去年の冬、きみと別れ (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (195ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344424678

感想・レビュー・書評

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  • ベストセラーになったミステリー小説の文庫版ということで大いに期待したのだが…

    序盤から中村文則らしい人間の心の中をえぐり出すようなモノクロの描写が続く。これまでのどの作品よりもミステリー性が強いせいなのか、明らかにミスリードに誘うような粗い仕掛けが目立った。読み終えてみれば、終盤に端折ったような謎解きがあり、これまでの作品に見られた人間の心の裏表と真正面から向き合う誠実さは感じられなかった。

    ライターの主人公は二人の女性を殺害した殺人犯を本にするため、刑務所に面会に行くのだが…

  •  嫌いではないが気持ち悪い。心がざらつく。6年前読んだ時は嫌悪感しかなかったので、再読で印象が変わった作品ではある。様々な登場人物の倒錯した愛情と狂気が凄まじい。「きみは誰だ?」でもう1人の存在に気づいてから、面白さが増していく。一体何を読まされているんだと思っていたが、献辞を読んで納得した。カポーティの『冷血』読んでみたい。そして結局K2って何だったのか。

  • 1回読んだだけではよく分からなかった…。

  • 去年の冬、きみと別れ

    著者:中村文則
    発行:2016年4月15日
    幻冬舎文庫
    初出:2013年幻冬舎単行本

    中村文則作品は、代表作とされる「教団X」を読んだことがある。その後、朝日新聞に連載された「カード師」も読んだ。これは面白かった。教団Xは2014年に単行本が出ているので、この小説はその1年前に発表された作品ということになる。著者は芥川賞作家なので純文学のはずなのだが、ミステリー手法が多い。この小説もかなり入り組んだミステリーだけど、複雑な心の内を描く物語で、ボリュームはないが読むのにそれなりの時間を要した。

    別の本をオンラインで購入して最寄りのブックオフ店舗に取りに行った。そうすると、いつも当日限り有効の50円クーポンをくれる。その店はレジの横に110円の文庫が並んでいるが、今回は中村文則作品があるではないか、と思って60円で購入。こんな作品がたったの60円。映画化もされたヒット作のようだけど。

    フリーライターが1審で死刑判決を受けた有名カメラマンを取材し、事件を本にしようとしている。編集者の小林から言われて始めた仕事。フリーライターは2度、犯人である木原坂雄大に面会し、彼の幼なじみに会い、彼女の姉にも会う。雄大と姉は、母親が失踪し酒に溺れた父親から虐待を受け、施設で暮らした過去を持つ。雄大は不思議な人間で、死刑の覚悟を決めているのに、途中で死にたくない、これは陰謀だと手紙に書く。欲望がないと他の登場人物は言う。

    雄大が殺したとされたのは、2人の女性。最初の女性は盲目の美人、吉本亜希子。彼のスタジオで被写体になっていた。彼が外している時にろうそくが倒れて火事になり、焼け死んだ。事故扱いとなった。しかし、雄大は燃えている彼女を助かったかもしれないのに撮影し続けた。作品としては失敗だった。

    2人目の女性は、小林百合子。彼女もスタジオで燃えた。それも、撮影しつづけたが、やはり失敗作となった。彼は逮捕され、殺人だとされた上、前回とまったく同じなので前回も殺したんだろうとされて、起訴され、1審で死刑判決。控訴。

    雄大や編集者の小林、フリーライターはK2のメンバーだった。これは死んだ人の人形をある腕の良い人形師につくってもらい、その人形と暮らしている(暮らそうとしている)人間の集まりだった。


    *****(以下、ネタ割れ、注意!)*****

    結局、犯人は編集者の小林だった。彼は最初に死んだ吉本亜希子と恋愛をし、一緒に暮らしていたが、非常に彼女を心配していた。1度、彼女が交通事故にあって入院し、益々心配するように。しかし、彼女はそれを嫌った。ある日、出て行き、さらに連絡もとれなくなった。実は、雄大の姉が弟と組んで彼女を誘拐し、スタジオに閉じ込めて撮影をしていたのだった。そして、火事(これは本当に事故だった)が起きて彼女は焼け死んだ。すぐに助ければ助かったかも知れないと恨んだ小林は、雄大たちに復讐を誓う。

    小林は雄大の姉とつきあっていて自殺未遂に追い込まれた弁護士と組み、復讐作戦を実行する。雄大の姉とセックスをしながら薬で眠らせた。弁護士が連れて来た借金まみれの女性を雄大に近づけ、スタジオで撮影させていた。雄大が外しているときに小林と弁護士は侵入し、眠らせた姉をスタジオに運び込み、火を付けて逃げた。火事に気づいた雄大はそれを撮影した。死んだのは借金まみれの女性だとされ、雄大は殺人犯として捕まった。借金まみれの女性は、それ以後、姉になりすまして暮らしていたが、良心がとがめて最後はフリーライターに話して助けを求める。

    小林は、その全てを小説化して本にするためにフリーライターに依頼していた。雄大の死刑確定後に、その本を雄大に送って、真相の全てを本人にも知らせ、復讐の仕上げをしようとしているのだった。

  • む、難しい…。星2は決して面白くないということではありません。私の想像力と語彙力の問題です。出直してきます。

  • 「何もかも憂鬱な夜に」に続いて、2作品目。

    [何かを模倣したものを、僕がまた模倣したことになる。/その領域にいる感覚は、とても心地いいものだったんだ。]という一文の「模倣」ということばが頭からはなれない。

    領域を超えた美と気狂が描かれた作品。

  • 一つひとつの章が短めで、バスや電車で読むのにもいいなと思った。
    それぞれの章によって語り手が変わるけどそれもわかりやすくてあっという間に読んでしまった、、
    何かを執拗に追い求める愛は純愛に見えるようで方向が変わるととてつもない狂気になってしまう怖さがあった

  • おーもしろかった〜!
    普段は文学?に分類されるような本を読んでいて、ミステリー作品はあんまり読まないんですけど、友達に勧められて読んでみたら意外にも文章がとても美しくて文学的な要素も体感できました。そしてミステリー特有?の伏線&伏線回収とか最後に進むにつれて劇的に変わる展開とか「これがミステリーかー!!」って思わせるような要素も多く、ミステリー初心者の私にはうってつけの本でしたね!!
    普段文学読んでてミステリーあんまり読んでないような私みたいな人がいたらおすすめですよー!

  • 猟奇殺人の被告木原坂が化物へと変貌して行く内面の葛藤。
    歪んだ姉への愛、写真への固執それが映し出すもの…そんな内容にライターがどう関わって行くのか、そんなことを想像して読み進めたが、全く違った。
    後半驚きの連続で、軽くパニック、淡々と落ち着いた雰囲気から一気に加速した感じに。
    沢山の疑問と違和感は最後には全て回収出来た。
    登場人物全員が"普通じゃない"のは現実離れし過ぎだし、それほどの憎しみを持っていたらしい弁護士の人物像が描かれてなかったのは残念だけど、沢山の伏線は見事。
    姉弟が僕達にした行為を彼らの上で再現した復讐。
    その真実を小説にしたものがこの物語そのもので復讐の最終形なんて、ほんとに良く出来てる。
    僕は化物になったはずなのに僕は今でも君が好きだ…なんて綺麗な言葉では終われない、たとえ深い愛が理由でも到底擁護できない程、悪質で病的に細部にまで執拗にこだわった復讐の計画。
    ある意味では完全犯罪。


  • 読みやすかった。
    脳トレ。
    はじめグイグイ引き込まれ、気になる〜だったのに、いつのまにか、え、だれ?になり、やがて、いったいどういうこと?で終わった。

    結論→時間あったら、2回読もを。

    映画もまた観てみます〜。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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