作家の収支 (幻冬舎新書)

著者 :
  • 幻冬舎
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感想 : 107
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784344984028

感想・レビュー・書評

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  • 森先生らしい、歯切れのよい文体で一気に読みました。
    小説家を職業とは捉えてなかったのですが(どちらかというと芸術に近いと思っているので)、仕事として考えて、金銭面で真面目に紹介しているのが面白いです。
    自分のセンスや考えを文章にして売るという活動が、商業ベースに乗るとどのような金額になるのか、シビアな世界であることは数字で見ると一目瞭然。
    本のおかげで楽しませてもらっている読者としては、きちんと新刊買わなきゃなと思わせてくれる一冊でもありました。

  • テレビドラマの原作料を面白く思ったが,そこらに引っ掛かった編集者もいるんだね~原稿料:小説雑誌4,000~6,000円(単位は400字詰原稿用紙)→50枚の短篇だと20万~30万。漫画の場合は6,000~15,000円/枚(中には50,000円あり)。新聞のエッセィ20,000~50,000円/作。新聞連載小説50,000円/回。400~600枚の長編は200~300万円。印税8~14%。普通は10~12%。未発表(書き下ろし)が12%で,雑誌掲載後や文庫化で10%。計算は印刷された時点で,出版社が著作権を利用したという筋道。単行本が出て約3年後に人気のあるものが文庫になる。値段は半額。3年が単行本の賞味期間で,ファンは多少高くても買うというのが日本のマーケッティング。単行本の6倍以上文庫が売れる場合は,文庫書き下ろしとして文庫で12%を貰った方が作家は得。森の累計部数:単150万2000ノ403万1700文791万3700新45万2500絵12万3000。1000円の本を1万部作り,印税が100万円,制作費300万円,取次等のマージンで出荷価格は700円程度になり1万部売って出版社の利益は300万円,6割しか売れなかったら売上420万円で利益20万円。実は多くの書籍が赤字。日常的に小説を読むのは数十万人と少ない。森の印税収入ピークは2008年で1億1222万円,1996~2014累計11億9087万円だが,電子書籍の印税は15~30%,もっと高くても良いと思う。印税だけが収入ではない。講演は40万円/時間と決めていた。テレビの原作料50万/時。コカコーラの依頼で書いた「カクレカラクリ」の執筆は1000万円。教科書にエッセイが載って年間50万円くらい。支出の方は…人件費も掛からず殆どなし。印刷出版した本は278冊,総部数1400万部,稼いだ総額は約15億円,1冊当り約5万部売れ540万円を稼いだ計算。2008年引退後,収入も半減したのは仕事量に比例する~ライトノベルズって成る程,イラストがついてナンボって奴で,2%の印税がイラストレーターに入る!「…在庫は処分されることになる。在庫は課税対象になるからだ。処分するくらいならば,新古書店などに安く出荷する方が良い気もするのだが,そういうことは,表向きにはできない(裏の事情は知らない)。」(p37)森はメフィスト賞に応募せず受賞し(突如創設),賞金なしで本になることが報酬,小さなホームズ像はロンドンのシャーロックホームズ博物館の土産で£10

  • 面白い本。講演から原稿料まで赤裸々だ。印税だけが収入ではないらしい。

  • あまり聞かない小説家のお金の話。原稿料、紙本の印税、電子書籍の印税からどこまで経費で落ちるのかまで。出版のハードルは昔よりも下がってはいるがその分競争相手が増えたということ、本を出したら凄いの時代は終わったなどとか、お金以外の話も興味深かったです

  • まず、『作家の収支』というタイトルになんとも言えないそそられるものがあります。

    「作家」と「収支」という言葉は、なかなか同席することのないいい意味での、相性の悪さを感じます。

    武士の家計簿というフレーズも、なかなかに興味深いものがありましたが、それ以上の引力があります。

    でも、森さんの作品だと分かった時点で、
    ああなるほどと思う人も多いかもしれません。

    なぜなら、森さんは作家業を”金を稼ぐための手段”として捉えている人だからです。

    とかく、小説家というと、なんだか甘美な響きのある、夢のある商売なので、単純に金儲けと結びつけにくいところがあります。

    前置きが長くなりましたが、
    本書は、作家森博嗣が20年に渡る作家生活に関して、
    いわば決算報告をしている作品です。

    印税の金額の推移はいくらか?
    原稿代はいくらか?
    作家としての副業の稼ぎはどれほどか?講演、インタビュー、ブログの連載など。

    元々理系な方なせいか、冷静に数値化されたデータが丁寧に並んでいきます。

    私が本書を読んで感じたことは、
    これからの時代”一人社長”企業が増えていくだろうなということです。
    もう少し言うと金銭的な成功を納める人は、一人で起業をする人になるだろうなということです。

    なぜなら、ネットサービスの普及で、個人が大企業と直接ビジネスをすることが可能になり、才能を簡単に世に問うことができるようになったからです。
    YouTuberやAmazonのアフィリエイトで稼ぐ人などが分かりやすい例です。

    また、最近、一人起業やサラリーマンに向けて会社を買うことを薦めた本がベストセラーに
    なっています。多くの企業が副業を解禁、一つの会社に縛られる時代にかなり揺さぶりがかけられています。

    森さんは、作家業について、極めて支出が少なくて、
    リターンの大きい商売だと書いています。

    実は作家業は、経費、元手がかからずに、短時間で一人で生み出せる点が最大のメリットであるわけです。ただし、その分、参入障壁が極めて低い世界なので、
    競技人口が極めて多い世界でもあります。

    その、競争を勝ち抜く方法は、(正確には競争はないと主張されていますが)、新しいものを生み出し続けることだと、森さんはいいます。

    それも、天才だからできるわけではなく、思考力と発想力という時間をかければなんとかなるもので、超えていくことができると。

    まとめると、作家業は、
    ・誰にでもできる
    ・元手がかからない
    ・経費もかからない
    ・思考力と発想力があればなんとかなる

    ビジネスに応用すると、これほど投資対効果の大きいものはない訳です。ものを書くのは、副業と一番なじみやすいし、お金にもなりやすいと言えるでしょう。

    おそらく本書は、小説家や文筆業を志す人が手に取るんだと思いますが、一番読んでためになるのは、中小企業の経営者やブレイクスルーを狙うビジネスマンたちなのではないかと思います。

    私はこういう書籍が売れに売れて、企業に勤める人が、本業に割くリソースを 5割に抑えて、残りはやりたいことをやるという時代が早く訪れることを願ってやみません。

  • 予想以上に面白かった。
    今までの人生で一度でも小説家に憧れだ人なら楽しめるんじゃないかと。

    淡々とした口調でひたすら小説家に関するお金の話をしているんだけど、嫌味じゃないのがすごい。
    大学の先生とかにこうタイプいるなーって森さんは昔大学の先生か。

    好きな箇所は教育目的のところの『作者としては、「べつになにも言おうとしていない」と密かに思うのだが』のくだり。
    それな!って思ってニヤニヤしたわ(笑)

    こういうシュールなジョークが散りばめられていてお金の話だけどスルスルと読めた。

    森さん……小説以外も面白いな……。ある意味すごいわ、ほんま。

  • タイトルに偽りなく、作家が自らの著作でいくら稼いでいるのか、収入について原稿料から印税は元より講演料やテレビ出演に至るまで隠すことなく赤裸々に綴っています。それに対して支出は、極論、紙と鉛筆があれば文章は紡げるので少ないのは分かりますが、作家として生計を立てるにはある程度の知識や経験が必要になるので、今までの人生の総額と言えなくもないでしょうね。
    何にしても、職業の一つとして、どれぐらいの売り上げがあって、どらぐらいの間隔で作品を発表して行けば作家として生計を立てられるのか。考えたこともなかったことを具体的に考えられるようになったのは、見聞が広がった気がします。

  • 20161016


    森ひろしの作品は一冊も読んだ事は無いが、とにかくこの本は面白かった。
    小説家がこんなに儲かる商売だと知って驚かされた。

  • これは面白い。本当にここに書いているほど「小説を書く」という事に情緒的な思い入れが一切ないのかなあ?でも『お仕事』としてプロ意識もって戦略立てまくって、なんとそれを成立させてしまうって物凄い事だよね。

    あけっぴろげにそれを公開してしまった本文部分よりもその辺の描写に色々考えさせられてしまった。収支の部分も物凄く興味深い。

  • 少し前、村上春樹が「職業としての小説家」というエッセイを出版していたが、本書こそ、そのタイトルにふさわしい。「職業、小説家」がどうやってカネを稼ぎ、それはいくらなのか。そんなタブーともいえる情報を惜しみなく明らかにする。

    印税はいくら、原稿用紙1枚いくら、巻末文はいくら、映画や教科書に採用されるといくら、などなど具体的な金額を羅列する。著者の代表作「すべてがFになる」の印税収入をグラフ化し、文庫化や映像化による収入の伸びを自己分析する。これだけ露骨でありながら、暴露本のようなイヤらしさがないのは、著者が自分の体験を語ることだけに徹しているから。自分の収入を記し、「他の作家のことはわからないが、」のフレーズを繰り返しているのが、巧みなところ。

    そして、「職業、小説家」 にとって、大事なことは常に現役であること、長く続けることだ。著者曰く、自分のようにメジャーなヒット作はなくても(そんなことはないと思うが)発表し続けることで、ファンは減ることなく、増え続ける。新たなファンが過去の作品を買い、不労所得ともいえる印税が小説家の手に入る。これこそが理想の勝ち組小説家なのだ。

著者プロフィール

工学博士。1996年『すべてがFになる』で第1回メフィスト賞を受賞しデビュー。怜悧で知的な作風で人気を博する。「S&Mシリーズ」「Vシリーズ」(ともに講談社文庫)などのミステリィのほか「Wシリーズ」(講談社タイガ)や『スカイ・クロラ』(中公文庫)などのSF作品、エッセィ、新書も多数刊行。

「2023年 『馬鹿と嘘の弓 Fool Lie Bow』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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