- Amazon.co.jp ・本 (371ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344421073
感想・レビュー・書評
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岬は行き止まりでもあり、世界が広く見渡せる場所でもあります。そんな岬にあるカフェのおばあさんと人生の岬に立っている人々とのハートフルな物語が心をポカポカにしてくれます。
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小さな岬の先端にある喫茶店を舞台にしたヒューマンドラマ。6章からなり、各章題が喫茶店で流れるBGMのタイトル(最終章のみ波と風の音)になっている。
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その小さな喫茶店があるのは名もない小さな岬。心に傷を抱えた人が惹きつけられるように店を訪れる。
その喫茶店を1人で切り盛りするのは上品で穏やかな老婦人。客の心を優しく包むような選曲でBGMを流してくれる。
老婦人の選んだ曲にほぐされていく、人生の節目を迎えた人たちの物語。
* * * * *
舞台となるのはいい雰囲気の喫茶店が舞台だけれど、設定としては珍しくありません。
それでも各章で語られる人々のドラマがグッときます。老いも若きも人生の蹉跌を経験し、きちんと悩んでいる。そこが共感できるし読ませる原動力にもなっているのです。
そして店内に飾られた、岬にかかる虹の絵。この仕掛けもよかった。終章を彩るに十分だったと思います。
丁寧に淹れられた老婦人のコーヒーも美味しそうです。BGM とともに人々の心を癒やしてくれることは想像に難くありません。
ゆったりと作品世界に浸れる。そんな1冊でした。 -
美味しいコーヒーと、飲む人のために選曲した音楽、そして包み込むような人柄の女性店主:悦子さん。
そんな「岬カフェ」があれば私も常連になる!
岬に建つ青い小さなカフェに訪れる人々を描く6話の連作短篇集は、心穏やかな優しい気持ちを呼び覚ましてくれた。
吉永小百合が本書を読んで、映画化を切望したとそうだ。タニさん役は笑福亭鶴瓶、ピッタリ♡
そして気づいてしまった!悦子さんの思い出の風鈴は「夏美のホタル」の風鈴だと!
明日からは、コーヒーを心を込めて入れようと、自分のために。コーヒーメーカーだけど(^^) -
普段着で楽な姿勢で安心して読める本です。
自分が学生時代に通いつめた喫茶店を思い出しました。
当時、私も様々な人と出会い、交わり、様々な人の人生を垣間見ることが出来ました。本当に喫茶店って少し不思議な空間ですよね!
少し私が残念に思ったのは、この本の3年後程に刊行された
「大事なことほど小声でささやく」に、本書と全く同じカクテルの下りがあった事ですかね・・・・・・ -
「岬カフェ」の主人・柏木悦子は、ある目的のためにカフェをオープンし移り住んだ。
訪れる客は、心の中に何かしらの鬱屈を抱えている。
悦子が差し出すおいしい飲み物と店に流れる音楽、そして悦子の人となりに、疲れていた心はほっと息をつく。
哀しみも苦しみも悩みも、心から少しずつ元気を削りとって疲れさせてしまう。
そんな人のために「岬カフェ」は存在する。
辛いことがあったとしても、人はどこかで区切りをつけて生きていかなければならない。
ボロボロになった心は、けっして他人からは見えない。
だから余計に心の傷を気づかれまいと無理をして、どうにもならないところまで自分を追い込んでしまうのかもしれない。
悦子がいてこその「岬カフェ」だけれど、それは他人から見ればそう見えるというだけのことだ。
悦子自身にとっては、「岬カフェ」は生きていくための気力を与えてくれる大切な場所だった。
誰にも生きていくために必要な人や場所やものがあるとしたら、きっと誰もがそれを大切にするに違いない。
ただ、失くしてから初めて気づくことだってある。
いまある幸せに気づくこと。
けっしていまが当たり前だと思わず大切にすること。
あたたかな余韻とともに、平凡でも平和ないまを大切にしなくては・・・とあらためて思った。 -
岬の先端にある小さな喫茶店。
初老の女性が営む店に、寂しさを抱えた人たちが引き寄せられるように訪れる。
ほっこりする物語です。
見つけにくい道を抜けると、その岬の先端には小さな喫茶店があります。
窓からは海と富士山が見える絶景。
三本足の白い犬が看板犬となって迎えてくれます。
初老の品のいい女性・悦子がこの店のオーナーで、一人でやっている。
お客の顔を見て、ふさわしいと感じた曲をかけ、美味しいコーヒーを煎れ、時には心を慰める言葉をかけてくれます。
じつは悦子は、夫が遺した絵にあるこの岬の、ふしぎな虹が出ている風景そのままをいつか見たいと思って、ここで暮らしているのだった。
妻を亡くして、幼い娘の言うまま、虹を探してここに着いた父子。
ガス欠のバイクを押して、たどり着いた就活中の若者。
刃物職人だったが思いつめて泥棒に入った男。
常連さんで、悦子をひそかに慕い続けていた会社重役の男性。
悦子の甥は、岬の喫茶店に様子を見がてら通い、隣に自分で建物を作っている。
こんな甥が欲しいですわ(笑)
吉永小百合さんがほれ込んで映画化した原作ですね。
吉永小百合では美人過ぎて、常連が列を成しそうですが‥?
優しげでちょっと不思議な雰囲気もある、というのは合っているのではないでしょうか。
章ごとに語り手は変わり、わかりやすく、優しい筆致で自然と心に沁みてきます。
最後は何年か後に悦子の側から語られ、老いを感じている寂しさが印象に残ってしまいますが。
じつは苦しさを抱えていたからこそ人の悩みがわかり、表に出さない人柄だからまた人が集まってきたということもあるのかな‥ -
映画化名『ふしぎな岬の物語』主演の吉永小百合さんがプロデュースした思い入れが強い作品
6つのエピソードの中で泥棒さんの包丁研ぎのエピソードが良かったです。読み終わるのがいやでもっとお話が続けば良かったと思いました。 -
2020年3月20日、読み始め。
2020年3月25日、読了。
小さな岬の先端にある喫茶店を舞台にした小説。
詩的できれいな小説だな、という印象。
●2023年9月5日、追記。
章題は、
1.春 アメイジング・グレース
2.夏 ガールズ・オン・ザ・ビーチ
3.秋 ザ・プレイヤー
4.冬 ラヴ・ミー・テンダー
5.春 サンキュー・フォー・ザ・ミュージック
6.夏 岬の風と波の音 -
岬にぽつんと建つ、手づくりの建物。
あちこち隙間のある小さな喫茶店だけれど、なぜか落ちつく…
そんな喫茶店での、ゆるやかでやさしい物語。
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なぜこんな岬の端に、喫茶店が?
そんな驚くような場所で初老の女店主・
柏木悦子が喫茶店を営むのには、ある理由があった…
喫茶店を訪れるお客さん、悦子の甥・浩司とともに紡がれる、ちいさなお話の連続。
そしてお店の壁にかかる8色の虹の絵。
そこにこめられた、悦子の願いとは…?
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岬の喫茶店を舞台に、ゆるやかにすすむ連作短編集です。
お客さん目線の話、悦子の甥・浩司目線の話、悦子自身の話とあり、少しずつ悦子と喫茶店、そして虹の絵のつながりが見えていきます。
悦子の淹れるコーヒーは、本当に香りがこちらまでただよってきそうなくらい香ばしく、美味しそうです。
こんな喫茶店で岬を眺めながら、ゆっくりコーヒーを味わえたらな、と思います。
人間が誰しももっているコンプレックスや心の傷を、そっとコーヒーで癒してくれる、そんな小説でした。