洋子の遺骨を散骨する場面は胸が熱くなりました。
    「散骨してしまえば、墓参りに意味が無くなってしまう」という吾郎の言葉が響きました。

    南原という人物の秘密にも驚かされました。
    人と人との、縁を感じさせる物語でした。

    森沢語録
    「他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる」
    「人生には賞味期限がない」
    「不思議な偶然の出会いは、素敵な出来事の前触れ。三回続いたら、奇跡が起きる」

  • 映画が先なんですね
    映画は見てないですがキャストは調べてから読みました
    いわゆる当て書きなのかはわかりませんがどうしたって役者さんには引っ張られてるとは思うのでもう自分も思う存分引っ張られようとw

    それにしても高倉健さんてかっこいいですよね
    ザ・無口
    無口なのにすごくこう伝わってくるんですよね
    こんなかっこいい大人になりたいと思った時期もありましたが無理です
    もう無口が無理

    しゃべっちゃいますもん
    あき竹城さんばりにしゃべっちゃいますもん
    あき竹城…略して『あきたけ』なんちて
    (たいして略してないし、ダジャレももうここまで来たか…感がエグい)

    さて『あしたへ』です

    理想の夫婦像っていうのはそれぞれにあってそれこそ星の数ほどあるのかもしれないけど
    幸せな夫婦っていうのは理想の夫婦像が一致していて理想にはほど遠かったにしてもお互いに足りないところが共有できているか
    あるいは理想なんてなくて日々の生活に小さな満足感を得ることができる夫婦なんじゃないか
    そんなことを思いました

    うーん
    難しいすわ夫婦って
    なかなか小説のようにはいかんね
    自分が足りないんだけどさ

  • 文体といえば良いのでしょうか。
    作者の書かれている本はどれも優しさと丁寧さが感じられて読んでいて穏やかな気持ちになれます。
    話は穏やかではない出来事も含まれているのですけれどね。
    主人公は妻を亡くし妻からの手紙を受け取りに旅に出ます。この旅は妻の希望でもありますが、主人公へのプレゼントでもあります。
    残していかなければならない方から残された人のこれからの人生のために何をプレゼント出来るのか。
    いつか考えてみたいと思います。

  • 再読。映画の脚本を森沢さんが小説にした作品。亡くなった奥さんの遺言で奥さんの故郷の海へキャンピングカーで散骨しに行く途中に出会った人々とのつながりや夫婦の絆が丁寧に描かれている。高倉健さん主演の映画も感動したが、小説の方も心を揺さぶられるステキな作品だった。登場人物一人一人が何かしらの問題を抱えながらも前向きにあたたかく描かれているのもよかった。奥さんの2通目の遺言を読んでいて涙があふれてきてしまった。短い言葉だが「あなた」という3文字の言葉がとてもステキな言葉に思えた。倉島と奈緒子の「他人の厚意は?」(奈緒子)「受け取るべき、でしたね」(倉島)「正解です」(奈緒子)のやり取りもおもしろかった。小説の中に出て来る風鈴の音、シャボン玉、種田山頭火の句も印象的。小説の中に出て来る宮沢賢治作詞作曲の「星めぐりの歌」をYouTubeで高畑充希さんが歌っているのを聴いてみたら、とても優しい歌で心があたたかくなる心に沁みる曲だった。

    心に残った言葉
    ・「一瞬」と「永遠」は、時計で計れば大きな差が出るが、人の想いで計ればイコールで結ばれることもあるのではないだろうか。(倉島)
    ・「我々も蔓草になっちゃ駄目なんですよね。蔓草ってのは、絡む木がないと枯れてしまう存在ですから。我々はしっかりとした木になって、根を張って、自分ひとりの足で立って、周囲に蔓草がいたら幹も枝も貸してやり、生かしてやる。そういう人間じゃないとね」(杉野)
    ・「他人と過去は変えられないけれど、自分と未来は変えられる」(洋子)
    ・「人生には賞味期限がない」(洋子)
    ・「偶然のいい出会いっていうのは素敵なことが起きる予兆で、それが三つ続いたときに、驚くような奇跡が起きるー」(洋子)
    ・もしかすると、この世のすべての事象は
    「自分がソレのどこを見るか」だけで、がらりと変わってしまうのかもしれない」(倉島)
    ・ただ裸足になってドアの外に一歩出るだけで、世界はこんなにも違う。こんな小さな一歩で、世界も、自分も、変えられるチャンスは生じるのだ。たったの一歩。ゼロではなくて、一歩。その差は、無限に等しいくらいに大きいのかもしれない。(倉島)
    ・命とは、時間のことだと。だから私は、残された時間を大切にする。時間を大切にするとは、命を大切にすることなのだ。(倉島)

  • 命は時間であり、時間をどう過ごすか、が人生なのですね。
    最後が見えてから、時間をどう過ごすか改めて見直すのではなく、今から納得できる時間を過ごしたいと本当に思います。

    それにしてもシャボン玉、悲しいです。
    知らなかったです。つぎに歌を聞いて耐えられるかどうか・・・。

    最後に、感謝と思いやりを持って終われる、そんな人生が描かれています。
    短かったので可哀そうなのですが、でも心の底からよかった、と言えているところ、そしてなぜ局留めにしたかったのか、それがわかって涙です。

    この本は自炊して取り込んでいたのですが、最後のページが抜けていました。
    なんとも悲しい。。。
    週末図書館で1頁だけコピーさせてもらおう。。。
    みなさんも気を付けましょうね。

  • 妻の洋子を癌で亡くした刑務官の倉島英二。妻からの遺言が2通。1通は自分の遺骨を長崎の海に散骨して欲しいということ。もう1通は長崎の郵便局留めで12日以内に受け取って読んで欲しいこと。妻からの遺言を受け取るためにキャンピングカーで長崎へ移動する。その途中、刑務所で世話した杉野と、またイカ飯移動販売の南原に出会う。南原の真相も切ない物語だった。英二が2通目の遺言は、洋子が英二に「感謝と幸せの証」を伝えることだった。英二は長崎への「旅」を終え、更なる洋子への愛を貫くに違いない。それこそ彼の生き様なのであろう。

  • 積読していた森沢さん。ごめんなさい。
    本って自分が読むべき時があると感じた。
    大切なものを見失いそうな時とか。。

    特に心にとめた言葉は、
    ●他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えれる。
    ●人生には賞味期限がない。
    ●旅は二面性。淋しさと自由。この世の全ての事象は自分がそれのどこを見るかだけで、がらりと変わる。
    ●ただ裸足になってドアの外に一歩出るだけで、世界はこんなにも違う。こんな小さな一歩で、世界も自分も、変えられるチャンスは生じる。

    私にとって大切な一冊となりました。

  • またまた会社の方にお借りした本だが、これは良かった〜。

    じわり、じわり、じぃ〜ん、、、

    そんな感じ!!

    序章では、幾編かの人生が綴られるが、それが少しずつ重なり、大きな感動が押し寄せてくる。。。

    優しく、じわりしわりと心に語りかけてくれる、そんな一冊だった。

    これは全ての人にオススメできる一冊だ!

    うるうる(T-T)

  • 映画「あなたへ」はまだ観ていない。
    でも読んでる間ずっと、高倉健さんと田中裕子さんの面影が浮かんでいた。
    「他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる」色んな事が重なって最近投げやりだった私に刺さった。賞味期限まできちんと頑張らないといけないなと。
    この本の中にはいくつもの出会いがあって、その1つ1つが次の一歩に繋がっていった。今の私がこの本に出会えたのをきっかけに一歩を踏み出せるだろうか…実際の私は文中の一言が刺さっても次に繋がる一歩なんて…正直出せそうにない。
    なんだかなぁ。

  • 森沢明夫さんの本を初めて読みましたが、文章がとても読みやすく、内容がスッと頭の中に入ってくる感じで読み触り最高でした。読みやすいのもあってか、登場人物の心の動きがもろに伝わってきて、感情移入しやすかったです。
    物語からは相手を大切に思う人の愛情を感じて、心温まりました。

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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