バスは北を進む (幻冬舎文庫)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344428577

感想・レビュー・書評

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  • ”思い出すために生きている(238頁より引用)”

    この自由律俳句がすべてを物語っているように感じた。
    時間は絶対に戻らないし、自分も過去に戻ることはできない。でも思い出すことなら、いや、思い出すことしかできない。記憶のなかの故郷。
    北海道東部で幼少期や思春期を過ごしたせきしろさんのセンチメンタルエッセイ集。

    遠い過去になってしまった思い出を未だに何度も何度も思い出しては、また大切にしまい込む。
    もっとこうしていればよかった、と思うことは山ほどある。かっこつけようと背伸びをしておかしな行動をしていた自分を恥ずかしく思うし、羨ましくも思う。凝り固まった自己嫌悪は少しずつ形を変え、今ではそれに支えられているような気がする。
    過去に戻れるわけがない。それでもずっと、何度でも思い出し続けるだろう。過去に生かされているのかもしれない。

    『鍛高譚』について
    たしか2015年に歯医者の待合室で読んだ。雑誌『POPEYE』だったと思う。色んなひとがお酒について書いているなかで、せきしろさんも北海道のお酒「鍛高譚」にちなんだエッセイを書いていた。自由なライフスタイルの先輩に憧れていたが、先輩の保険証には「扶養」と書かれていた、という話。
    なんともいえない不思議な後味のエッセイで、すごく気に入ってしまった。毎週、歯医者の待合室でそのエッセイを読んだ。雑誌が入れ替わって、もう読めなくなってしまったときはすごく残念だった。だから今、こうして文庫本で再会できてとても嬉しい気持ち。

  • 故郷北海道で過ごした日々をぽつりぽつりと思い出すエッセイ。『去年ルノアールで』と自由律俳句のとぼけたユーモアセンスが好きで、久しぶりに手にとってみた。

    訥々とした語り口にまじる独特なユーモアと妄想過多な感じがやはり面白い。檸檬爆弾のくだりは声を出して笑ってしまった。さんざん盛り上がっておいて『ゴリラーマン』に落ち着く平凡さが愛おしく懐かしい。

    せきしろさんが北海道出身というのは初めて知った。そういえば北海道に行った際に感じた街ゆく人たちの印象と通じるものがあるなと思った。

  • 言葉の魔術師、せきしろさん。すごい。
    かつての若かりし頃の「思い出」が語られているが「思い出す」ことと同時に「忘れる」こと、「忘れる」ことができないことを恥ずかしがっている。

    せきしろさんに習って「病室」にて
    ・退室してから30分後に急かすようにはじまる、殺菌。
    ・土、日、空室あり。
    ・平日は10時退室、11時入室。繁盛店の忙しさ。
    ・光とブラインドの扱いになれたころ、病室を出る。
    ・病室には足跡がない。
    ・「夜の担当、大西です」と悩ましいお言葉。
    ・退院の前日、思い出したように持ってきたパジャマを着る。
    ・川べりの太極拳のゆっくりの朝。
    ・毎度毎度、病人にはつらい、ロッカーキーのパスワード。
    ・2ℓのお茶もう少し・・退院だ。
    ・室温28℃、どこよりも健康的。
    ・部長回診で、生の「白い巨塔」を見た。
    ・コロナ禍では、聞きなれた声しかきこえない。
    ・朝ドラを見なくても、今週は終わる。

  • せきしろさんが、我が町で講演会をされるので参加すべく、予習として読んだ。それまでは、又吉直樹さんとの共著しか読んだことがなかった。

    著者と同世代、道東在住の私にとってわかりみが強く刺さりまくるエピソードが多々あった。
    以前は今ひとつピンときていなかった自由律俳句、一瞬を切り取る鮮やかさに惹かれた。

  • 僕の嗜好関係なしに知人にオススメ本を紹介してもらった。

    ★プチ鹿島『ヤラセと情熱 水曜スペシャル「川口浩探検隊」の真実』
    ★平山夢明『俺が公園でペリカンにした話』
    ★樋口毅宏「中野正彦の昭和九十二年」

    そして息抜きにどうぞと
    ★せきしろ『バスは北を進む』
    を紹介してくれた。
    彼のそうしたちょっとした気遣いが好きである。



    前から行ってみたかった【ほんのむし】というブックカフェ?にドキドキしながら行ってみた。

    せきしろの本も所々に8冊くらいあり、ラッキーなことに表題の『バスは北を進む』もあった。

    今まで読んだせきしろ本はどれもふざけてて(ふざけてるんじゃなくて思ったことを純粋に書いただけだったら少し怖い気もする)今回みたいな哀愁ただようエッセイは初めてだ。
    なんだか切なくなって、二回うるっと目頭が熱くなった。

    3時間ほどかけて終盤まで読んだ頃、息抜きに目の前にオシャレに立てかけてあった『又吉直樹マガジン「椅子」』という雑誌を手にとった。
    又吉直樹には普段関心がわかないから珍しい。

    読んでいたら『バスは北を進む』と同じ話が数ページにわたり長めに掲載されていた。

    今日は3回目のシンクロニシティで、こう多い日はとても珍しい。

    でも、シンクロニシティだと思えば運気がますます上がって結構なことだけど、よくよく追って考えると、そりゃそうだよなと思えることも多々ある。

    今回のことで言えば、ほんのむしの店主は又吉とせきしろが好きで彼らの共著も含めてそんなに多くない著書の中の多くがここにある。
    でそれらの本がだいたい近い所に置いてある。
    僕が又吉とせきしろが知合いで共著があるなんて情報は意識にのぼってなくても、入店から着席、注文までの間に背表紙から脳が記憶したはずで、いつもは全く気にならない又吉が気になったのもそういうことなんだろう。
    (この系の話がでると必ず思い出すのが、「本を開いた瞬間に脳は潜在的にザっと記憶している。次の行にも言えることで、じゃないと人はそんなに早く読むことはできないはずだ」というセンテンス)

    そう思うとシンクロニシティでもなんでもない。
    でも考えれば考えるほど、事例を調べれば調べるほど、シンクロニシティなんてそんなものよって感じもする。



    一度の来店で一冊の本をストレスなく読了したのは初めてで、非常に居心地がよかった。

    前に行った有名なブックカフェは静かにしなさい的な雰囲気が耐え難く(今思うと自分の気分によるものが大きかったかもしれない)すぐに出たかったけど、なんだか負けるのが悔しかったので読みたくもないのに一冊読み切った。
    そんな本だからか題名すら忘れた。
    猫の本だったと思う。
    かわいかった気もする。



    僕は様々なHSPチェックリストでほぼ満点。だいたい98%くらいあてはまる生粋のまさに遺伝的HSPだ。(最近44歳で知った。どうりで生きづらかった訳だよ。こんちくしょー)

    HSPには人ぞれぞれに特化した性質があって、僕の大きな特徴は嗅覚だ。
    200人くらい利用する会社のトイレで誰がボックスに入っているのか100%当てられる。
    複数が埋まっている場合、誰か少し考えさせられるけど最初の直感どおりだ。
    そして、誰がココをどれくらい前に通り過ぎたかも、ちょっと正答率は下がるけど、ぼちぼち当てられる。
    なかなか変だと言ってもらえるし、トイレで言い当てた時は「おい○○!言い当てんでもええわ!」と叱られ、後輩には「もうやめて下さい」と嘆かれる。

    そんな僕はせきしろはHSPだと思う。
    だからなんだという話だけど。

  • 著者のことは全然知らんかったけど、結構な有名人らしい。

    自由律俳句とエッセイで構成された1冊。著者の北海道時代や上京してきてからの思い出が綴られたノスタルジー感を味わう系の本。

    北国から上京してきた人は、たまらん気持ちにさせられるんだろうな。平成の「津軽海峡冬景色」的な郷愁感だろうか?人生ずっと大阪で過ごすであろう俺には、その気持ちを味わえないのが残念なのか、幸せなのか。

    世代的には非常に近いので、例えばプレステについて書かれたあたりなどは、「それ分かるわぁ」とうなづいてしまった。

  • 好き。

  • こちらも文学的過ぎるのか、自分には難し過ぎました。

  • ノスタルジックで寂寥感のある文章が素敵。

  • 故郷である北海道でのできごと、記憶を綴ったエッセイと自由律俳句。

    まさか、せきしろさんに泣かされるとは思わなかった。

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著者プロフィール

作家、俳人。1970年、北海道生まれ。A型。北海道北見北斗高校卒。主な著書に『去年ルノアールで』『海辺の週刊大衆』『1990年、何もないと思っていた私にハガキがあった』『たとえる技術』『その落とし物は誰かの形見かもしれない』など。また、又吉直樹との共著に『カキフライが無いなら来なかった』『まさかジープで来るとは』『蕎麦湯が来ない』などがある。

「2022年 『放哉の本を読まずに孤独』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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