大学病院のウラは墓場: 医学部が患者を殺す (幻冬舎新書 く 1-1)

著者 :
  • 幻冬舎
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  • Amazon.co.jp ・本 (214ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344980044

作品紹介・あらすじ

心臓外科医が患者を四人連続死なせたがそれを「トレーニング」とうそぶいた(東京医大)、未熟な医師がマニュアルを見ながらの内視鏡手術で死なせた(慈恵医大青戸)、人工心肺の操作ミスで死なせたあとカルテを改竄(東京女子医大)…なぜ医療の最高峰ともいうべき大学病院は事故を繰り返し、患者の期待に応えられないのか。その驚くべき実態と医師たちのホンネに迫り、医者と患者の間に立ちはだかる本質的な壁を浮き彫りにした。

感想・レビュー・書評

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  • 「医学部が患者を殺す」というよりは「患者とメディアが医師を殺す」の方が内容的に正しい。

  • 素人には大学病院、公立病院、なんとかセンターの区別はあんまりつかないけど。服薬指導に災害時施設、外国人対策に緩和ケア、難病研究…確かに大学病院って大変そう。まあ、行政に関わる仕事をしている訳でもなければ特に既往症もない私が読んでもさほど得るものもなく、純粋に好奇心が満たされただけなんだけど。

  • 書名で損をしている。病院と医師の真実、というのが妥当だと思う。

  • まあなんというか、、、あまりフィットしなかったな。

  • 入院したときに隣りのベッドにいた患者さんが家族との会話の中で「大丈夫、先生に心付け渡しておいたから」と言っているのを聞いてすごく嫌な気持ちになったんだけれど、これを読み終わってみると、あれはあながち賄賂でもなくて、国家公務員一種職の天下り退職金みたいなものなのかな…と思った。私は大学病院に過剰な期待はしていない。あんなに大きくて患者が多いのだからベルトコンベアになっても仕方ないと思う。あとは先生との相性。

  • センセーショナルなタイトルとはちょっと違う内容で
    現在の日本の医療界の問題を淡々と述べていました。

    著者さん、実は面白い人なんじゃないかと思います。

    マスコミは理想論ばっかり言うんじゃないよー!

    というお叱りの本ですが、
    この本も結構理想論だと思いました。
    ワタクシは、現実を見て理想を述べられるのは好きなので、
    この本も結構好きです。

    日本のお医者さん、頑張って欲しい。

    最近話題の医師不足に興味のある人にはおススメ。

  •  日本の医療の現状とその問題点、その問題点の背後の歴史や事情。

     それをよく知るマスコミの必要以上の煽動とただ自分たちの利益のための世論誘導。

     そしてそのマスコミに煽られる市民。

     その市民たちの反発を恐れ、必要以上の(悪ともいえる)制度を作ってしまう役所。

     その制度に翻弄される病院と医師。そして押し寄せてくるプレッシャーと世論の反発に耐えられなく辞めていく医者。

     そして医療問題がますます深刻になる。

     病院、医師の視点、役所の視点、そして患者と一般市民の視点とそれぞれの本音をちゃんと書いている。

     作者は医師で作家である。だからこそかけたこの一冊だと思う。

     ただし、逆に医者だから見解が偏ってしまっている部分もある。

     自分のために読んでおくべき本だと思う。

  • 大学病院の役割は問題点など興味深く読んだ。教授を中心とした白い巨塔である医局の崩壊が、地方(地域)医療に及ぼす影響は危機感を感じる。また、大学病院は難病の治療や高度先進医療を行い絶対的信頼をおける所だという認識も少し改めなければいけない。研修医や経験の少ない医師の練習台であると。しかし、有能な医師を養成するために練習台はやむを得ないことにも納得する。国立大学病院の医師の給料が少ないのに驚いた。開業に走る医師が多い。産科と小児科医師の減少も問題化される。少子化とは関係なく過酷な勤務体制によるものからだ。

  • センセーショナルなタイトルからすると、大学病院は無理な人体実験を繰り返したり、研修医や医学部の学生の練習の場であり、それを告発する内容かと思いきや、全く逆で、大学病院は信頼に足り、また事件や事故のたびに、マスコミの批判や理想論に対応したこれまでの改革が、旧制度の医局を喪失したりして、それらが日本の医療の崩壊に向かっているという憂国(憂医療?)の書である。

    医局の件については特に力点を置いている。
    (注)医局とは医師・歯科医師の執務室、控室のことを指す。ここから転じて、大学医学部・歯学部の附属病院での診療科ごとの、教授を頂点とした人事組織のことを医局と呼ぶ。

    「旧弊な医局制度が破綻し、医師は自由を得た代わりに、安定と将来の保障を失った。世間は不透明な寄付や名義借りをしなくてすむようになった代わりに、地域医療と産科医・小児科医を失った・・・(略)・・・訴訟のリスクの高い科の医師を失いつつある」と。
    具体的には、従来は医局の教授が、一般病院はおろか過疎地域の病院まで目くばせして医師を配置してきたが、それが無くなった現在は、若手医師は激務の大学病院を逃げ出し、また地方や過疎地を避け、都会の開業医を目指している。
    一方、時間の予定が立たない産科医や、子供相手の面倒な小児科、そして訴訟リスクの高い外科医を失いつつあると言う。

    そして著者は言う。「そもそも大学病院とは人体実験を行ったり、新人の教育をするところなのだ。それを認めない事には、話が前に進まない」
    大学病院は医師の数も多く、その分監視の目が多いということであり、間違った治療はチェックされ、また情報も多く集まるので、大学病院の医療は信頼に足ると。

    著者は、現場の医師の声を代表して、現在の過酷な医師の実態と、将来の医療制度を理想論ではなく、現実的な目から見てくれと叫んでいる。

    少し別な観点からみると、大学病院は研究・治療・教育と幾重もの役割を負わされているのがよく分かった。
    そして良き研究者は良き治療医ではないと言うことも。

  •  日本の医療が崩壊していくさまを、大学病院を中心にした視点で描き出している。
     医療ミスに対する追究や、医局の閉鎖性についての非難、訴訟のリスクへの不安、安月給と激務などで、大学病院の医療体制は崩壊しつつある。もともと医療は複雑で、曖昧で、不条理かつ偶然の要素が大きいことを直視せず、多少の犠牲は避けられないものだ。そこを許容せず、ゼロリスクを追求することで、かえって 水清ければ魚棲まずという状態に至っている。むしろ、大学病院は人体実験をするところで、医師は患者を練習台にしているのだという事実を正面から受け止め、とらえ直すことでしか、医療崩壊は防げないのではないか……。
     現実にそれなりに機能してきたしくみが、「理想論」によって瓦解していく……こういった構造は、日本のあちこちに見られると思う。たとえば直接には『医療崩壊「立ち去り型サボタージュ」とは何か』(小松秀樹/朝日新聞社)にもつながっているし、間接には『教育不信と教育依存の時代』(広田照幸/紀伊國屋書店)も同様の問題意識で書かれていた。
     たいして実害を及ぼすことのない環境ホルモンやBSEを大騒ぎする一方、医師や教師には完璧を求めて押しつぶしてしまう。諏訪哲二が『オレ様化する子どもたち』で描いたように、「消費者」としての意識が日本人に浸透するとともに、あちこちで巨大な崩壊が迫ってきているのかもしれない。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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