- Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
- / ISBN・EAN: 9784344984028
感想・レビュー・書評
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森先生らしい、歯切れのよい文体で一気に読みました。
小説家を職業とは捉えてなかったのですが(どちらかというと芸術に近いと思っているので)、仕事として考えて、金銭面で真面目に紹介しているのが面白いです。
自分のセンスや考えを文章にして売るという活動が、商業ベースに乗るとどのような金額になるのか、シビアな世界であることは数字で見ると一目瞭然。
本のおかげで楽しませてもらっている読者としては、きちんと新刊買わなきゃなと思わせてくれる一冊でもありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
面白い本。講演から原稿料まで赤裸々だ。印税だけが収入ではないらしい。
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あまり聞かない小説家のお金の話。原稿料、紙本の印税、電子書籍の印税からどこまで経費で落ちるのかまで。出版のハードルは昔よりも下がってはいるがその分競争相手が増えたということ、本を出したら凄いの時代は終わったなどとか、お金以外の話も興味深かったです
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まず、『作家の収支』というタイトルになんとも言えないそそられるものがあります。
「作家」と「収支」という言葉は、なかなか同席することのないいい意味での、相性の悪さを感じます。
武士の家計簿というフレーズも、なかなかに興味深いものがありましたが、それ以上の引力があります。
でも、森さんの作品だと分かった時点で、
ああなるほどと思う人も多いかもしれません。
なぜなら、森さんは作家業を”金を稼ぐための手段”として捉えている人だからです。
とかく、小説家というと、なんだか甘美な響きのある、夢のある商売なので、単純に金儲けと結びつけにくいところがあります。
前置きが長くなりましたが、
本書は、作家森博嗣が20年に渡る作家生活に関して、
いわば決算報告をしている作品です。
印税の金額の推移はいくらか?
原稿代はいくらか?
作家としての副業の稼ぎはどれほどか?講演、インタビュー、ブログの連載など。
元々理系な方なせいか、冷静に数値化されたデータが丁寧に並んでいきます。
私が本書を読んで感じたことは、
これからの時代”一人社長”企業が増えていくだろうなということです。
もう少し言うと金銭的な成功を納める人は、一人で起業をする人になるだろうなということです。
なぜなら、ネットサービスの普及で、個人が大企業と直接ビジネスをすることが可能になり、才能を簡単に世に問うことができるようになったからです。
YouTuberやAmazonのアフィリエイトで稼ぐ人などが分かりやすい例です。
また、最近、一人起業やサラリーマンに向けて会社を買うことを薦めた本がベストセラーに
なっています。多くの企業が副業を解禁、一つの会社に縛られる時代にかなり揺さぶりがかけられています。
森さんは、作家業について、極めて支出が少なくて、
リターンの大きい商売だと書いています。
実は作家業は、経費、元手がかからずに、短時間で一人で生み出せる点が最大のメリットであるわけです。ただし、その分、参入障壁が極めて低い世界なので、
競技人口が極めて多い世界でもあります。
その、競争を勝ち抜く方法は、(正確には競争はないと主張されていますが)、新しいものを生み出し続けることだと、森さんはいいます。
それも、天才だからできるわけではなく、思考力と発想力という時間をかければなんとかなるもので、超えていくことができると。
まとめると、作家業は、
・誰にでもできる
・元手がかからない
・経費もかからない
・思考力と発想力があればなんとかなる
ビジネスに応用すると、これほど投資対効果の大きいものはない訳です。ものを書くのは、副業と一番なじみやすいし、お金にもなりやすいと言えるでしょう。
おそらく本書は、小説家や文筆業を志す人が手に取るんだと思いますが、一番読んでためになるのは、中小企業の経営者やブレイクスルーを狙うビジネスマンたちなのではないかと思います。
私はこういう書籍が売れに売れて、企業に勤める人が、本業に割くリソースを 5割に抑えて、残りはやりたいことをやるという時代が早く訪れることを願ってやみません。 -
予想以上に面白かった。
今までの人生で一度でも小説家に憧れだ人なら楽しめるんじゃないかと。
淡々とした口調でひたすら小説家に関するお金の話をしているんだけど、嫌味じゃないのがすごい。
大学の先生とかにこうタイプいるなーって森さんは昔大学の先生か。
好きな箇所は教育目的のところの『作者としては、「べつになにも言おうとしていない」と密かに思うのだが』のくだり。
それな!って思ってニヤニヤしたわ(笑)
こういうシュールなジョークが散りばめられていてお金の話だけどスルスルと読めた。
森さん……小説以外も面白いな……。ある意味すごいわ、ほんま。 -
タイトルに偽りなく、作家が自らの著作でいくら稼いでいるのか、収入について原稿料から印税は元より講演料やテレビ出演に至るまで隠すことなく赤裸々に綴っています。それに対して支出は、極論、紙と鉛筆があれば文章は紡げるので少ないのは分かりますが、作家として生計を立てるにはある程度の知識や経験が必要になるので、今までの人生の総額と言えなくもないでしょうね。
何にしても、職業の一つとして、どれぐらいの売り上げがあって、どらぐらいの間隔で作品を発表して行けば作家として生計を立てられるのか。考えたこともなかったことを具体的に考えられるようになったのは、見聞が広がった気がします。 -
20161016
森ひろしの作品は一冊も読んだ事は無いが、とにかくこの本は面白かった。
小説家がこんなに儲かる商売だと知って驚かされた。 -
これは面白い。本当にここに書いているほど「小説を書く」という事に情緒的な思い入れが一切ないのかなあ?でも『お仕事』としてプロ意識もって戦略立てまくって、なんとそれを成立させてしまうって物凄い事だよね。
あけっぴろげにそれを公開してしまった本文部分よりもその辺の描写に色々考えさせられてしまった。収支の部分も物凄く興味深い。 -
少し前、村上春樹が「職業としての小説家」というエッセイを出版していたが、本書こそ、そのタイトルにふさわしい。「職業、小説家」がどうやってカネを稼ぎ、それはいくらなのか。そんなタブーともいえる情報を惜しみなく明らかにする。
印税はいくら、原稿用紙1枚いくら、巻末文はいくら、映画や教科書に採用されるといくら、などなど具体的な金額を羅列する。著者の代表作「すべてがFになる」の印税収入をグラフ化し、文庫化や映像化による収入の伸びを自己分析する。これだけ露骨でありながら、暴露本のようなイヤらしさがないのは、著者が自分の体験を語ることだけに徹しているから。自分の収入を記し、「他の作家のことはわからないが、」のフレーズを繰り返しているのが、巧みなところ。
そして、「職業、小説家」 にとって、大事なことは常に現役であること、長く続けることだ。著者曰く、自分のようにメジャーなヒット作はなくても(そんなことはないと思うが)発表し続けることで、ファンは減ることなく、増え続ける。新たなファンが過去の作品を買い、不労所得ともいえる印税が小説家の手に入る。これこそが理想の勝ち組小説家なのだ。